幼い頃から聴いている曲や生き方を教えてくれた曲。最近気になっているミュージシャンなど。2020年のいま、音楽を語る上で欠かせない敬愛するアーティストと好きな曲を聞きました。
Pecoriさんが惚れ込んだ、人気アニメのサントラetc. いま、一番好きなミュージシャンを教えてください!
踊Foot Works
Pecori
アーティスト
平沢進
アルバム
『パレード』
国内外で支持される音楽家の
録音やサンプリングの手法に唸る
平沢進さんのことはアニメ『ベルセルク』のサウンドトラックで知っていたのですが、実はちゃんと聴いたことがなくて。最近友人に教えてもらってあらためて聴いてみたら一気に惚れ込みました。2020年が目前に迫る今、1990年代のサイケっぽい電子音楽が僕の中でかなりトレンドなのですが、平沢さんはボイスサンプリングの多重録音方法がハンパなくて。なにより歌が気持ち悪いんです。もちろんいい意味で(笑)!どこか北欧っぽさを感じる歌い方も大好きですね。
「パレード」は、今敏監督のアニメ映画『パプリカ』で使われている楽曲。イントロの間奏に入っているボイスサンプルがすごく印象的なのですが、これは自身が手がけた別の曲を逆再生している音だと知った時は驚きました。こういう突飛なアイデアをはじめ学ぶべきところがたくさんある人なので、これからもっと聴き込んでいきたいです。
『パプリカ オリジナルサウンドトラック』
2006年に公開された今敏監督のアニメーション映画『パプリカ』のサウンドトラック。前作『妄想代理人』に続き平沢進が手がけた。
ひらさわ・すすむ>> 1979年にP-MODEL結成後、1989年ソロデビュー。独自のサウンドで数々のアニメやゲームの音楽を担当。
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Pecori<br />
1994年、静岡県生まれ。7月に踊Foot Worksのアルバム『GOKOH+KAMISAMA』をリリース。
Takako Noel
アーティスト
踊ってばかりの国
曲
「weekender」
命がけのライヴパフォーマンスに
いつもパワーをもらっています
ヴォーカルの下津光史さんの弾き語りを街で偶然みたのがはじめて。同世代にこんな音楽を作っている人がいるのかと衝撃的でした。それからライヴ写真をとらせてもらうようになり、今では自分の写真に一番影響を与えているアーティストだと思っています。メンバー5人全員が、言葉よりも何より音楽が一番のコミュニケーションのとり方なんだと伝わってきて、本当のピュアな芸術家だと思います。ライヴは毎回命がけでパフォーマンスしてくれてすごくパワーをもらえます。
アルバム『光の中に』に収録されている「ウィークエンダー」という曲は、ミュージックビデオを作らせてもらったので一番想い出深いです。撮影では朝靄を狙い、極寒の立川で日の出をむかえました。歌詞からインスパイアされて〝銀河鉄道の夜〟をイメージして作っています。光に向かって走っている列車のなかでおこる生と死、出会いと別れ。
『光の中に』
2019年5月にリリースされた最新アルバム『光の中に』(FIVELATER/¥2,400)。自主レーベル「FIVELATER」からの第1弾作品。
おどってばかりのくに>> 2008年、ヴォーカルの下津光史を中心に神戸で結成。現在は東京で活動する5人組サイケロックバンド。
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Takako Noel<br />
ロンドンの滞在を経てヴィジュアルアーティストとして活動。ファッション誌や広告で活躍中。
木ノ下裕一
アーティスト
加藤登紀子
曲
「ともだち あなた 戦う心」
声や息遣い、パッションで
聴く人の心を震えさせる名歌手
小学生の頃に「知床旅情」を歌うおトキさんをテレビで見て以来すっかりファンになり、中学時代にはファンクラブの最年少会員になっていました。彼女の歌は、有名曲はもちろん、歴史や民族に寄り添ったものや、時代に立ち向かうものがとにかく素晴らしいのです。
「ともだち あなた 戦う心」は故・永六輔氏の遺稿に彼女自身が曲をつけた名曲です。時代を憂い続ける二大アーティストによるあの世とこの世を超えたコラボレーションに、聴くたびに心が震えます。
音楽は時代のアーカイブです。暗い時代、明るい時代、明暗入り乱れた混沌とした時代……それぞれに人々が大切にしてきた歌があります。20世紀という波乱の時代を彩った歌たちを、おトキさんは一つ一つ丁寧に伝えてくれる。〝過去を伝え、現代を考えさせる〟ということは演劇にも通じることなので、私自身も大いに影響を受けています。
『ともだち あなた 戦う心』
2016年11月リリースのミニアルバム『ともだち あなた 戦う心』。故・永六輔氏が遺した詞を歌った表題曲を含む、渾身の4曲を収録。
かとう・ときこ>> 1965年、東京大学在学中にデビューして以来、多くのヒット曲を世に送り出す。女優や声優としても活躍する。
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木ノ下裕一
1985年、和歌山市生まれ。歌舞伎演目の現代劇化を試みる劇団「木ノ下歌舞伎」主宰。
伊波英里
アーティスト
R. Crumb And His Cheap Suit Serenaders
アルバム
『Singing In The Bathtub』
コミック作家、ロバート・クラムの
音楽愛が詰まった唯一無二のバンド
映画『ゴーストワールド』(01)のテリー・ツワイゴフ監督が監修した音楽がとても好きで、彼のバックグラウンドを調べていたところ、コミック作家のロバート・クラムと組んでいたこのバンドにたどり着きました。クラムは戦前音楽のレコードを5000枚以上所持する熱心なコレクターなのですが、そんな彼の偏愛ぶりをメンバー全員が思い切り楽しんでいるのが伝わってくる、とても愛らしいバンドです。自分のルーツにあるはずのない楽曲なのに、聴くたびに懐かしさを感じて不思議な気持ちになります。
『シンギング・イン・ザ・バスタブ』はアメリカの多様なルーツミュージックを楽しめる大好きな一枚で、ジャケットのデザインも最高 ! 本業のコミック制作だけでなく「音楽が好きだからバンドもやるし、やる時は本気で楽しむ」というクラムのスタイルに憧れ、私自身もとても影響を受けています。
『Singing In The Bathtub』
アルバム『Singing In The Bathtub』は、70年代に発表したバンド名を冠した三連作のリイシュー盤として1993年にリリース。
ロバート・クラム・アンド・ヒズ・チープ・スーツ・セレネーダーズ>> ロバート・クラムによる戦前音楽リバイバル・バンド。
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伊波英里<br />
東京都在住。グラフィックデザインを軸に、映像や空間演出、プロダクトなど多方面で活躍中。
Text: Satoko muroga (RCKT), Momoka Oba