昭和の喫茶店を紹介しつつ、その店をイメージして聴きたくなる80年代の名曲を80s好きライターの水原空気がレコメンド。Vol.9はタイムトンネルのようなインテリアの中で、さっくりした昔懐かしいホットケーキを味わえる「オンリー」へ。
前回訪れたのは都立家政「つるや」。
昭和の喫茶店を紹介しつつ、その店をイメージして聴きたくなる80年代の名曲を80s好きライターの水原空気がレコメンド。Vol.9はタイムトンネルのようなインテリアの中で、さっくりした昔懐かしいホットケーキを味わえる「オンリー」へ。
前回訪れたのは都立家政「つるや」。
南千住「オンリー」
南千住の「オンリー」は浅草と合羽橋に姉妹店があり、約50年前に暖簾分けしてこの地にオープンした。当時は現在の荒川区スポーツセンターの場所に「毎日大映オリオンズ」の本拠地「東京スタジアム」があり、大変な人気だったそう。球場は1962年から1972年という短い期間での運営だったが試合がある日はとても賑わい、「オンリー」も初期は大忙しだった。しかしその後は人の流れが変わり、地元の人に愛される店へと自然と変わって今にいたるそう。でも名物のホットケーキやコーヒーの味は、当時からずっと変わらないまま。
いちばんの人気メニューはフカフカの分厚いホットケーキ。オーダーを受けてからじっくり時間をかけて焼き上げる。カリッとした端っこも美味しくて懐かしい食感。ナイフを通したときの、さっくりとした手応えもいい。分厚い焼き上がりは絵本や漫画の中に出てくるホットケーキのようで、思わずハハァと拝みたくなるほどかわいい。
味も子供の頃に家で焼いてもらった感じに似ていて、頬張るたびに『おもひでポロポロ』。
内側から撮ると光が絶妙なグラデーションを作る。非日常な空間にワクワクする。
なんと言っても目を奪われるのはタイムトンネルのようなマルチストライプの内装。座ったときに人が一番心地よく感じる比率に作られているそうで、当時としてはかなり奇抜。ポップで斬新なインテリアが今もそのまま残っている。
70年代ならではの、おしゃれなランプにも注目したい。修理したくても今はもうスペアがないそう。お店の一つ一つがヴィンテージなのだ。
さりげなく飾られたカレンダーもいい味。実家のようで落ち着きます。
もう一つの名物、サンドイッチには浅草「ペリカン」のパンを使用。おっと間違えた。こちらのメニュー名はハンバーガー。果たしてその姿は絶品の食パンに挟まれたハンバーガー・サンドイッチなのでした。アメリカに憧れていた昭和って感じでときめきます。
ホットケーキにも付いてくるミニサラダの、ままごとのようなサイズ感もたまらない。
この店の帰り道に聴きたい80年代の名曲
『21世紀まで愛して』
水谷麻里
今回のオススメは水谷麻里の『21世紀まで愛して』。短い活動期間で引退し、漫画家の江口寿史さんと結婚した幻の80’sアイドルのデビュー曲なのですが、松本隆先生の歌詞がとてつもなくかわいいのです。ご本人のふわふわした歌も尊い。現在の坂道シリーズにいたらトップを張れそうな逸材でした。この曲の持つ甘酸っぱさと、今となっては素朴なテクノ感が、不思議とこの店に合います。
水原空気のひとこと
ホットケーキを自宅で焼くなら、プツプツと泡が表面から出てくるまでひっくり返してはいけません。焼いたことがある人なら誰しもわかる、ワクワクしながら待つ「あの時間」のことですね。この店で過ごす際もマスターとの会話を楽しみつつ、ゆったりとした時の流れを楽しんでください。なんといってもタイムトンネルの中ですから。
レトロかわいい外観もお見逃しなく。
80年代好きライター。夏の扉を開け秘密の花園へ時をかける探偵物語。GINZAウェブ「松田聖子の80年代伝説」でインタビュアーも。