はじめまして、ザ・クラシックス~「厄払い」のタイミング

はじめまして、ザ・クラシックス~「厄払い」のタイミング

そろそろ知っておきたい伝統文化の世界。ミチルさんと一緒に探求しよう。


節目のお祓いは、心のデトックス。

お正月早々、もう厄除けに行った人もいるかもしれない。女性の場合、厄年は30代のうちになんと2回もやってくる。前厄・本厄・後厄と3年もあるから、10年のうち合計6年間も厄に見舞われることに。たまったもんじゃない。それでも律儀に厄除け・厄払いをする人が後を絶たないのは、どこか思い当たる節があるからなんだと思う。私自身、人付き合いから健康面まで今年はいろいろ重なり過ぎた……と振り返って本厄だったと気づき、その足で近所の神社に駆け込んだことがある。

一般的に、厄払いは神社、厄除けはお寺で行われるけれど、言葉の区別は厳密にはないそう。神社では神道にのっとった儀式を執り行う。宮司や神職が折った白い紙を束にした大麻おおぬさを振り、祝詞を読み上げる間、参拝者はこうべを垂れて自分の厄を払っていただく。お寺では、厄除けに効くといわれる不動明王や弘法大師などを祀る真言宗天台宗系で行われる「護摩ごま祈祷」が多い。これは、薪を人間の煩悩に見立て、そこに点火して煩悩を焼き清めるもの。宗派によって方法もいろいろ、大火や自然災害から奇跡的に残った歴史や伝説にあやかるものもあって多様だ。

ただ、厄払いと厄除けの由来や起源は諸説あり、はっきりしないことも多い。そこで、1300年近くの歴史をもつ神田明神の広報担当、岸川雅範さんにお話をお聞きした。「一般的に、神様は慈悲深いイメージをもたれていますが、良いことを与えてくれるだけではありません。逆に、神様のパワーが強すぎて人には害悪になる場合もある。参拝には、それを抑えていただく目的もあるんです」ときに理不尽にも思えてしまう行動に出る神様の姿は、人間に厄災と恵みの両方をもたらす大自然の姿に近い。「何事も起こりませんように」をわざわざお願いする感覚って、どこか日本らしいなあと思ったり。

それにしても、なぜ“払う”のだろう。「神道では、害悪や厄、罪や穢れは体にくっつくイメージです。だから、体から払ったり、あるいは別の物にくっつけて、それを捨てたり川に流したりして、自分から引き離すんですね」先述の大麻も、もともとは体に擦り付け、触れた部分をちぎって地面に捨てていたそう。年に2回行われる大祓おおはらえは、自分の分身となる人型の形代かたしろを身体に撫で付け、息を吹きかけることで穢れを移し、それを神社で清めてもらう儀式だ。実際の振る舞いに落とし込むと、心と体が自然に結び付いて納得もしやすい。

節分に豆を撒くこと、雛人形を川に流す流し雛、七夕で短冊を笹に飾りつけることなどなど、実は多くの年中行事にお祓いの要素が含まれているという。それでも、厄払いをお正月から節分までに済ませるのは「一年で最大の節目が元旦だから」。厄年も、数年前に女性の60歳が加わったくらいで、基本的には江戸時代から変わらない。多くの人が人生の節目と感じる年齢は、今も昔もそこまでずれていないのだろう。

つまり、厄払いのタイミングは自分で決められるということ。日本の伝統文化や民俗の研究者として著作も出されている岸川さんにとっては、〆切に追われた原稿を書き上げた瞬間が大きな節目。人間関係のけりをつけるとか、大掃除もそう。起きてしまった悪いことも、厄のせいにしちゃえば諦めもつくし、さっぱり祓っていただいたら心も晴れ晴れ。何かをもらうのではなく、フラットな状態に戻すためのお祓いって面白い。とりあえず、何かモヤモヤを抱えている人は、神社やお寺に行きましょう。

Illustration: Yuka Okuyama Text: Satoko Shibahara

GINZA2019年2月号掲載

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