08 Feb 2023
80年代好きライターの純喫茶巡り Vol.19 一つのグラスで二度ときめく藤沢「ジュリアン」

昭和の喫茶店を紹介しつつ、その店をイメージして聴きたくなる80年代の名曲を80s好きライターの水原空気がレコメンド。Vol.19は青春チックな海風が心地いい藤沢の「ジュリアン」へ。カップルで同じグラスのドリンクを飲むって、昔憧れなかった?昭和の中高生の夢をそのまま形にしたようなペアーソーダを、船室のようなロマンチック空間で。
前回訪れたのは鮫洲「DAT」。
藤沢「喫茶ジュリアン」
『ホットロード』など、映画のロケにもよく使われている藤沢「ジュリアン」。大きな円形窓や水槽のようなメニューケースがある空間は、まるで船室のよう。懐かしい湘南の世界が残る数少ない場所の一つ。1965年オープン。少し前に禁煙化されてから、地元の高校生たちも増えた。Z世代には、知らない時代の秘密基地のように感じられるのかも。彼らの生き生きした表情を見ていると、湘南で過ごす高校時代が、すこぶる羨ましく感じられる。
私が初めて東京に遊びに来たのは16歳のとき。漫画やドラマでしか見たことがなかった「手を繋いで歩くカップル」を街で大量に見てビックリした(笑)。少なくとも当時の私の地元には皆無だった。するってーと喫茶店には、一つのソーダをストロー二本で飲むカップルが、うじゃうじゃいるんですかい!? と予想して乗り込んだものの、そっちは未だに見たことがない。あれは都市伝説だったのか?
そんなある日、「ジュリアン」にペアーソーダなるメニューがあることを知った。しかし実際に頼んでみると、グラスの中で、アイスクリームと生クリームが添えられた二つの味に分かれていて、一人でも十分楽しめることを発見。昭和の流行語で言うなら「一粒で二度おいしい」。しかもソロ活対応とは、ある意味、令和らしいメニューとも言える。
いまや希少なペアグラスは、造形も美しく、見ているだけでも心満たされる。
さらに個人的なお気に入りはレディースセット。プチサイズのサラダやヨーグルト、かつての機内食のようなカトラリー。トレーやおしぼりも含めて、旅気分で楽しめます。
男性でもオーダ可。終日味わえるモーニング的なメニュー。
プリンも絶品なのでお試しあれ。スプーンの柄の色もカラフル。
この店の帰り道に聴きたい80年代の名曲
『風は秋色』
松田聖子
そんな今回のオススメは、松田聖子さんの『風は秋色』。もちろん「一つのソーダにストローが二本ゆれてた〜〜」というフレーズが大好きだから。しかし未だに、そんな人を見たことはないって話は既に書きましたね。後半の転調による聖子さんのハイトーンも聴きどころです。
水原空気のひとこと
聖子さんの曲で言うなら、『青い珊瑚礁』B面の『TRUE LOVE〜そっとくちづけて』も、海や歩道橋、喫茶店などが出てくるので、藤沢の歌かなと勝手に思ってました。作詞は共に三浦徳子さん。三浦さんが作詞した初期の聖子さんワールドは、どこか少女漫画的なドラマティック・シチュエーションが多く、聖子さんの存在をキラキラの「ザ・アイドル」として際立たせていました。最近のシティポップ・ブームに火をつけた、松原みきさんの『真夜中のドア』も三浦さんの作品。
店名はスタンダールの『赤と黒』の登場人物から。初めからドラマティックなお店だったのかもね!
「喫茶ジュリアン」
住所:神奈川県藤沢市藤沢110
Tel: :0466-22-7955
営業時間:10:00〜18:00(土11:00〜)
定休日: 日曜・祝日
56席 禁煙
ペアーソーダ ¥700
レディスセット ¥700(コーヒー付き ¥900)
プリン ¥450
水原空気 みずはら・くうき
80年代好きライター。夏の扉を開け秘密の花園へ時をかける探偵物語。GINZAウェブ「松田聖子の80年代伝説」でインタビュアーも。
photo&text:Kuuki Mizuhara