名作、怪作そろい踏み!唯一無二の表現を磨いて人間の輪郭に光をあてる。広くて深い現代日本文学の海から編集部セレクトの小説と随筆を紹介。全32冊から今回はNo.25からNo.27の本をピックアップ。#32冊の現代日本文学
🎨CULTURE
GINZA編集部が32冊の現代日本文学をレコメンド vol.9|いしいしんじ『よはひ』etc.
25
『よはひ』
いしいしんじ
商店街で活動する4人のサンタさんは、クリスマスが簡素化される現状が寂しい(「さまざまな年のサンタクロース」)。“犬”の顔をしたバス運転手の車輌では、産気づく妊婦が後を絶たない(「犬はどこへいくん?」)。時をかけてつながる27の物語。(集英社文庫/¥820)
26
『火山のふもとで』
松家仁之
頁をめくるたびに甘酸っぱさが広がる。坂西が入所した設計事務所は、夏は軽井沢の山荘をオフィスにしていた。そこでの会計事務や雑事を担当するのは、建築家の姪だ。社内恋愛禁止と知りつつも、知的で奔放な彼女に魅了されていく。(新潮社/¥1,900)
27
『夢見る帝国図書館』
中島京子
戦後を生き抜いた友からの熱望で、上野の図書館が刻んだ150余年を小説にする《わたし》。教育のために設立された同館は、明治〜昭和は軍事費を捻出するため、予算削減の憂き目に何度も遭っていた。戦争が起こると、書物も苦しむ。(文藝春秋/¥1,850)
Photo: Natsumi Kakuto Text: Mako Matsuoka Collage: Takashi Tanaka