『千の扉』
柴崎友香
中央公論新社 ¥1,600
新宿区の3000戸もある都営団地へ引っ越してきた千歳。交際期間なしで結婚した夫との生活は、いまだ現実味が薄い。転機が訪れたのは、そこに45年住む義祖父から頼まれた人探しだった。形見の箱を預けている〈高橋さん〉とは誰なのか。その中身は何なのか。団地の人々との交流は、土地の記憶や歴史を呼び醒まし、ある秘密が明らかになる。〈覚えている人が誰もいなくなったとしても、確かに、ここにいた人たち〉の、昭和から続く日常をたどった長編小説。
『とてもとても サーカスなフロラ』
ジャック・センダック 著
モーリス・センダック 絵
江國香織 訳
集英社 ¥1,500
サーカスで生まれ育った小さな女の子・フロラ。ある日見た夢をきっかけに、彼女の心に不安な気持ちが芽生える。〈ねえ、そとの人たちってどんなふうなの?〉小屋を抜け出したフロラは、村の人たちの生活をはじめて目にする。大混雑の朝の通りで喧嘩をしたり、犬を蹴飛ばしたりして歩く人に恐怖する彼女だったが、振り絞った小さな勇気が、世界の色を変える。『かいじゅうたちのいるところ』のモーリス・センダックが1957年に発表した作品が、本邦初訳。
『森へ行きましょう』
川上弘美
日本経済新聞出版社 ¥1,700
1966年ひのえうまの同じ日に生まれた〈留津〉と〈ルツ〉は、パラレルワールドに生きる。進学、就職、家庭を持つか、子どもはどうするか。選択の数だけ増えていく“あったかもしれない未来”は、〈琉都〉〈るつ〉〈流津〉〈瑠通〉さらなる人格となり…。60歳を迎えたとき、彼女たちに残った「幸福」とは。〈あたしたち、遠くまで来たけど、たぶん、もっと遠くまで行かなきゃならないんだよね〉。川上弘美による待望の最新長編小説。