ハンドバッグに、『銀座百点』を入れて。銀座の文化的タウン誌の62年。( 文・山崎まどか )

ハンドバッグに、『銀座百点』を入れて。銀座の文化的タウン誌の62年。( 文・山崎まどか )

銀座の街に62年続く文化的なタウン誌『銀座百点』とGINZAがコラボレーションした5月号の別冊付録『ギンザ百点』。ささやかだけれどこの街に在り続ける魅力のひとつひとつを探して集めて作りました。その中からいくつかの記事をお届けします。

ハンドバッグに、 『銀座百点』を入れて
銀座の文化的タウン誌の六十二年。


私は銀座に出かけたら、喫茶店やお店のレジ脇に「銀座百点」の最新号が置かれていないか必ずチェックする。横長の判型も洒落ているこの小冊子は、銀座の商店の協同組合である「銀座百店会」が発行しているタウン誌だ。タウン誌と言っても、そこは銀座。執筆陣は豪華だし、銀座の歴史やお店に関するエッセイや読み物がいつも充実していて、街の文化を感じさせる。私にとっては、銀座のおでかけにおけるスーベニールのような存在である。銀座だからこんな特別な雑誌になるのか、それとも「銀座百点」というタウン誌そのものが特別なのか。気になって、編集部を訪ねてみた。

「銀座百点」の創刊は一九五五年(今年で創刊六十二周年!)。「その頃、“銀座斜陽論”というものが囁かれていたという話です」と現編集長の田辺夕子さんは語る。彼女がテーブルの上に置いたのは、銀座・伊東屋特製のリーガル・パッドとバインダー。文房具の選択にも銀座への愛を感じる。「ターミナル・ビルやデパートが各地に次々とできて、銀座への客足が遠のくのではないか。そう考えた専門店の人々がこの街の文化を届けるタウン誌を作ろうとして、力を借りるために当時は銀座のみゆき通りに本社があった文藝春秋社の車谷弘さんを訪ねたといいます」。その縁があって、「銀座百点」は最初から人気作家をずらりと揃えることができた訳だ。創刊号に目を通してみても、吉屋信子、久保田万太郎、源氏鶏太、森田たまと素晴らしい布陣だ。

文藝春秋の編集部があっただけではなく、当時の銀座は文学者にとって馴染みの深い場所だった。作家たちはお洒落して「都会」であるこの街に来て、文壇バーで編集者や仲間と飲み明かし、文学談義に興じていたのだ。「銀座百点」から生まれたアンソロジーや書籍も多い。向田邦子の『父の詫び状』や池波正太郎の『銀座日記』、和田誠が広告制作プロダクションのライトパブリシティに勤めた若き時代を振り返る『銀座界隈ドキドキの日々』も「銀座百点」の連載をまとめたものである。

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『銀座百点』1976年2月号〜78年6月号に連載された向田邦子のエッセイ。後に『父の詫び状』(文藝春秋)のタイトルで単行本化された。

「銀座百点」の目玉は有名な作家の文章だけではない。個々のお店についての記事や、その店主の話がとにかく面白い。訪ねてくる人にとって銀座は晴れ舞台のような場所だが、影の主役はそこで商売をしている人たちだと思わずにはいられない。みんな独特の美学と商売哲学があり、銀座を愛している。「銀座百点」の中にある銀座は「街」というより、東京の粋と人の温もりを感じさせる「町」なのだ。それがノスタルジーとしてではなく、実際の銀座に息づいているのを私はこのタウン誌越しに感じる。ずっと変わらないけれど、同時に最先端の流行も吸収して、モダンであり続けるそんな銀座という「町」のあり方が、そのまま「銀座百点」のスタイルになっているかのようだ。

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1955年の『銀座百点』創刊号に掲載された、「銀座百店会」の会員100店舗のリスト。

ずっと変わらないといえば、創刊時から変わらないユニークな判型は、当時、関西で人気だった小冊子「あまカラ」(一九五一年〜一九六八年)を意識したもの。「丸めればスーツの内ポケットに入る、ハンドバッグに入る」という買い物のついでにちょうどいいサイズになっている。創刊号から一九六九年までは佐野繁次郎が題字と表紙のデザインを担当していて、その洒落た表紙を目当てにこの頃の「銀座百点」を古書店で探す人も多い。デザインといえば、創刊時から今まで「銀座百点」のレイアウト指定は編集部の人たちが自ら手がけているそう。「トレーシングペーパーと赤鉛筆、青鉛筆を使う編集部はもうそんなにないのではないでしょうか」。その美学は、クラフト・エヴィング商會がアート・ディレクションを手がける今も受け継がれている。去年から復活した佐野繁次郎の題字と洗練された表紙デザインが不思議とマッチしていて、今の「銀座百点」も取っておいてコレクションしたくなる。「そういう人のために、特製のバインダーも小社で販売しています」。背に「銀座百点」の題字が入ったグリーンのバインダー式ファイル、欲しくなった! そこに挟まれるタウン誌は銀座の文化と、そこに赴く時のワクワクとした高揚感の記録なのだ。

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『銀座百点』1年分12冊を合本にして綴じられる、厚紙芯入りの布製ファイル。¥540

山崎まどか

やまさき・まどか≫ コラムニスト。著書に『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)、『「自分」整理術』(講談社)、翻訳にレナ・ダナム『ありがちな女じゃない』(河出書房新社)、B・J・ノヴァク『愛を返品した男』(早川書房)、日本語版監修『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』(スペースシャワーネットワーク)がある。

 

Photo:Kanako Nakamura


いかがでしたでしょうか?GINZA5月号についている実物の『ギンザ百点』も、ぜひ手に取ってめくってみてください。文庫本よりも少し大きいくらいのサイズ感なので、バッグに入れて銀座へおでかけしても、ベッドボードに置いて寝る前に少し眺めてもらっても。GINZAが愛する銀座のことを、一緒に楽しんでいただけたらうれしいです。

GINZA2017年5月号別冊付録ギンザ百点掲載

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