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UMMMI./石原 海:パーソナルなおしゃべりを社会的な問いに|GINZA CREATER’S FILE vol.1

UMMMI./石原 海:パーソナルなおしゃべりを社会的な問いに|GINZA CREATER’S FILE vol.1

映像の分野で活躍する気鋭のクリエイターをマンスリーで紹介する新連載「GINZA CREATER’S FILE」。第1回目は、〈ルイ・ヴィトン〉の作品を手がけたことでも話題となったUMMMI.さんをピックアップ。映像に出合ったきっかけ、これまでの作品に込められた想いを聞きました。

UMMMI./石原 海
アーティスト、映像作家

UMMMI./石原 海 動画クリエイター

©横山純

パーソナルなおしゃべりを
社会への問いかけにしていく

2018年にロンドンへ移住し、イギリスと東京を拠点に制作活動を続けるUMMMI.さんは、小さい頃から自分が何がしたくてできるかどうかに自覚的だった。紙芝居を作っては人に見せていた幼い頃、「自分の絵に納得がいかない」と思ったという彼女は、美術館へ通うようになると同時に、絵では勝負できないと早々に気づく。時を同じくして、親の友人から安いデジカメをもらった。写真を撮るうちに動画撮影機能があることに気づき、実験的な映像を独学で撮り始める。

「中学2年生くらいまで、ちゃんと映画を観たことがなくて。でも、スタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』(71)という文化的でありながら間口の広い映画を知ったことをきっかけに、ジャン=リュック・ゴダールやジョナス・メカスといった〝わたしたちの映画〟と思わせてくれる作品と出合った。その頃から映画を撮りたいと思い始めて。だから、ジョン・カサヴェテスやライナー・ヴェルナー・ファスビンダーのような、もともとお金がない中で自分たちで集まって映画を作り続けてきた人たち、インディペンデントシネマへの尊敬の念があるし、確実に彼らから影響は受けています」

東京藝術大学在学中は先端芸術表現科に通い、現代美術表現を学んだ。卒業制作『忘却の先駆者(The Pioneer)』を国際映画祭に出品したことが、世界への第一歩となる。

「『忘却の先駆者(The Pioneer)』は、私の若年性アルツハイマーの母親に対する愛であり、社会や政治への問いかけでもある作品。ものすごくパーソナルな部分を主人公の女の子に託すことができた。大切な映画です」

そして、リクルート財団から支援を得たことからイギリスへ渡る。渡英後に現地で制作した『狂気の管理人(Janitor of Lunacy)』は、英BBC、BFI(英国映画協会)の出資による民放作品。デートアプリを使うロンドナーたちに体験を聞いたり、個人的な趣味が爆発しているすごいサイトを見つけたことがきっかけに生まれたデジタル世代の物語だ。

今年からロンドン大学ゴールドスミス校の大学院で、映画制作を学ぶという彼女だが、創作のソースとなるのは、やはり出会いだという。

「人と話したり、遊びに行くのが重要。友達だったり、全然関係ない人とも道端で会話したりします。たとえば、鼻水が止まらなくて、スーパーに行ったらファミリー用の7個セットのティッシュ箱しか売ってなくて。それを持ってカムデン川沿いを歩いてたら、『ティッシュを1箱くれたら、好きな詩をどれか読んであげる』と詩を書いているおじいちゃんに言われたり。日本でもロンドンでも、割とそういうところに時間を割いて、ちょっとずつノートにためています。最近はアマゾンのレビューだったり、動画のコメント欄読むのにもハマってるんです。帰ってきて、YouTubeを開いて、酒を飲みながら熱いコメント欄を読んで、号泣するみたいな(笑)」

イギリスを代表する公共メディア、BBCで監督したことで、現地でのコネクションも一気に広がった。ハイブランドのPVやミュージシャンのMVの撮影は、友人のつながりを通して依頼されることが多いそう。映画を撮り続けながらも、現代美術館での展示に向けたコンセプトベースの作品づくり、純粋な楽しみである広告も、全部同時にやっていくのが、UMMMI.さん流。彼女の創作のモチベーションは、どこにあるのだろうか。

「私は定職には就いてないけど友達がすごくたくさんいる、という一般的ではない両親のもとで育ったんです。小さい頃から家は変わってるとは思っていましたが、本を読んだり、映画を観たりするといろんな人が出てきて、世の中の複雑な構造が立ち上がって見えて。私も、なんとなく社会に上手く適応できない状況に陥ってしまう人たちを作品ですくいあげていけたら、と思うようになりました」

そんなUMMMI.さんは、中学生の頃から哲学書を愛読していたとか。軸にあるのは、フランス出身のシモーヌ・ヴェーユとミシェル・フーコーの思想だ。
「どん底のままの自分をどうやって許して生きていくか、という哲学に影響を受けています。周りの人と話すことでその哲学を肉付けして、日常に応用していく。それをずっと繰り返している気がする」

直近の野望は、長編を日本で撮ること。 「銀座で働く女の子と、北海道の男の子が恋に落ちる話を撮りたい。今、短編も書いていて、この夏には撮れたらいいなと思っています」

 

UMMMI.さんの短編映画とクライアントワーク

UMMMI./石原 海 いしはら・うみ

1993年東京都生まれ、東京藝術大学卒業。2018年にUCA芸術大学映画学科に公益財団法人江副記念リクルート財団アート部門奨学生として留学。愛、ジェンダー、個人史と社会をテーマに、活動中。

HP: http://www.ummmi.net/
Instagram: @_____81
Twitter: @___ummmi

Photo: Jun Yokoyama    Text: Tomoko Ogawa

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