見過ごしてしまうような風景も、作品の中ではいつもとは異なる表情に映るもの。GINZAでおなじみのライター陣が紹介するのは、実在の場所が登場するおすすめの作品。思わずロケ地巡りに出かけたくなる、あのシーンの舞台、ここなんです!
🎨CULTURE
タイムレスな日常の風景を求めて。あのドラマの舞台になったのは?『本気のしるし』編
『本気のしるし』(19)
府中駅南口 ペデストリアンデッキ(東京都府中市府中町1丁目)
映画『淵に立つ』や『よこがお』などで世界的注目を集める深田晃司監督が、星里もちる原作の同名人気漫画をもとに映像化したドラマだ……と放送当時毎週リアタイしながら、その底なし沼のような面白さに戦慄し完走した『本気のしるし』。
社内の評価は上々で、うわべだけ関係している女性はいるが、本気の恋を知らない会社員の辻(森崎ウィン)が深夜のコンビニで魅惑的な浮世(土村芳)と出会う。その後踏切で立ち往生する彼女を助けたことで、破滅へと転落していく。
浮世というキャラクターが、まさにこの手のタイプにハマったらもう抜けられないですよ、という警報がかき消しても鳴り続けるくらい隙だらけの行動ばかりとる。たとえば、朝、駅前のベンチで寝ていて、警察に怒られたりする。その姿を出勤前の辻が見かけ、自分も女にだらしないのに、“だらしない人だな”という表情を見せるシーン(1話)の舞台は、府中駅南口から伸びる解放的なペデストリアンデッキ。大勢が通勤先に向かって歩く都市空間で、“有害な男らしさ”に消費された浮世の行くあてのなさ、痛みが強調されている。『劇場版』もドラマと併せて観てほしい。
『本気のしるし』(19)DVD-BOX(4枚組) ¥9,680/発売・販売元: ギャガ ©星里もちる・小学館/メ〜テレ
Illustration: Toshikazu Hirai Selection&Text&Edit: Tomoko Ogawa