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『カムカムエヴリバディ』3代ヒロイン考察3 「眩しすぎる」ひなた(川栄李奈)の天真爛漫は物語の必然

『カムカムエヴリバディ』3代ヒロイン考察3 「眩しすぎる」ひなた(川栄李奈)の天真爛漫は物語の必然

NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の3代にわたるヒロインを考察する全3回のミニ連載。いよいよ3代目ヒロイン、ひなた(川栄李奈)をドラマを愛するライター・釣木文恵が考察します。最終回(4月8日予定)までに、3人が顔を合わせることはあるのでしょうか。第1回安子(上白石萌音)編第2回るい(深津絵里)編も合わせてお読みください。


好きを仕事にした前向きなひなた

大正の終わりに生まれた安子(上白石萌音)は、戦争に突き進む社会の中で身分の違いに苦しみ、ようやく結婚するもすぐに夫を亡くした。終戦間際に生まれたるい(深津絵里)は、母と決別してやがて家を飛び出し、自分の顔に残った傷と愛する人の苦悩とを乗り越えた。そして昭和40年、ひなた(川栄李奈)は高度経済成長期の真っ只中に生まれた。

母が回転焼き屋、父は何をしているのだかはっきりとわからない状態で、決して裕福ではない家庭に生まれたひなた。けれど食うに困っている様子はない。のびのびと育ち、まさに天真爛漫という言葉がぴったりの雰囲気をまとっている。

ひなたは幼い頃から時代劇を愛し、10代の頃には「ミス条映コンテスト」に出場してみたりもした。やがて条映太秦映画村に就職し、裏方として時代劇を支える側になる。生きるための仕事選びではなく、自分の好きを仕事にしている。

彼女の悩みといったら、まず子どもの頃(新津ちせ)に英語の勉強をしたがったのに続けられずサボってしまい、自分のいい加減さに悔しがったこと。悩みの対象は社会情勢や人間関係などの外から降りかかってくるものではなく、あくまでも自分自身の性格だ。

長じて勤める映画村の客足が鈍ってきたという仕事上の悩みには、お化け屋敷というアイディアを出して人を呼んだ。どんなときも前向きに解決していく、気持ちのいい性格だ。
その明るさは、一度は惹かれあった大部屋俳優の五十嵐(本郷奏多)との別れの際、「ひなたの明るさが眩しすぎる」と言われてしまったほどだ。

フラットな存在として

母娘孫3代の女性を描く『カムカムエヴリバディ』は、半年の放映期間の終盤になって安子とるいの二人の関係を回収し始めている。そんななかで、ひなたは物語の収束に伴い次々と明かされる母の過去を、素直に驚きながらも受け止めていく。もしも3代目ヒロインが自身の抜き差しならない悩みに振り回されていたら、母の物語になど構っていられない。もちろん日々自分のなかでは悩んだり苦しんだりしながらも、基本的には笑ってのびのびと生きる、そんなひなたが3代目として必要だったのだろう。3人の中でもっともコミカルな部分も多く、飾るところのないひなたを、川栄李奈は好演している。

3人の女性を細く、けれどもしっかりとつなぐラジオ英語会話の存在は、ひなたが安子のように真面目に勉強していたらこんなふうに展開できなかったかもしれない。平川唯一(ラジオ英語会話講師・さだまさし)がファンタジックに登場したシーンは、ひなたが受け止めているおかげで観る側もなんだかすっと受け入れてしまうところがあった。

父・錠一郎の存在

ひなたが屈託なく育った要因としては、父・錠一郎(オダギリジョー)の存在も大きかったに違いない。トランペッターとしての夢を原因不明の病気で諦めざるを得なくなった錠一郎。けれど彼はるいと結婚し、父親になってから、その苛立ちを周りにぶつけたり、過去にすがったりすることなく、よき夫、よき父親としてそこに居た。経済的にはわからないけれど、彼はひょうひょうとしながらも家族の精神的支柱であったように思う。当時どころか現代であっても珍しいほど、自分の傷をまわりに見せることなく、妻を子どもをたいせつにする錠一郎は、このドラマになくてはならない存在だった。

97話 (3月18日放送)でひなたが平川と遭遇している同じとき、るいは生前一度も会うことのできなかった父・稔(松村北斗)と出会う。「どこの国とも自由に行き来できる。どこの国の音楽も自由に聞ける、自由に演奏できる。るい。お前はそんな世界を生きとるよ」。るいが投げかけられた言葉は、戦争が遠い日の過去ではなく現在の危機としてあるいま、心に響く。

NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』公式サイト

脚本: 藤本有紀
演出: 安達もじり、橋爪紳一朗、深川貴志、松岡一史
出演: 上白石萌音、深津絵里、川栄李奈(3代ヒロイン)他
語り:城田優
音楽:金子隆博
放送: 毎週月〜土午前8時~、再放送午後0時45分~(土曜日は一週間の振り返りを放送)
主題歌:AI「アルデバラン」

Profile

Writer 釣木文恵 つるき・ふみえ

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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Profile

Illustrator まつもとりえこ

イラストレーター。『朝日新聞telling,』『QJWeb』などでドラマ、バラエティなどテレビ番組のイラストレビューを執筆。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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Edit: Yukiko Arai

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