ミュージシャンから直オファーが絶えない服部昌孝は、どんなことを考えてMVと向き合っているか。普段は語られない、あの曲の、あのシーンを解説。
スタイリスト服部昌孝のMV×ファッション考察 BiSH編
BiSH
「ぴょ」
①ジョン・ライドン
②ジョー・ストラマー
③カート・コバーン
④ダグ・トンプソン
⑤ビリー・ジョー・アームストロング
⑥フレディ・マーキュリー
「新曲の『ぴょ』は、歴代の名ヴォーカルをオマージュした6人6色のスタイル。それぞれモチーフに合わせて、アイコニックなアイテムを必ず1点以上入れました。ただ、あまりにも直球過ぎるとコスプレになってしまうので、あくまでもメンバーの個性が垣間見える塩梅に。たとえば、フレディ・マーキュリーは白スニーカー、カート・コバーンはパジャマパンツといった具合。あまり知られていないけど、その人とわかるアイテムを忍ばせています」(服部さん)
「バックメンバーまで、20体以上のスタイリングを組んでいただきました。大変な仕事でも、手を抜かず、泣き言を口にしないストロングなタイプ。我々の演出をいつもグレードアップしてくれる」(監督 田辺秀伸さん)
🗣️
BiSH
“楽器を持たないパンクバンド”BiSH。その名の通り、型破りで激しいライヴパフォーマンスが人気。2023年をもって解散することが発表され、今年は12カ月連続でシングルをリリース予定。
短所を隠すなんてもったいない
服部さんがMVのスタイリングで常に考えているのは、被写体の短所は消さずに、それもすべてさらけ出すこと。
「本人がコンプレックスに感じていることが、実はいちばんの武器になる。顔のホクロとか、大きいお尻とか、人それぞれ抱えている悩みはいろいろあるけど、そのほとんどがまわりとは違う自分だけの個性。それをウィークポイントと捉えるかどうかの違いなだけ」
武器となるものを客観的に伝えたうえで、お互いが納得できるスタイルを仕上げていくのが服部さんの進め方。
「ファッションアイコンをつくるのだってスタイリストの仕事です。どこかに提案があったり、今っぽかったり、真似したかったり、目に留まる要素をスタイリングに忍ばせることもしています。時には、業界でタブーとされることにも挑んできました。たとえば、メンズ服を女性に着せたのも、そう。今では、当たり前の文化として街にまで浸透していますが、それもアーティストを通じて、そこそこ時間をかけて発信し続けてきたこと。世の中に対して、新しい価値観をどうブーストさせるか。その答えが、今の時代はMVだと思い取り組んでいます」
🗣️
服部昌孝
2016年yahyelのMV「Alone」をきっかけに音楽シーンでもスタイリングを担当。制作会社「服部プロ」では作品の製作総指揮をとる。