見過ごしてしまうような風景も、作品の中ではいつもとは異なる表情に映るもの。GINZAでおなじみのライター陣が紹介するのは、実在の場所が登場するおすすめの作品。思わずロケ地巡りに出かけたくなる、あのシーンの舞台、ここなんです!
🎨CULTURE
水辺に遊び歴史に触れる。あの漫画の舞台になったのは? 衿沢世衣子『ちづかマップ』
『ちづかマップ』(12)
衿沢世衣子
堀切菖蒲園(東京都葛飾区堀切2-19-1)
お小遣いをはたいて古地図を購い、幼少期から愛用する10年モノ(!)の東京23区地図を持ち歩く高校生のちづか。友人や家族と、幼なじみと、ときには1人で、地図を手に東京各地、近江、紀州、兵庫の坂越などを巡り歩く連作シリーズ、旧版全1巻+新版全3巻のうち、日本橋、お茶の水、堀切、近江の琵琶湖畔と場所を移しながらの水辺散策が続くのが小学館版の第1巻だ。
「葛飾菖蒲まつり」(今夏は5月30日〜6月19日に3年ぶりに開催!)で賑わう初夏の堀切菖蒲園をちづか一行が訪れる第3話。「花菖蒲は明治から大正にかけて大ブームでこの辺りは湿地という土地柄もあって菖蒲園が沢山できた」「一説には江戸時代堀切村のお百姓さんからこの菖蒲園は始まったとも言われている」と語るのは、同行したちづかの祖父。菖蒲の美しさから100年を超える歴史に思いを馳せたあとは、昭和や明治の地図と現在と引き比べ、荒川の土手からスカイツリーを仰ぎみて時間の層の厚さを体感する。水元公園の釣り場や明治から残る閘門橋も登場して、モノクロであるはずの紙面がみずみずしい光を放つ。
『ちづかマップ』(12) 衿沢世衣子 連作シリーズ。講談社/旧版全1巻 ¥935、小学館/新版全3巻 各¥660*電子書籍のみ
Illustration: Toshikazu Hirai Selection&Text: Hikari Torisawa Edit: Tomoko Ogawa