幼い頃から聴いている曲や生き方を教えてくれた曲。最近気になっているミュージシャンなど。2020年のいま、音楽を語る上で欠かせない敬愛するアーティストと好きな曲を聞きました。
DJ・Licaxxxを驚かせた繊細で大胆なサウンドetc. いま、一番好きなミュージシャンを教えてください!
Licaxxx
アーティスト
Lapalux
アルバム
『Amnioverse』
リリースの度にアップデートされる
繊細かつ大胆なサウンド
初めて聴いた時、クリアでハイブリッド、かつ聴いたことのない音が鮮明に溶け合う印象を受け、驚きました。初期の2枚は、ポストダブステップの鬱々と湿ったテンションに「ブレインフィーダー」らしいヤンチャなビートの強さが共存していて。丁寧で繊細なのに、ダンスミュージックとしてのワイルドさを忘れないところが好きなポイント。2015年の『ラストモア』では期待をまったく裏切らないアップデートをしていたし、睡眠と覚醒の感覚や、生と死の狭間などのコンセプトを加味して聴くと、より別世界に誘われます。17年のEP『ジ・エンド・オブ・インダストリー』でアンビエントな一面が加わり、音の旋律が耳から離れません。そして2年ぶりの最新アルバム『Amnioverse』で、今欲しているダンスミュージックを繊細に、そして大胆に昇華。新しいラパラックスのライヴセットや現場でのプレイが気になります。
『Amnioverse』
11月に発売されたばかりの4作目となるオリジナルアルバム、『Amnioverse』。(BEAT RECORDS / BRAINFEEDER/¥1,929)
ラパラックス>> UK拠点のトラックメイカー。フライング・ロータス主宰のレーベル「ブレインフィーダー」から音源リリースの度に話題に。
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Licaxxx
DJとして多数の音楽フェスやパーティに出演。編集者、ラジオパーソナリティとしての顔も持つ。
YOSHI
アーティスト
Michael Jackson
曲
「Rock With You」
神が舞い降りてきた!と思うほど
衝撃を受けたポップの名曲
マイケル・ジャクソンは、僕がもっとも尊敬しているアーティストの一人。はじめは、激しいダンスを際立たせる曲が多いのかなと感じていたのですが、いろいろと聴き深めていくうちにメロウなバラードの魅力を知りました。特に「ロック・ウィズ・ユー」を初めて聴いた時は、あまりのかっこよさに「神が舞い降りてきた !」と衝撃を受けたほど。1970〜80年代のムードが詰め込まれているけど、2000年代生まれの僕たち世代が聴いても決して古く感じない、大好きな一曲です。マイケルは歌やパフォーマンスだけでなくアーティストとしてのブランディングも見事だったので、自分自身も彼から学ぶべきところがたくさんあって。彼が成し遂げたことはまさに歴史的だし、彼を超えられる存在はそう簡単に現れないと思うのですが、自分もいつかは彼のようにみんなの記憶に残るアーティストになりたいと目標にしています。
『Off The Wall』
1979年に発売された、5作目となるオリジナルアルバム『Off The Wall』。シングルカットされた「Rock With You」を含む10曲を収録。
マイケル・ジャクソン>> ポップミュージックの象徴として知られる歴史的アーティスト。世界中のファンに惜しまれつつも2009年に逝去。
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YOSHI
新世代のポップアイコンとして注目を集める16歳。映画『タロウのバカ』で俳優デビューも果たした。
むつき 潤
アーティスト
D.A.N.
曲
「Ghana」
バンドを題材にした漫画を描く上で
大きく影響を受けた、原点の音楽
僕はバンドを題材とした『バジーノイズ』という漫画を描いているのですが、2016年にD.A.N.のファーストアルバム『D.A.N.』を耳にしていなければ、きっと今頃まったく違う作品になっていたと思います。「Ghana」は僕が彼らを知るきっかけとなった一曲なのですが、これを聴いた時にはじめて音楽に対して「気持ちいい」という感情を抱きました。冒頭のサンプリングやベース、ビート、リリック、ミュージックビデオなど、曲を取り巻く何もかもがこれまで体験してきたものとは異なり、メロウな曲のトーンとは裏腹にガツンと大きな衝撃を受けました。制作が進むにつれて作品の世界がどんどん広がっていってからも、時々聴いては物語が浮かんだ当時のことを思い出しています。初期衝動に立ち返りたい時には必ず聴くようにしている、『バジーノイズ』にとって原点と言うべき一曲です。
『D.A.N.』
2016年4月にリリースされたファーストアルバム『D.A.N.』。幅広い層から高く評価され、彼らの名を世に広めるきっかけとなった一枚。
ダン>> 2014年に結成した3ピースバンド。ミニマルメロウなクラブサウンドで注目を集め、国内外のライヴやフェスに数多く出演。
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むつき 潤
兵庫県出身の漫画家。現在は『ビッグコミックスピリッツ』で『バジーノイズ』を連載中。
オカタオカ
アーティスト
Heron
曲
「Yellow Roses」
絵を描く上での目標が詰まった
心に染み入る木漏れ日フォーク
今から約4年前に、バンド・水中図鑑を一緒にやっているメンバーの加瀬透くんに教えてもらったヘロン。彼らの音楽はよく〝木漏れ日フォーク〟と例えられるのですが、まさにその通りで、ちょっと弱っている時に手を伸ばしたくなるような優しいサウンドが魅力です。野外で録音をしているのも彼らの特徴で、鳥のさえずりや風の音が聞こえてきたりするのですが、それがまたいいアクセントになっていて、心に染み入ります。「Yellow Roses」は最初に聴いたアルバムの1曲目。とても切なくて寂しい曲なのですが、それさえも大きな優しさで包み込んでくれるというか……。自分が絵を描く上で目指していることのすべてが詰まっているような一曲です。絵を描きながら聴くことも多く、今年の秋に幡ヶ谷の「コミューン」で開催した個展のタイトル「Something Inside」も彼らの楽曲から引用したものです。
『HERON』
1971年に発表されたデビューアルバム『HERON』。木漏れ日に包まれたジャケット写真から想像できるとおり優美でハートフルな一枚。
ヘロン>> 1968年にイギリスで結成。70年代初期にリリースした2枚のアルバムはフォークの名盤として幅広い世代に愛され続けている。
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オカタオカ
雑誌や書籍、アパレルなどのイラストを手がけるほか、バンド・水中図鑑として音楽活動も行う。
Text: Satoko muroga (RCKT), Momoka Oba