名作、怪作そろい踏み!唯一無二の表現を磨いて人間の輪郭に光をあてる。広くて深い現代日本文学の海から編集部セレクトの小説と随筆を紹介。全32冊から今回はNo.28からNo.30の本をピックアップ。#32冊の現代日本文学
🎨CULTURE
GINZA編集部が32冊の現代日本文学をレコメンド vol.10|川崎 徹『あなたが子供だった頃、 わたしはもう大人だった』etc.
28
『あなたが子供だった頃、 わたしはもう大人だった』
川崎 徹
心に体に、振る舞いに、時間が静かに降り積もって老いが形を成していく。少年、青年、中年から老年へ、いくつもの瞬間を同時再生するように、主人公は記憶のなかを行き来する。過ぎ去った者たちに柔らかな眼差しを向ける2作を収録。(河出書房新社/¥2,200)
29
『されど私の可愛い檸檬』
舞城王太郎
姉妹や夫婦、そして同僚など身近な関係に迫った3編。幼少期から女王様に君臨する姉が失踪!?幸福の陰に潜む狂気とは(「トロフィーワイフ」)。恋もバイトも適当な磯村が主役の表題作。臆病者で優柔不断だが、なぜか女性や先輩から慕われる。(講談社/¥1,500)
30
『庭』
小山田浩子
タマネギとエンドウを育て、フキノトウを摘み、小花を踏む母。墓には彼岸花の赤色が染みこみ、風呂場では無数の蟻が肌に触れる。ふいに姿を現す動植物の見知った感触に目が喜んだ一瞬後、現実に似たどこかへ連れられていく15編を収める。(新潮社/¥1,700)
Photo: Natsumi Kakuto Text: Mako Matsuoka Collage: Takashi Tanaka