『ゼンマイ』
戌井昭人
集英社 ¥1,300
約50年前の恋人・ハファから、魔除けとして渡された手巻きゼンマイ。その動きが鈍りだしたことに、自身の死期の近さを感じた竹柴は、彼女を探しにモロッコへと旅立つ。ガイド役として同行した〈わたし〉は、道中で竹柴が見せるニール・キャサディを彷彿とさせる豪胆で放埒なキャラクターに戸惑いつつも魅了されていき……。〈世の中なんて、不思議な出来事が簡単に起きるくらい、くだらねえもんだな〉戌井流のビートニク小説が誕生。
『ピンヒールははかない』
佐久間裕美子
幻冬舎 ¥1,200
NYで暮らして20年。40代前半、独身の著者が、女友達と人生について考えた。夫と子供と別れガールフレンドとの生活を選んだファビ、母になるとは“子供が生まれる前の自分”が死ぬことだと悟ったラケル、レイプ経験を公表したエマとラーキン。そして、元夫を亡くした著者。〈You have to stand up for yourself(自分のために戦える人間になれ)〉彼女が得た言葉の数々は、日本でめいっぱい生きる女性たちの杖言葉にもなるはず。
『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』
笙野頼子
講談社 ¥1,800
〈あのなあ、あんたさんら、たかが時代を恐れて、黙っていて、どうするんさ。〉S倉市の高台にある家の台所から、猫荒神と著者の掛け合いによって語られるのは、〈「平穏」の中に隠された国難の有り様〉。TPPへの危機意識、右傾化する政権、難病患者を逼迫させる薬価上昇、家差別……。〈蓄えよ、冷凍せよ、そして資本主義から逃走せよ〉社会状況と生活とが直結する台所からの訴えに、危機迫る日本の現状があぶり出される。