いちいち文字にしたくないけど、今年はとにかく暑い。どこか涼しくなれる場所はないものかとフラフラしながら、「ギンザ・グラフィック・ギャラリー」の扉を開けた。すると一転、空気が青い!
中に入ると、いつものギャラリー空間が、ネオンとギャルに彩られるプールサイドになっていた。真ん中には水面ゆれる都会のプール。床の真っ白いタイルが、ピンクのネオンに染められている。しかも、ジューシィなギャルがそこかしこに。
ばっちりメイクとこんがり小麦色の肌。ぴちぴちと弾ける、ちっちゃいビキニやパンティを身に着けたナイスバディ。さっきまで夏なんて早く終わってしまえ!と思っていたのに、やっぱり夏っていいな~~プール行きたいな~~と、すっかり気分も変わってしまった。
これは、70年代から80年代にかけてパルコの広告などで一世を風靡した山口はるみの展覧会だ。彼女が描く“いいカラダ”の女たちは、ハルミギャルズと呼ばれ、絶大な支持を得た。それは、西武やパルコの広告が打ち出した新しい女性像を体現するアイコンだった。
「カリビアン サンセット」1979 ©Harumi Yamaguchi Courtesy of the artist and NANZUKA
今回、アーティストのYOSHIROTTENとのコラボレーションによって、ハルミギャルズたちは2018年の私たちの前に、生き生きと現れた。
ネオン、プール、カクテル、パームツリー。とびきりごきげんなシーンは80年代らしい陽気なムード。豊満なバストや桃尻、ムチムチした腿を見せつけてくるエロチックなギャルたちも80sっぽい。でも、まったく色あせていない。それどころか、すごくフレッシュでチャーミング。
なぜだろう?と考えながら、階下の展示室へ。壁いっぱいに、すさまじい量の仕事がコラージュされている。男を誘うような艶めかしいポーズのギャルズに、各時代を切り拓いてきた強い女性のポートレートを描いたシリーズなども混じる。魅惑的なモデルたちも、若かりしブルック・シールズも、晩年のジョージア・オキーフだって、自信に満ち溢れていて男ウケなんて二の次、自分のために強く美しい女たちだ。だから、山口はるみの描く女たちを見ると元気が出る。
今回の展覧会にあわせて出版された作品集に、西武やパルコの広告をともにした小池一子がテキストを寄せている。「はるみさんの女たちは時代を先取りことすれ時代にすり寄ったりはしなかった。むしろ柔な感情移入を跳ね返す力にみちたイラストレーションは、時代そのものをはじき返し、そうすることで女の像がいつも新鮮であり続ける。」
底抜けにハッピーとは言えない今の時代だって、自信をもって前に進めば楽しい時間がやってくる。そうギャルズが教えてくれた気がして、私は勢いよく、うだる暑さの街へ出発したのだった。
会場風景写真すべて:藤塚光政 or Photo: Mitsumasa Fujitsuka