近年のファッションフォトと言えば、フィルム写真、ユニークなポーズや顔のモデル、ドキュメンタリー性、ヌードフォトなどが挙げられるだろう。もちろん表層的に似ていてもコンセプトや視点が異なる写真家はいるが、日本でも巷にフィルム写真が普及する程にそのスタイルは“それっぽい”と言われるようにもなってしまったと思う。
そんな近年のファッションフォトに多大な影響を与えた若手写真家といえば、Harley Weirではないだろうか。意外にもファッションに携わる前は紛争地帯へポートレイトを撮りに旅行に出かけていた彼女。だからこそ、彼女は親密で刺激的なポートレイト写真が多く、かつ色気のあるドキュメンタリー性を放つ。そこには完全な現実世界でもなく、ファンタジーでもない彼女独自の世界観が秘められている。
一躍注目を浴びてから、いままで名だたるファッションブランドのキャンペーンフォトを撮ってきた彼女がついに2作目となる写真集『PAINTINGS』を発売した。出版社は第1作目の時と変わらず、イギリス拠点・Loose Joints。
これまで彼女の写真集を初めて見る読者でもあり、写真集に対しての彼女の想いを一緒に形にしてきたLoose JointsのLewisとSarahに話を聞いた。
■Harley Weirと写真集を作り始めたきっかけを教えてください。
Harley Weirは、約1年半前に仕事を始めたことがきっかけでした。お互いのことをよく知っていたので、書籍制作はとてもオープンで気軽に話し合いながら作り上げることができました。例えば2016年に初めて一緒に制作した写真集『Homes』は、パリ・カレーの難民キャンプをテーマに取り上げました。出来るだけ早く仕上げることに重きを置いていたので、約10日間で一緒に編集、デザイン、本のプリントまで行いました。
■いままでの写真集を見てきた1人として、Harley Weirの新作写真集をどのように考えますか?
『Homes』とは異なり、Harleyの新作写真集『PAINTINGS』は、約1年かけて彼女と作り上げてきました。彼女は、普段の撮影方法を自由に解放し、呼応するような形態として、美しく、テクスチャーを感じるような絵画的なイメージを数年間にわたり集めていました。そしてSarahとHarley はすべての瞬間を1冊の細かい配列におさめるためにお互いの考えを重ねてきました。
普段のポートレイト撮影や他作品でディレクションする行動は、様々な力や緊張が加わってきますが、それらに呼応するように『PAINTINGS』では、ピースフルで瞑想にふける作品を並べています。レイアウトとリズムもとても重要でした。すべてのセクション、小さなメロディー、時たま挟む静止、空白のページ、変化を許すような余地。私たちはそれをまるで一つの音楽になっていくように感じました。
彼女がよく用いるワインレッドカラーで『PAINTINGS』と書かれた本書を開くと、色とりどり様々なテクスチャーの写真が並ぶ。Loose Jointsが語るように、それは永遠と続くわけではなく、時たま白紙のページが続き、楽譜を読む感覚と似ている。
自身の表現について「全く自分をアーティストだと思ったことがないです。ただただ好奇心旺盛なだけです。」と語るように今までの彼女の写真より、彼女本来のプリミティブな部分を映し出している1冊。ロンドン・Tender Booksでは現在発売を記念したウィンドウディスプレイが開催中。
『PAINTINGS』by Harley Weir
¥7,000(税抜)
160 ページ / 222 x 265 mm
限定1,000部
出版 LOOSE JOINT