©Céline Nieszawe
90年代初めのパリ。エイズの感染者が急増する中、患者への差別や不当な扱いに対し、過激な手段で抗議活動を行っていた実在の団体「ACT UP」のメンバーだったロバン・カンピヨ監督の経験をベースに、彼らのミーティング、デモ、活動、恋、私生活を綴る。冒頭から直面させられるのは、HIVについての詳しい知識が私にはまったくないという現実だ。彼らがどのようにHIVに感染し、心を許した相手から裏切られて、病とそして政府と闘って、どんなふうに最期を迎えたのか。その活動がどれだけの人を救ったのか。刹那的に踊る彼らの姿が目瞼に焼き付いて離れない。3/24より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開。
『ハッピーエンド』
©2017 LES FILMS DU LOSANGE – X FILME CREATIVE POOL Entertainment GmbH – WEGA FILM – ARTE FRANCE CINEMA – FRANCE 3 CINEMA – WESTDEUTSCHER RUNDFUNK – BAYERISCHER RUNDFUNK- ARTE – ORF
『愛、アムール』のミヒャエル・ハネケ(御年75歳)の最新作。難民が多く暮らすフランス北部の街・カレーを舞台に、幸せそうに見えるロラン家、祖父、娘や息子、孫たちと三世代の内情を明かしていく。イザベル・ユペール扮するビジネス・ウーマン、アンヌの移民労働者への当たり前に思いやりのない恐ろしさ。そんな母に疑問を感じ、心を病む息子。再婚しても浮気をやめられないアンヌの弟で医者のトマ。彼の娘でSNSネイティブ世代のエヴがスマホのレンズ越しに見つめるように、近くにいても彼らの心はどこまでも遠く、愛情の不在っぷりと皮肉な“幸せな結末”には、思わず笑いがこぼれてしまった。角川シネマ有楽町ほかにて公開中。
©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会
“末井さん”こと末井昭は、成人向け雑誌『ウイークエンドスーパー』『写真時代』などの編集長として写真家・荒木経惟とのコンビで活躍。女装専門誌で女装姿を撮影したことをきっかけに、糟糠の妻と別れて写真家・神藏美子と大恋愛の末、再婚した出版界で知らない人はいない伝説の編集者だ。幼い頃、母が隣に住む若い男とダイナマイト心中をした。そんな嘘のような実話から始まる自伝的エッセイを、『南瓜とマヨネーズ』(17)の冨永昌敬監督が柄本佑主演で映画化。可能性に満ちたバブル以前の昭和という時代の、けむたい熱気と狂気が入り混じったエネルギーをたっぷりと浴びることができる作品である。3/17より、テアトル新宿ほかにて全国公開。