ミュージシャンから直オファーが絶えない服部昌孝は、どんなことを考えてMVと向き合っているか。普段は語られない、あの曲の、あのシーンを解説。
スタイリスト服部昌孝のMV×ファッション考察 iri編
iri
「摩天楼」
①赤いコーチジャケット
②グラデーションカラーのレーストップ
③レザーパンツ
④バスケットシューズ
「女性から支持されるディーバとしてのポテンシャルを秘めているのが、iriです。サイズ感や足元は今の時代とシンクロするようなストリート感が軸ですが、艶のあるジャケットやレザーパンツといったモードな味つけを随所に加えています。いわば、一歩先ゆくストリートファッション。テスラの電気自動車、タトゥー、ダイバーシティなキャスティングなど、新しい価値観がちりばめられたMVなので、スタイリングの鮮度も高めました」(服部さん)
「コーチジャケットの光沢や、インナーのグラデーションなど、いつも“おっ”と感じる遊び心のあるワンポイントをプラスしてくれる。事前に共有したリファレンスよりも、必ず上をいく提案が出るので撮影当日が楽しみです」(監督 Yudai Maruyamaさん)
🗣️
iri
2016年、アルバム『Groove it』でメジャーデビュー。ヒップホップ的なリリックとソウルフルな歌声でジャンルレスな音楽を展開。RADWIMPSやmiletの作品にも参加し注目を集める中、先日ニューアルバム『neon』をリリース。
短所を隠すなんてもったいない
服部さんがMVのスタイリングで常に考えているのは、被写体の短所は消さずに、それもすべてさらけ出すこと。
「本人がコンプレックスに感じていることが、実はいちばんの武器になる。顔のホクロとか、大きいお尻とか、人それぞれ抱えている悩みはいろいろあるけど、そのほとんどがまわりとは違う自分だけの個性。それをウィークポイントと捉えるかどうかの違いなだけ」
武器となるものを客観的に伝えたうえで、お互いが納得できるスタイルを仕上げていくのが服部さんの進め方。
「ファッションアイコンをつくるのだってスタイリストの仕事です。どこかに提案があったり、今っぽかったり、真似したかったり、目に留まる要素をスタイリングに忍ばせることもしています。時には、業界でタブーとされることにも挑んできました。たとえば、メンズ服を女性に着せたのも、そう。今では、当たり前の文化として街にまで浸透していますが、それもアーティストを通じて、そこそこ時間をかけて発信し続けてきたこと。世の中に対して、新しい価値観をどうブーストさせるか。その答えが、今の時代はMVだと思い取り組んでいます」
🗣️
服部昌孝
2016年yahyelのMV「Alone」をきっかけに音楽シーンでもスタイリングを担当。制作会社「服部プロ」では作品の製作総指揮をとる。