回を追うごとに川合(永野芽郁)が警察官として成長していく『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(日本テレビ、毎週水曜)。しかし6話ではその川合にブレーキがかかる。川合は、そしてペアである藤(戸田恵梨香)との関係はどうなるのか。
『ハコヅメ』6話。川合と藤、ペア解消の危機に、源(三浦翔平)が男前過ぎる!
川合の藤に対する強い憧れ
『ハコヅメ』の軸となっているのは、新米警察官川合(永野芽郁)とエリート警察官藤(戸田恵梨香)のペアだ。正義感も使命感も持ち合わせていなかった川合が、藤と一緒に過ごし、藤の仕事に対する姿勢にふれるうちに「警察官らしい面構え」になっていく、そんな物語だ。
20歳そこそこの恋愛経験も社会経験もほとんどない若者が、「飲まず食わず寝ず」の過酷な仕事に飛び込む。そこで仕事に真摯に取り組むかっこいい先輩に出会ってしまったらそれはもう、いわゆる刷り込みのようなもの。川合は藤のようになりたい、藤に近づきたい、認められたいと、ある種の恋愛感情にも似た強い憧れを抱いている。今回の「藤さんの好きなところならすぐ言える」という川合の発言に代表されるような、1話からところどころで出てくる二人の「いちゃいちゃ」と形容したくなるシーンはその関係性を表している。
この世界に登場する警察官はかなり人間くさい。仕事に愚痴をこぼすこともあるけれど、上の人たちに対するメンツを最優先にしているように見える副所長(千原せいじ)も、サボることを最優先に考えているという伊賀崎(ムロツヨシ)も、その実、警察官としての使命感は持っている人たちばかりだ。だから川合はかなり恵まれているのだろう。現実では警察官に限らず、新人が誤った憧れを抱いてしまうこともあるのだろうな、それがいわゆるブラック企業とそこから逃げられない人々を生むのかもしれないな、なんて余分なことにまで思いを馳せてしまう。
できない人間も優等生も、悩んでいるのは同じ
川合は実際、藤の薫陶を受け、警察官としての実力もどんどん身についているようだ。周りから褒められることも増えてきた。そんな折、川合は交通事故で車外に投げ出された乳児の遺体を見てしまい、ショックを受けて仕事に出られなくなる。藤に「藤さんとは違うんです、もう放っといてください」という言葉を投げつける川合。
藤もつい川合のつもりで伊賀崎に話してしまったり、喧嘩の仲裁で伊賀崎と連携がうまくとれなかったりと、川合の不在に相当こたえている様子が描かれる。いつものように強引にでも川合を立ち直らせることができないのは、藤と同期の桜(徳永えり)に川合と同じように「もう放っといてください」と言われたこと、その桜がいまもって仕事に復帰できない理由に関係がありそうだ。
ショッキングな現場を見て、それでも仕事として立ち直れる敏腕警察官と、それができない普通の警察官。できない人間につい共感してしまいがちだけれど、できない人間に「あなたはできるからいいよね」と拒絶される優等生のほうだって、別に楽にそれができているわけではないのだ。
誰かがやらなきゃいけない仕事を選んだ宿命
どうしても立ち直れず、しばらく休みをとって実家に帰ろうと決める川合。そこに交通課の宮原(駿河太郎)がやってきて言う。「やめちまえよ、警察なんて。お前がまともだ」「赤ん坊のご遺体見た後に三食食ってぐっすり眠れるほうがどうかしてるんだよ」。2話でも親身になって話を聞いていた女性の家をガサ入れしなければならなくなり、できなかった川合に藤が同じことを言っていた。その「どうかしてる」状態になることが求められる職業ということ。
それでも藤が警察をやめない理由は、「誰かがやらなきゃいけない仕事だから。だったら私がやろうと思って」。その姿勢に心動かされ、川合は立候補していた「子ども会防犯教室」の仕事だけは最後までやると決める。子どもに「なぜルールを守らなきゃいけないんですか?」と聞かれ、「警察官はプリキュアでもヒーローでもない。全部の事故をなくせないから」と答えた川合は、もうその時点で警察官として復帰する決意ができていたのだろう。
その教室終わりに脇見運転の車が子どもに突進してきて、子どもを守ろうとした川合が軽い接触事故に遭ってしまう。伊賀崎と藤が過剰に反応した背景にも、もしかしたら桜の存在があるのかもしれない。「川合になにかあったら」と泣いてしまう藤を「あ、合コンのメールだ」と気を遣わせず周囲の目線から隠す源(三浦翔平)、男前!
メンタルヘルス講習で伊賀崎は「みなさんの命の手綱を握っているのはたいして思い入れのない、ここにいる同僚だけなのです」と言った。たいして思い入れがないなんてとんでもない、川合と藤はお互いにとってなくてはならない存在になっているようだ。
脚本: 根本ノンジ
演出: 南雲聖一、丸谷俊平、伊藤彰記
出演: 戸田恵梨香、永野芽郁、三浦翔平、山田裕貴、西野七瀬 他主題歌: milet「Ordinary days」
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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Illustrator たけだあや
イラストレーター、ときどき粘土作家。趣味の多い京都府出身。
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