16 Sep 2016
長谷部千彩のTiny Sketch 02 -スウェットを着た王子様「マシュー・ボーンの眠れる森の美女」

スウェットを着た王子様
芸術の秋到来、ということで、バレエを観に行ってきた。マシュー・ボーン版「眠れる森の美女」。そう、チャイコフスキーによる三大バレエのひとつでもあり、有名なおとぎ話、魔女の呪いにかかり、100年の眠りにおちる、という、あれ。ディズニーのアニメーション映画でもお馴染みですね。
といっても、「白鳥の湖」を男性ダンサーたちに踊らせ、「くるみ割り人形」では裕福な家の娘クララを孤児院育ちに設定するなど、大胆な脚色で知られる演出家/振付師マシュー・ボーン。「眠れる森の美女」にも随所にひねりが。たとえば、ユニークな試みとして真っ先にあげたくなるのが時代設定の変更。「むかしむかしあるところに」ではなく、ぐぐっと時代を手繰り寄せ、オーロラ姫を1890年生まれに。よって、1911年の21歳の誕生日にバラの棘を指に刺して眠りに落ち、100年の眠りから覚めると、世の中は2011年になっているという・・・なんて斬新なアイディア!
当然、ダンサーの衣装も近代から現代へ(スウェットにスニーカー!)、もちろんダンスのスタイルも近代から現代へ。それだけでも十分ワクワクするのに、人間関係もより魅力的に。オーロラ姫を愛のキスで目覚めさせるのは、通りすがりの王子様ではなく、彼女の恋人、幼馴染みの狩猟番レオ。身分の違いにナイーブなレオと、そんなことはおかまいなし、天真爛漫でキュートなオーロラ姫(赤ちゃんのときからお転婆娘!)。このカップルが生み出すほほえましさと、楽しく、スピーディな展開に、観ているこちらは、物語にどんどん引き込まれてしまう。バレエなんてお上品なもの、眠くなってしまわないかしら、と思っているひとにこそ、ぜひ、おすすめしたい「眠れる森の美女」。9月25日まで渋谷シアターオーブにて!
「マシュー・ボーンの眠れる森の美女」
9/14〜9/25
東急シアターオーブにて
http://mbsb.jp/
長谷部千彩
文筆家 / webマガジン『memorandom』主宰。9月下旬に新刊エッセイ / ショートストーリー集『メモランダム』(河出書房新社)を刊行予定。hasebechisai.com
Text:Chisai Hasebe
photo:Johan Persson
SLEEPING BEAUTY by Bourne, , Director and Choreographer – Matthew Bourne, Designer – Lez Brotherston, Lighting – Paule Constable, New Adventures, Theatre Royal, Plymouth, 2015, Credit: Johan Persson