23 Aug 2020
人生のヒントが詰まった写真集専門店。吉祥寺「book obscura」:東京の気になるお店 Vol.4

日々新たな店がオープンする東京。好きなものを極め、一国一城の主となったGINZA世代の女性店主に聞いた。
ページをめくると見つかる人生のヒント
吉祥寺
book obscura
黒﨑由衣さん
井の頭公園を抜け、閑静な住宅街を歩いていく。吉祥寺駅の喧騒とは打って変わって、のんびりとした穏やかな空気が流れる通り沿いに店はある。
「三鷹市は夫の地元です。物件を見にきた時に、子どもたちがお祭りの練習で太鼓を叩いていて。私は下町育ちなので、近いものを感じたんですよね」
たくさんの陽が入る大きな窓、本がゆっくり読めるようにと置かれた広い机、古書独特の匂いが目立たないようにと焚かれたアロマの爽やかな香り。
そして、作家順ではなくカテゴリーやテーマで分けられた本棚。本や写真を知らずとも、知り合いの家に遊びにきたような気軽さや安心感がある。書店で働き始めたのは23歳の頃。旅にまつわる書籍がそろう「BOOK246」で5年ほど店長を勤めた後、古書を扱う神保町の「小宮山書店」で3年働き、29歳の時にこの店をオープンした。
「この仕事が天職なんです。結婚してこれからの生き方を考えた時に、会社勤めよりもお店を持ってしまった方が、仕事も家庭も並行してできるなと」
写真集をメインに取り扱っているのは、何よりも好きなものだから。黒㟢さんの話に耳を傾けながらページをめくると、目の前で映画を観ているような感覚に陥り、読み終えた頃には一冊の本とグッと距離が近くなっていく。
「写真集の素晴らしさを伝えていくことはもちろん、妥協しない働き方や生き方を見せていくことで、同じように働く女性たちへ、勇気を与えられる存在でいられたらなと思っています」
現代で活躍するアーティストたちにも還元したいという思いから、店内の半分はギャラリーとして無料で貸し出している。提供しているコーヒーは、その時の展示やフェアに合わせ毎回豆を変えるというこだわりぶりだ。

book obscura
住所: 三鷹市井の頭4-21-5-103
TEL: 0422-26-9707
@bookobscura
bookobscura.com
Photo: Masanori Kaneshita Text: Fumika Ogura
GINZA2020年6月号掲載