Chim↑Pomは、2005年のデビュー以来、積極的かつ変則的に、社会と個人の関係、ボーダー、今を生きる矛盾をあぶり出す作品を発表し続けている。2008年被爆地・広島市の上空に飛行機雲で書かれた「ピカッ」、また東日本大震災直後の2011年5月には岡本太郎の壁画「明日の神話」に原発事故を描いた絵を付け足したことは、世間を巻き込んで大きな反響を呼んだ。いたずらか犯罪かギリギリのラインで都市に介入する彼らの行動を、バズや炎上目的なんて思う人もいるかもしれない。でも、一度目にすれば、それはストレートに社会に物申す行為だとわかるはずだ。
©︎Chim↑Pom Photo by Kenji Morita Courtesy of ANOMALY, Tokyo
平成最後のChim↑Pomの個展のタイトルは、『グランドオープン』。東京・天王洲アイルにオープンした新ギャラリー「ANOMALY」のこけら落とし展覧会でもある。この展覧会では、Chim↑Pomがこれまでに発表してきた「都市論」を振り返りつつ、更に展開している。
なぜ「都市論」なのか。そこには、最近の東京で公と個の関係が加速度的に変わっていっていることへの疑問がある。世界中で起きているジェントリフィケーション。公共空間の民営化。「おもしろい個が、おもしろい公をつくる」と語るChim↑Pomは、知らぬ間に変わっていく都市に、裸一貫ともいえる無謀さで体当たりしている。
今回展示している作品の中でも見ものなのが、『ビルバーガー』。総重量トン級の巨大彫刻は、10月に一時営業していた「にんげんレストラン」の場所でもあった新宿の旧歌舞伎町ブックセンタービルで制作された。ぶち抜いたビルの床と、そこにあったモノがぐちゃぐちゃに重ねている“そのまんま”な姿は、「Scrap and Build」を可視化しているうえに、ハンバーガーという現代のファスト消費を重ねたウマいタイトルだ。