ひよっこ警察官・川合(永野芽郁)と刑事課の元エース・藤(戸田恵梨香)、交番女子ペアの奮闘を描く『ハコヅメ』(日本テレビ、毎週水曜22時)3話。はじめて一人で挑んだ聴取で失敗してしまう川合……。新型コロナウイルス感染が伝えられた永野芽郁を心配しながら、ドラマを愛するライター、釣木文恵が振り返ります。
戸田恵梨香×永野芽郁『ハコヅメ』3 話。女性だからこそできる仕事? 自分にしかできない仕事?
たった10%の女性警察官の存在
今年5月、産経新聞で「警視庁で初の女性警視正誕生」というニュースが報じられた。警視正は警視総監、警視長に次ぐ地位。記事によると「全国すべての警察で女性警察官が採用されたのは平成6年度」「令和2年度、全国の女性警察官は全体の10.2%を占めるまでに」とある。仕事の特殊性もあいまって、まだまだ女性が少ないのが現状らしい。そんな状況だから、『ハコヅメ』の川合(永野芽郁)たちも週に一度の警察術科訓練で女性に合ったメニューや装備が与えられず、男性に混じっての訓練に翻弄されている。このシーンを見ていると、平等というのはすべてを一律に同じにすることではなく、それぞれが力を発揮できる状況がそれぞれに与えられることなのだと痛感する。
女性だからこそできる聴取案件
警察の仕事の中には「女性だからこそできること」もある。刑事課に呼び出された川合が源(三浦翔平)と山田(山田裕貴)から依頼されたのは、女子高生・彩奈(畑芽育)の痴漢被害聴取。男性からの性被害を受けている彼女は男性の顔を見るのも怖いだろうという理由で、その日唯一手が空いていた川合に白羽の矢が立ったのだった。一人での聴取ははじめての川合。彩奈はそれほど深刻そうな様子ではなく、聴取もつつがなく終わる。しかしその後目撃者の男子高校生・早見(池田優斗)が現れ、その証言によって彩奈が実はかなりの被害を受けていたことが判明する。
「大事なのは彩奈さんの気持ちでしょ?」「ちゃんと彼女の様子を確認しながら話をした?」
と藤(戸田恵梨香)に言われ、山田からも「警察の仕事なんて報われないことばっかりだよ」「でもこの街で起きた事件は俺たちでなんとかするしかないだろ」と諭され、自分の未熟さを思い知らされる川合。さらには彩奈が事件以来学校にも行けず部屋に閉じこもっていることを知る。川合は「女性だからこそ」の部分を発揮できなかった。
川合がいよいよその能力を開花させる?
早見の証言を元に、絵の得意な牧高(西野七瀬)が似顔絵をつくるが、捜査は難航する。絵がうますぎて逆に犯人にたどり着けないのではないかと考えた藤は、決してうまくはないが特徴を捉えた伊賀崎(ムロツヨシ)の似顔絵を描いていた川合に改めて描かせることに。川合は「顔の輪郭は食べ物でいうと?」など独特すぎる聞き方で特徴を聞き出して似顔絵を完成させる。さらにその時の早見の表現から「説明よりも実際は目が小さいかもしれない」と些細な違いに気づき、容疑者の絞り込みに成功する。川合は他の誰でもない、「川合だからこそ」できる方法で、犯人に近づいたのだ。
「供述を引き出すセンスと、その本質を見抜く洞察力。あんたにはそのセンスがあるのかもしれない」と藤は川合に声をかける。「藤の期待に応えたい」と思うようになっていた川合が少しずつ警察官としての能力を獲得していく。『ハコヅメ』には、思いがけずビルドゥングスロマン的側面があるのかもしれない。
脚本: 根本ノンジ
演出: 南雲聖一、丸谷俊平、伊藤彰記
出演: 戸田恵梨香、永野芽郁、三浦翔平、山田裕貴、西野七瀬 他主題歌: milet「Ordinary days」
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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Illustrator たけだあや
イラストレーター、ときどき粘土作家。趣味の多い京都府出身。
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