ルイ・ヴィトン2018年SSのランウェイに『STRANGER THINGS』のプリントTシャツが登場し、今ファッションピープルからも熱い視線が注がれている海外ドラマ。映画・音楽ジャーナリスト宇野維正さんが動画配信サービスで見られる注目の作品を厳選。解説付きでご紹介する。
年末年始にイッキ観!おしゃれ海外ドラマを大調査。映画・ 音楽ジャーナリスト宇野維正さんの解説付きでご紹介 前編
アメリカのテレビドラマに注目が集まったのは、ケーブル局が年齢制限や放送コードを気にせずに残酷描写や麻薬、セックスを取り上げ、『セックス・アンド・ザ・シティ』(1998-2004)や『ブレイキング・バッド』(2008-13)、『ウォーキング・デッド』(2010-)のような数々のヒット作が生まれたからです。ドラマの世界は自由なんだ、と役者や監督が集まり、お金もかけられるようになりました。
ここ最近の盛り上がりは、『セブン』や『ファイト・クラブ』で有名な映画監督デヴィッド・フィンチャーがNetflixオリジナルの『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(2013-)の演出を手がけた、ということがきっかけです。彼は同業者にものすごく影響力があるので、「映画からドラマに行くのは都落ちじゃないんだ、それが正しいんだ」と皆に思わせた。オスカーを獲った監督だって受賞後にドラマを撮っているんです。テレビドラマの作り方をフィードバックしているように思われる映画も出てきました。今流行を作るのは映画じゃなくてドラマなんです。ドラマの出演者たちがカルチャーやファッションを引っ張っている。
今やドラマはあまりにもレベルが上がっていて、いい脚本や演出の完成度の高い作品が当たり前になり、もう誰も驚かなくなっている。それからどれだけ「はずせる」か、という次の段階に入っています。SNS時代のアメリカ文化の最先端は皆「ツッコミ待ち」なんです。
これを観ないと始まらない!ストレンジャー・シングス 未知の世界
1983年、インディアナ州ホーキンスで少年が姿を消し、親友たちが謎めいた力を持つ少女とともに捜索する。「80年代リバイバルの決定版。映画の専売特許だった“子どもを主人公にしたSFホラー”という題材をドラマでやるというアイデアが新しい。子役スターを盛り上げ、成長を見守るというのもアメリカ人が好む要素です」(宇野さん)。子役たちはブランドのキャンペーンやファッション誌に登場するなど、すでにセレブリティ入りしている。
シーズン1、2 Netflixにて独占配信中
今見るべき作品
\ “抜き”のセンスが光る /
『アトランタ』
アトランタで生まれ育ち、その日暮らしの生活を送っていた主人公がラッパーのいとこのマネージャーになり、自らも音楽活動を始めようとする。「ドナルド・グローヴァーというコメディアン兼ラッパーが手がけています。ラップの中心地アトランタのラッパーたちの日常生活というのはネタとして旬。あえて不可解な部分を残す、“抜き”のセンスがあります」。今年ゴールデングローブ賞を受賞した。
HuluのFOXチャンネルで期間限定配信中
©2016 FX Productions, LLC. All rights reserved.
\ 天才コメディアンが手がける /
『マスター・オブ・ゼロ』
NYで暮らすインド系アメリカ人の俳優デフが主人公。「裕福な知識階級の移民2世、3世を登場させ、新興国からの移民像のステレオタイプを覆した。主演、脚本、監督を務めるコメディアン、アジズ・アンサリはファッション誌の表紙を飾るなど今や新時代の象徴です」。デフの友人も白人、アジア人、黒人のレズビアンと多様。「人種やLGBTQといったあらゆる社会問題も盛り込まれています」
シーズン1、2 Netflixにて独占配信中
\ ハリウッド二大女優が出演 /
『ビッグ・リトル・ライズ』
カリフォルニア州モントレーの高級住宅街に住むママ友たち。ある日、子どもたちが通う小学校で謎の事件が起こる。「ニコール・キッドマンとリース・ウィザースプーンのドラマ初出演作。西海岸のハイソサエティ・ファッションに身を包み、表面ではスマートに振る舞って裏は超ドロドロなママたちを演じています。ジャン=マルク・ヴァレ監督がサスペンスの作り手としての才を開花させた傑作」
シーズン1 Huluにて配信中
©2017 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
\ ソダーバーグ作品のドラマ化 /
スティーヴン・ソダーバーグの映画をドラマ化した作品。シカゴのロースクールの学生クリスティーンは法律家としてのキャリアを積む一方でエスコートガールとして稼ぐ二重生活を送る。「女性を蔑視する顧客から得た情報を売って貶めるなど、サスペンスの要素もある。単純な焼き直しではなく、映画で描かれなかった話がどんどん発展していき、俄然面白くなっています。演出も画面もキレキレ」
シーズン1、2 Amazonプライム・ビデオにて配信中
後編に続きます。
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宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。カルチャーサイト「リアルサウンド映画部」主筆。数々の媒体で連載を持つほか、『1998年の宇多田ヒカル』『くるりのこと』(共に新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)などの著書がある。
Text&Edit: Itoi Kuriyama