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アメリカを代表するアーティストによる、絵画と彫刻の競演 「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」@エスパス ルイ・ヴィトン大阪

アメリカを代表するアーティストによる、絵画と彫刻の競演 「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」@エスパス ルイ・ヴィトン大阪

【TOP画像】「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景 (2021年) Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton


今年1月にオープンしたエスパス ルイ・ヴィトン大阪。船の帆のようなファサードが印象的な、青木淳設計のルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋の5Fに位置する。ここでは現在、アメリカを代表する2人のアーティスト──1950年代に画家としての活動をスタートさせ、第二次大戦後の抽象表現主義の旗手となったジョアン・ミッチェルと、1970年代初めにミニマル・アート運動を牽引した彫刻家カール・アンドレの作品を紹介する「Fragments of a landscape(ある風景の断片)」展が開催中だ。


ジョアン・ミッチェル《UNTITILED》1980年
Courtesy of Fondation Louis Vuitton Photo credits: © Keizo Kioku/Louis Vuitton

ジョアン・ミッチェルは、ニューヨークを拠点に活動した画家。ニューヨークで、コンラッド・マルカ=レーリ、ウィレム・デ・クーニング、フランツ・クラインが設立した芸術家の集いの場「ザ・クラブ」(「8thストリート・クラブ」とも呼ばれる) の活動に参加する一方、パリと往き来する生活を送り、フランスでは北米出身のアーティストたちと親交を深めた。

ジョアン・ミッチェル《MINNESOTA》1980年
Courtesy of Fondation Louis Vuitton Photo credits: © Keizo Kioku/Louis Vuitton
作品のタイトル《Minnesota》と、4枚のパネルにわたる横長で巨大なフォーマットは、ミッチェルの出自、アメリカに寄せる想いの表れだという。黄色と青の大きなストロークを特徴とするこの絵画は、ヴェトゥイユにあるミッチェルの庭の色彩を反映しているそう。

1969年、クロード・モネが住んでいたことで知られるヴェトゥイユに居を構えると、豊かな色彩によって光に寄せる想いを表現しはじめ、ミッチェルは「抽象的印象派」と呼ばれるようになる。ただ、この呼称は、彼女の作品の骨格をなすダイナミックな対立──自然を忠実に表現したいという想いと、尊敬するファン・ゴッホから影響を受けた主観的で激烈な表現のパワーのぶつかり合い──を消し去るものだった。今回展示される一連の作品は、風景画として描かれているが、豊かな自然を目の前にしたときに広がる鮮烈なイメージをそのまま表現したような、粗削りのパワーが感じられる。

ジョアン・ミッチェル《SOUTH》1989年 Courtesy of Fondation Louis Vuitton
Photo credits: © Keizo Kioku/Louis Vuitton
ミッチェルは、アメリカとフランスの近代表現の概念を見事に融合させることで、自らの経験と記憶を統合し、写し取られた感情の尽きることのない源を作り上げた。

今回展示される《Untitled》(1979年) や《Cypress》(1980年) は、1980年代初頭、才能の絶頂期を迎えた時期の作品。晩年期の作品に見られる光と色が交互に繰り返される抽象的「モチーフ」は、彼女の筆遣いがますます自由になっていったことを示している。そして、5月からは新たに2点の作品、《Minnesota》(1980年)と《South》(1989年)が展覧会に加わり、ミッチェルの成熟期をますます堪能できるようになった。

カール・アンドレ《DRACO》1979-2008年
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton © Adagp, Paris 2021
Photo credits: © Keizo Kioku/Louis Vuitton

 

もう一人の作家、カール・アンドレは、建築的なアプローチが特徴的なアーティスト。基礎的な素材を好んで扱うのは、前の世代が実践していた抽象表現主義への反応の表れとも言える。自身の探求はより原理的な方向へと進み、素材は彫刻を施すよりも未加工の状態のほうが興味深いとの信念を抱くようになる。そして、ついには素材に手を加えることを全面的に放棄し、煉瓦や丸太や規格品である合成コンクリートブロック、金属板などをそのまま使うまでになった。

「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景 (2021年)
カール・アンドレ《Draco》1979-2008年 Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton
ジョアン・ミッチェル
《Minnesota》1980年、《South》1989年 Courtesy of Fondation Louis Vuitton
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton

アンドレの創作の原理原則は、形状、構造、場所の等価性。本人によると、彼の作品は周辺の環境と切り離せぬ関係を結んでいて、作品自体に固有の意味があるわけではなく、作者が手を加えた痕跡は残っていない。今回展示される《Draco》(1979-2008年) は、ウェスタンレッドシダー(ベイスギ) の材木を組み立てた作品。素材そのものに手は加えられていないが、展示室を区切るように中央に置かれていることで、来場者の動線に明らかな影響を与えている。実際に訪れてみると、木材のボリュームや置かれる場所が、この空間を決定づけていることがわかるだろう。

「FRAGMENTS OF A LANDSCAPE」エスパス ルイ・ヴィトン大阪での展示風景 (2021年)
カール・アンドレ《Draco》1979-2008年
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton
ジョアン・ミッチェル《Untitled》1979年、《Minnesota》1980年、《South》1989年
Courtesy of Fondation Louis Vuitton
Photo credits: © Keizo Kioku / Louis Vuitton

一見したところ背反する2つの芸術潮流──激烈な色使いによる自由な表現と、あるがままの素材で見せる幾何学的厳密さ──は、同じ空間に並ぶことで、場の緊張を生み出すと同時に、双方の奥深さもまた照らし出されている。次々と実験的アプローチが生まれ、時代の潮流をつくりだしてきた戦後アメリカ美術において、根本に迫るアプローチによって時代を切り拓いた二人の作家の競演を、ぜひ楽しんでみてほしい。

「Fragments of a landscape (ある風景の断片)」

会場: エスパス ルイ・ヴィトン大阪
住所:大阪市中央区心斎橋筋2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5F

会期:開催中~2021年7月4日(日)
開館時間: 11:00-19:00(*緊急事態宣言発令中のため。事前にHPで確認を)

休館日: ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準じる。
入場料: 入場無料
*予約不要

公式HPはこちら

柴原聡子

建築設計事務所や美術館勤務を経て、フリーランスの編集・企画・執筆・広報として活動。建築やアートにかかわる記事の執筆、印刷物やウェブサイトを制作するほか、展覧会やイベントの企画・広報も行う。企画した展覧会に「ファンタスマ――ケイト・ロードの標本室」、「スタジオ・ムンバイ 夏の家」など

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