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菅田将暉×神木隆之介×仲野太賀『コントが始まる』3話 役者や演出への信頼なしに、こんな脚本は書けない

菅田将暉×神木隆之介×仲野太賀『コントが始まる』3話 役者や演出への信頼なしに、こんな脚本は書けない

『コントが始まる』(日本テレビ 毎週土曜夜10時〜)第3回がいよいよ凄い。圧巻だったのは、解散を決めたお笑いトリオ「マクベス」の3人(菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀)が、2話で仲良くなった里穂子(有村架純)とその妹つむぎ(古川琴音)の部屋に訪れ、5人で会話をする15分間。ドラマもお笑いも大好きなゲーム作家・米光一成は「またも神回!」と感動している。


登場人物そのものと化している5人

今回も神回だった! 観る者みな大絶賛の『コントが始まる』第3話。コント「奇跡の水」から始まる。
怪しい男、怪しい「奇跡の水」を崇拝する兄、兄を心配し洗脳を解こうとする弟。
「奇跡の水は無味無臭だ」
第3話のナレーションは、妹のつむぎ(古川琴音)と弟の春斗(菅田将暉)。

神場面のひとつは、里穂子(有村架純)の部屋で、5人が話しているところ。
里穂子が帰宅して、玄関に瞬太(神木隆之介)と妹つむぎの靴があるのを発見するところから、玄関の5足の靴を映し出すまで。およそ15分間ずっと、部屋の中で5人が話してるだけ。回想シーンも挟み込まない。映える料理もなし(タコ焼きパーティーだ)、美しい景色も、アクションも、派手な演出もない。

なのに、観ている者の心をつかんで離さず泣かせてくる。それは、1話、2話と、登場人物をしっかりとしたリアリティを持って描いてきたうえで、登場人物そのものと化している5人が(もう、演技が巧いとかそういうふうに言いたくない。つむぎはつむぎで、春斗は春斗で、潤平は潤平で、瞬太は瞬太で、里穂子は里穂子だろうと感じながら観ている)自然に存在しているからだろう。
ちゃんと伝えるんだという信念と、役者や演出に対する信頼がなければ、こんな脚本は書けないし、それを成功させているドラマ『コントが始まる』は、いや、マジで凄い。

 

心にフタをしたような声と表情に

「中浜さんは彼氏はいないんですか?」

潤平の質問から、「いない」→「いつから?」→「一年半前からですかね」→「会社辞めたころ?」→「そのちょっと前に捨てられまして」と話が転がっていき、「捨てられた」という言葉に、みんな、ちょっと沈黙。

「捨てられたってのはすごく気になるね。あ、でも、言いたくなかったらぜんぜんいいから」
から、里穂子が語り始める。

踏み台にされるような酷い方法でカレシから捨てられたこと。会社でトラブルが発生した案件を手伝っていたら、いつの間にかその最前線に立たされ、責任を全部背負わされていたことと。
「でも、いちばんきつかったのが、その責任を押しつけてきたひとたちが裏でトラブルの原因をわたしのせいにしてて」

心にフタをしたような声と表情になっていく。そう、第1話・第2話、里穂子は、自分が自分でないような、心と身体がしっかり合致していないような表情と声の出し方だった。

「わたしががんばるからダメなのか、がんばりかたが間違ってるのか、なにがなんだかわかんなくなっちゃって」
少し声のトーンがあがる。
「辞表を出して、エレベータ降りて」
自分の左手で肩を抱く。声が震える。
「外に出て、立ち飲み屋で昼から浴びるようにお酒飲んで、また公園で飲んで」
声が出なくなる。涙がこぼれ落ちる。

泣きながら語る。
「わたしががんばるからダメなのか」のところから、ワンカットで、彼女の語る顔だけが映し出される。セリフと表情と繊細な動きがシンクロして、こちらの心を揺さぶる。

この後、泣く里穂子に、潤平がタオルを渡して、それで涙を拭いて、つむぎが泣き笑いで「ねえちゃん、それ潤平さんが足拭いたタオル」「あー!」「足洗ったし綺麗だから」「ですよね」「だめだめ」と笑いに転じていくところも含めて、なんて神場面。

里穂子がタオルを嗅いで「無味無臭ですよ」と、コント「奇跡の水」に出てくるセリフをさりげなく言うのもいい。

着信履歴は心配してるよってメッセージ

もうひとつの大きなエピソードは、春斗と兄貴。
完璧人間だった兄・俊春(毎熊克哉)が「奇跡の水」にハマってしまい離婚をし、いまでは一人で部屋に引きこもっている。

春斗が、兄貴のことを瞬太に話す。
瞬太「今から電話しようよ」
春斗「なんでだよ、昨日、無視されたばっかだぞ」
瞬太「いや別に出なくていいよ。ドアをノックしつづけることが大事なの。着信履歴はね、心配してるよってメッセージなんだよ」

この後、春斗の兄貴からの電話でまた泣かされる。川っぺりに座って電話している兄貴の後ろを走る電車の音を聞いて、ほっとした表情で笑う春斗。波状攻撃で涙腺を刺激してくる。
第3話の瞬太の「ドアをノックしつづけることが大事なの」というセリフや、廃人化していた姉をかいがいしく世話をするつむぎの様子は、それぞれの過去と重なることが第4話で明かされるだろう。

第4話は、父親を早くに亡くし母親とうまくいってなかった瞬太のエピソードと、傷ついた存在を放っておけないつむぎのエピソード、コント「捨て猫」。楽しみに待つ。

『コントが始まる』公式サイト(日本テレビ)

脚本: 金子茂樹
演出: 猪股隆一、金井紘
出演: 菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀、有村架純、古川琴音、松田ゆう姫 他

主題歌: あいみょん「愛を知るまでは」

Profile

Writer 米光一成 よねみつ・かずなり

1964年生まれ、広島県出身。ゲーム作家。代表作は「ぷよぷよ」「はぁって言うゲーム」「変顔マッチ」等。
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Illustrator オカヤイヅミ おかや・いづみ

漫画家・イラストレーター。著書に『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない 』など。趣味は自炊。
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Edit: Yukiko Arai

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