ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、エミリー・メイ・スミスの個展がペロタン東京で開催中だ。スミスの個展は今回が日本初となる。
Gleaner Odalisque, 2019 リネンに油絵の具 129.5 x 170.2 cmユニーク
一目見て印象的なのが、擬人化されたキャラクターのような「ほうき」だ。彼女はこのほうきを自身のアバターとして、繰り返し描いているという。ほうきは、何千年にも渡り女性に委ねられてきた家事労働の象徴である一方で、ディズニーの傑作「ファンタジア」(1940)のシークエンスでは、魔法使いの弟子の物語に基づき、師匠気取りの魔法使いに反逆する道具として活躍する。水の入ったバケツを両手に隊列を組んで進むほうきの姿におぼえがある人も多いだろう。スミスは、このほうきをモチーフにすることについて「誰かに支配されそうになったとき、強い力を発揮したのは、この、実に身分が低い物なのです」と語っている。
The Gleaner and Me, 2019 リネンに油絵の具 129.5 x 170.2 cm | 51 x 67 inch ユニーク
なまめかしい質感をもつ描き方は、象徴主義、シュルレアリスム、ポップアートなど、美術史における異なる絵画のムーブメントに敬意を表したものだ。ときに、いたずらな社会的・政治的メッセージを込めた、生き生きとした構図は、ジェンダー、セクシュアリティ、資本主義、暴力など、現代の題材を、シリアスになりすぎない形で訴えかけてくる。