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彼女が全身全霊をかけたデザインの結晶とは。「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」

彼女が全身全霊をかけたデザインの結晶とは。「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」

石岡瑛子 映画 『ドラキュラ』 (フランシス・F・コッポラ監督、1992年) 衣装デザイン ©David Seidner / International Center of Photography


アートディレクター、デザイナーとして、多岐に渡る分野で新しい時代を切り開きつつ世界を舞台に活躍した、石岡瑛子(1938-2012)。彼女の世界初の大規模な回顧展が開催される。
広告キャンペーンから、映画、オペラ、演劇、サーカス、ミュージック・ビデオ、オリンピックのプロジェクトなど、表現媒体は多種多様。それなのに、エネルギッシュな表現はひと目で彼女のものとわかる。圧倒的な唯一無二の個性と情熱が刻印された仕事がまとめて見られる初の機会だ。

石岡瑛子 衣装デザイン
石岡瑛子 映画『白雪姫と鏡の女王』(ターセム・シン監督、2012年)衣装デザイン ©2012-2020 UV RML Films dba Relativity Media. All Rights Reserved.

展示は、Timeless, Fearless, Borderlessの3パートから構成される。石岡は、初期の60年代、そして70~80年代の広告キャンペーンにおいて、すでに解放された女性像を提示し、東洋と世界の諸文化を対照・混合させていた。センセーショナルなヴィジュアルは、新しい時代を切り拓き、新たな価値観が広く浸透していくきっかけをつくり出した。そして、1980年に海外に拠点を移してからは、「サバイブ」を口癖に困難に立ち向かい、映画やPVなどあらゆるデザイン領域に挑戦し、国際的な評価を得ることになる。「Timeless, Original, Revolutionary」の3つのテーマをデザインの根幹に掲げた石岡。彼女の仕事の変遷を、観客は辿っていく。

 

1 Timeless:時代をデザインする

石岡瑛子 衣装デザイン
石岡瑛子 ポスター 『西洋は東洋を着こなせるか』 (パルコ、1979年) アートディレクション

石岡は、ヴィジュアルな言語を用いて、ジェンダー、国境、民族といった既存の枠組みを刷新し、新しい生き方を社会に投げかけた。このパートでは、グラフィック、エディトリアル、プロダクト等のデザインを通して、1960年代の高度経済成長期から80年代に至る、消費行動を通した日本大衆文化の成熟を辿る。デザイン史の金字塔とも言うべき資生堂のポスター(1966)や、1970-80年代のパルコの広告などの一連の仕事は、当時の時代の先端を表していたにもかかわらず、今も色あせない。時代そのものをデザインしつつ、タイムレスであろうとする姿勢は、その後の彼女の展開を予言するものとなる。

 

2 Fearless:出会いをデザインする

石岡瑛子 衣装デザイン
石岡瑛子 アルバム・パッケージ 『TUTU』 (マイルス・デイヴィス作、1986年) アートディレクション ©The Irving Penn Foundation

1980年代半ば以降、石岡瑛子は、クリエイターたちとの新たな出会いによって、日本から世界へと活動の場を広げることになる。コラボレーションの相手は、マイルス・デイヴィス、レニ・リーフェンシュタール、フランシス・フォード・コッポラ、ビョーク、ターセム・シンら名だたる表現者たち。

石岡瑛子 衣装デザイン
石岡瑛子 映画 『ミシマ・ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』 (ポール・シュレイダー監督、1985年) プロダクションデザイン 
Mishima ©Zoetrope Corp. 2000. All Rights Reserved. /©Sukita

これらの協働にともない、表現の形も、グラフィックデザイン、アートディレクション、衣装デザイン、さらにはプロダクションデザインと多様化していく。展示では、集団制作の中で個のクリエイティビティをいかに発揮するかに賭けた「石岡瑛子の方法」を、デザインのプロセスを示す膨大な資料とともに紹介。コラボレーションによって「私」のオリジナリティを追求していく、彼女ならではの強さを見ることができる。

 

3 Borderless:未知をデザインする

石岡瑛子 衣装デザイン
石岡瑛子 コンテンポラリー・サーカス『ヴァレカイ』(シルク・ドゥ・ソレイユ、2002年)衣装デザイン Director: Dominic Champagne / Director of creation: Andrew Watson / Set designer: Stéphane Roy / Courtesy of Cirque du Soleil

後半生になり、オペラや映画、サーカスのコスチュームやオリンピックのユニフォームを通して、身体を拡張し、民族、時代、地域などの個別的な属性を乗り越えた、未知の視覚領域をデザインしていった石岡。とくに、アカデミー賞を受賞した『ドラキュラ』(1992)や、『落下の王国』(2006)、『白雪姫と鏡の女王』(2012)、オランダ国立オペラ『ニーベルングの指環』(1998-1999)など、ハリウッド・アカデミーをはじめ世界各国のアーカイブから集められた衣装展示も必見だ。

石岡瑛子 衣装デザイン
石岡瑛子 『北京夏季オリンピック開会式』 (チャン・イーモウ演出、2008年) 衣装デザイン 
©2008 / Comité International Olympique(CIO) / HUET, John

人間の身体の躍動感を根源に宿しつつ、「赤」をキーカラーとし、視覚的なインパクトとエモーションを併せ持つ石岡瑛子の仕事。それらは、常に新たな領域へと果敢に越境し続けた石岡自身の人生と重ねられる。新しい領域で、海外で、たった一人「私」の可能性を拡張し続けた彼女の仕事は、真のオリジナリティとは何かを示してくれる。2020年を生きる私たちの背中をボンっとたたき、喝を入れるような力強いメッセージを、会場で受け止めたい。

石岡瑛子 衣装デザイン
石岡瑛子 映画『落下の王国』(ターセム・シン監督、2006年)衣装デザイン ©2006 Googly Films, LLC. All Rights Reserved.

Profile

石岡瑛子 いしおか・えいこ

1938年東京都生まれ。アートディレクター、デザイナー。東京藝術大学美術学部を卒業後、資生堂に入社。社会現象となったサマー・キャンペーン(1966)を手がけ頭角を現す。独立後もパルコ、角川書店などの数々の歴史的な広告を手がける。1980年代初頭に拠点をニューヨークに移し、映画、オペラ、サーカス、演劇、ミュージック・ビデオなど、多岐にわたる分野で活躍。マイルス・デイヴィス『TUTU』のジャケットデザインでグラミー賞受賞(1987)、映画『ドラキュラ』の衣装でアカデミー賞衣装デザイン賞受賞(1993)。2008年北京オリンピック開会式では衣装デザインを担当した。2012年逝去。
石岡瑛子 1983年 Photo by Robert Mapplethorpe ©Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.

【石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか】

会場: 「東京都現代美術館」 企画展示室 1F/地下2F
住所: 東京都江東区三好4丁目1−1
会期: 
2020年11月14日(土)〜2021年2月14日(日)

時間:  10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日: 月曜日(11月23日、2021年1月11日は開館)、11月24日、12月28日〜2021年1月1日、1月12日
観覧料: 一般 1,800円 / 大学生・専門学校生・65歳以上 1,300円 / 中高生 700円 / 小学生以下無料

公式HPはこちら

柴原聡子

建築設計事務所や美術館勤務を経て、フリーランスの編集・企画・執筆・広報として活動。建築やアートにかかわる記事の執筆、印刷物やウェブサイトを制作するほか、展覧会やイベントの企画・広報も行う。企画した展覧会に「ファンタスマ――ケイト・ロードの標本室」、「スタジオ・ムンバイ 夏の家」など

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