安易な世代論で片付けたくはないけれど、でも言いたい。90年代生まれのミュージシャンたちが紡ぐ音楽がとても素敵だ、と。当たり前のように物心ついた頃からネットがあり、世代やジャンルに縛られることなく、豊穣な音楽の海に思う存分ダイヴしてきた。マニアックな知識と音楽への深い愛、そしてセンスをないまぜにした彼らの音楽は、なぜ心地いいのか?
それぞれの方法でオリジナリティを探求する4組のアーティストを、同年代の写真家・奥山由之と、ミュージシャンを多く手がけるスタイリストa.k.a.歩く音楽事典の島津由行が撮る、語る。
D.A.N.「ぼくらの音楽」写真家・奥山由之とスタイリスト・島津由行が撮る、語る
D.A.N.
左から 市川仁也さん: ジャケット ¥29,000(C.E)/シャツ ¥13,982(CAME UNTO ME)/その他*すべて本人私物
川上輝さん: ジャケット ¥12,000(チャンピオン | チャンピオン原宿店)/スウェット ¥17,000、キャップ ¥7,000(共にC.E)/その他*すべて本人私物
櫻木大悟さん: シャツ ¥8,426(CAME UNTO ME)/パンツ ¥20,000(キート | HEMT PR)/その他*すべて本人私物
キャップ ¥4,000、Tシャツ ¥3,500(共にD.A.N.)/レーストップ ¥28,000(ミヤオ)、リング ¥5,800(オトロアクセソリオ | 共にビームス ウィメン 渋谷)/フレアショーツ ¥64,000、ソックス ¥3,000、ローファー ヒール3.5cm ¥46,000(以上ファセッタズム | ファセッタズム)/サングラス ¥30,000(G.V.G.V. | k3 OFFICE)/ヘッドホン ¥2,980(オンキヨー&パイオニアイノベーションズ)
今っぽさや新しさの裏には異物感がある(櫻木)
D.A.N.の浮遊感あるダンスミュージックは心地よくメロウでスタイリッシュ。だが、すべて人力で奏でられるというギャップも魅力的だ。彼らが考える〝今っぽさ〟の定義。
奥山 3人でやって何年ぐらいですか?
市川 2年半ちょっと。
奥山 アルバムというか曲ごとに作り方は変わってきていますか?
市川 あんまり変わらないかなあ。
櫻木 作っては壊して、作っては壊して。
市川 今はみんな打ち込みで作る。確かに合理的だけど僕らにはできない。何度も確かめて「これだ!」っていう瞬間を探しています。
島津 ネット世代だとすごく自由になるじゃない。逆に生音で丁寧に作ろうと思ったの?
櫻木 バンドの面白さって機械とは違い、ちょっとずつズレていくところだと思うんです。揺らぎ。でもそれがグルーヴとなる。
島津 グルーヴはいつの時代もあるよね。でもD.A.N.の出してる音は今っぽい感じがする。それは3人の共同作業から生まれるの?
川上 そうですね。パソコンじゃ出ない質感とか。ドラムは特に。
島津 市川さんと川上さんはエンドレスなグルーヴ感あるよね。僕は今58歳でトーキングヘッズが好きだったんだけど、一方でみんなカンとかも聴いてるかなって訊きたくて。
櫻木 カン、めっちゃ好きです。 島津 テイラー・マクファーリンとかMvOT、それに宇多田ヒカルも入ってるのかなって思った。だから、いろんなものに揉まれて化学反応しているというか。何かしら影響はあるけど、噛み砕いている感じがする。
川上 完全に新しいジャンルの音楽ってもう生まれないと個人的には思っていて、影響を受けた人をどう噛み砕いてオリジナリティを出すかを考えています。
櫻木 今っぽいとか新しいという感覚の裏には異物感があるような気がします。これとこれ混ぜちゃうんだ?みたいな。最初「なんだこれ?」と思うんだけど、だんだん引き込まれていくというのが背景にあるのかな。
川上 僕らが音楽を聴くときに、これ心地いいなって思うのって、必ず疑問がある。なんでこんな雰囲気なんだろう?って気になる曲に惹かれますね。
櫻木 奥山くんの写真もすぐわかるし、山下達郎さんも聴いた瞬間にわかる。
市川 そういう圧倒的な力が欲しいね。
D.A.N.
ダン≫ 2014年8月に櫻木大悟(Gt, Vo, Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人で活動開始。2015年7月にデビューEP『EP』をリリース。同年FUJI ROCK FESTIVALへの出演も果たす。昨年4月に1stアルバム『D.A.N.』をリリース。最新12インチ『SSWB』が3月に発売。(SSWBはSuper Shy Without Beerの略)。5月11日の大阪を皮切りにワンマンツアー 「TEMPEST」を開催。ちなみにバンド名は特に意味はないそう。
Photo: Yoshiyuki Okuyama
Styling: Yoshiyuki Shimazu
Hair: ASASHI(model)
Make-up: FUSAKO(model_ota office)
Prop Styling: HYOTA
Model: Nana
Cooperation: AWABEES, Props Now Tokyo, Sound Crew, UTSUWA
Text: Mika Koyanagi