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小田 香:未知と対話し、過去と現在をつないでいく|GINZA CREATER’S FILE vol.2

小田 香:未知と対話し、過去と現在をつないでいく|GINZA CREATER’S FILE vol.2

映像の分野で活躍する気鋭のクリエイターをマンスリーで紹介する新連載「GINZA CREATER’S FILE」。第2回目は「大島渚賞」を受賞した小田 香さんをピックアップ。映像に出合ったきっかけ、これまでの作品に込められた想いを聞きました。


小田 香
フィルムメーカー

小田 香 フィルムメーカー 

未知と対話することから
過去と現在をつないでいく

今年、ぴあフィルムフェスティバルが大島渚監督の名を冠して新設した「大島渚賞」第1回を、坂本龍一さんの推薦で受賞した小田香さん。『ニーチェの馬』などで知られるハンガリーの巨匠、タル・ベーラ監督が指揮する若手映画作家育成プログラムに参加し制作した、ボスニアの炭鉱で働く労働者たちを追ったドキュメンタリー『鉱 ARAGANE』。そして、マヤ文明で現世と黄泉を結ぶと信じられていた神聖な泉と、そこに生きる人々の記憶を記録した長編『セノーテ』が評価されての受賞となった。

シネマ界が注目する小田さんだが、意外にも映画とは縁遠い世界で育ってきたそう。

「小学校からずっとバスケットボール一筋で、高校も厳しい全寮制だったので、映画だけじゃなく、あらゆる世界に対してアクセスがなかった。怪我をして靭帯を二度切ったことで、もういいかとバスケをやめて、絵を描いたりアニメーションを作ったり、いろいろ試しました」

そして、米国ホリンズ大学教養学部へ進学。行き先はどこでもよかった。とにかく日本から出たかったという。

卒業制作として何を発表しようか迷っていたある夏休みが転機に。帰郷した小田さんは、自分が同性愛者であることを家族に告白。その時家族は、緊張した空気の中、彼女のアクションに対して反応せず、なかったことにした。そこで彼女は、卒業制作として、自身がカミングアウトする様子を家族で追体験する中編『ノイズが言うには』を撮ることを決める。

「初めての映画制作だったので、撮影しながら自分がどんどん母親を追い詰めているとは感じていて。でも、実際に撮影を止めることはなかった。カメラを持つ私は守られていて、晒されるのはカメラの前にいる人なんだと。その上、自分が編集もするので、暴力的にもなれるカメラの恐ろしさと力を実感しました」

タル・ベーラの教育プログラムは3作品を提出することが条件だったが、間に合わず2作品のみ送ったところ、『ノイズが言うには』がタル・ベーラの目に留まり、晴れて門下生となった。3年間の映画にまつわる授業は、技術というより、映画人の生き様を学ぶものだったとか。

「現役の映画監督、批評家、脚本家が2週間ごとにゲスト講師としてくるんですが、彼らは何をやってもいいんです。アピチャッポン・ウィーラセタクンには川辺に連れて行かれ、瞑想しましたし、ツァイ・ミンリャンは餃子を作ってくれて、みんなで食べるということをしました(笑)。一緒に映画を観て、質疑応答をして、夜は飲みに行ったり。ただ、タル・ベーラ含めみんなが言っていたのは、『僕たちは自分のことしか話せない。やりながら、自分の言語を見つけるしかない』と。それは心に残っています」

そのスピリットを受け継いだ小田さんの制作スタイルは、リサーチし、現地へ通い、自ら撮影するというもの。膨大なインプットというプロセスを経て、最後に映画としてアウトプットする。

「『覗いてみたい』という好奇心を映画という枠に落とせないかなという気持ちは強いんです。知らなかったことを知ってまとめる、というサイクルが自分にとっての生活であり、映画制作なんだと思う。一番惹かれるのは、人や土地の記憶。その積み重なった記憶の断片をどうにか可視化して、表現として昇華すること。それを私はやっているんだと思う」

こうして生まれた小田さんの作品は、映像と音に包まれ、未知の世界に身体ごと持っていかれるような感覚をもたらす。『鉱 ARAGANE』では、単身デジタルカメラを持ち込み、地下300メートルの炭鉱という暗闇へと赴き、『セノーテ』では、ダイビングを学び、自ら潜って水中洞窟内をiPhoneで撮影。現地の神話を今も語り継ぐシャーマンらの表情は、8㎜フィルムで記録している。

「私の泳ぎが大きなカメラを水中で扱えるほど上達しなかったという理由もあるんですが、テスト撮影の結果が意外とよかったので、水中は機動性と利便性の高いiPhoneを使いました。8㎜フィルムを使用したのは、フィルム撮影をしている先輩方の影響で憧れもありましたし、古いメディアと新しいメディアを使って神話を語ることで、時制で遊べないかなとも思ったので。ただ、しっかり撮ったのは初めてだったので、とてつもなく失敗しながらやりました(笑)」

次に撮りたいのは「宇宙」だとか。宇宙の記憶に劇場で触れる日が楽しみだ。

 

小田さんの最新作を含む映画3作品

小田 香 おだ・かおり

1987年大阪府生まれ。米国ホリンズ大学教養学部映画コースを修了。2013年映画監督タル・ベーラが陣頭指揮するfilm.factoryに第1期生として招聘され、16年に修了。現在は大阪を拠点に活動。

HP: https://www.fieldrain.net/
Twitter: @_kaori_oda

Photo: Takao Iwasawa    Text: Tomoko Ogawa

GINZA2020年8月号掲載

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