ミュージシャンから直オファーが絶えない服部昌孝は、どんなことを考えてMVと向き合っているか。普段は語られない、あの曲の、あのシーンを解説。
スタイリスト服部昌孝のMV×ファッション考察 番外編
2020年に始動した制作会社「服部プロ」の作品
手がけるのは、今や衣装だけではない。自ら立ち上げた制作会社では映像作品の製作総指揮をとり、よりトータルな視点でMV×ファッションに切り込む。
Awich
「Happy X-mas (War Is Over)」
①ワッチキャップ
②ゴールドのピアス
③オーバーサイズのスウェット
④メンズのデニムパンツ
⑤スニーカーのリプロダクト
「大きなスウェットに、ゆるいメンズのデニムパンツ。裾を引きずらないよう大胆にロールアップさせています。靴はナイキのコルテッツのようで、実はハイヒールになったリプロダクトもの。普通に見えて、普通じゃないとはまさにこれ。いかにも服好きって感じよりも、この塩梅の方が断然おしゃれじゃないですか。画面の先にいる人がこのバランスを真似て街に出てほしい、という期待を込めてネクスト・ディーバ、Awichに着こなしてもらいました」(服部さん)
「衣装というより、普段着のような抜けた感じで、色気とタフなイメージのあるAwichとのギャップを生んでほしいとリクエストしました。本当にたくさんのスウェットとニット帽を提案してくれました」(監督 守本勝英さん)
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Awich
ヒップホップクルー、YENTOWN所属の女性ラッパー。2006年、EP「Inner Research」でデビュー。伸びのある美しい歌声と、日本語、英語、沖縄の方言が混ざったリリックが印象的。ニューアルバム『Queendom』が発売中。
佐藤千亜妃
「Who Am I」
①ペイズリー柄のシャツ
②メンズのヴィンテージデニムジャケット
③イージーパンツ
「千亜妃ちゃんの場合、端正なルックスなので、あまり女性らしい服を着せるとコンサバになってしまいます。それだと、MVの世界観には合わない。ちょうどいいのは、男性のワードローブのようなもの。バサッと羽織った大きめのデニムジャケットにペイズリー柄のシャツを合わせたのは、そういった理由から。ウイルスが蔓延する現代を風刺したような映像に合わせて、味のある生地感のアイテムでやや退廃的なムードも加わっています」(服部さん)
「薄汚れたデニムジャケット、そのサイズ感も、被写体が映像の世界の住人になるように調和のとれたスタイリングに仕上げてくれました。実は蟻の演出も服部くんのアイデア!」(監督 番場秀一さん)
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佐藤千亜妃
バンド「きのこ帝国」ではギターヴォーカルとして作詞作曲を担当。現在はソロ活動中。類まれな表現力をまとった唯一無二の歌声を持つ。他アーティストへの楽曲提供、プロデュースも手がけ、その活躍は多岐にわたる。
yama
「カーテンコール」
Sony Music Labels
①オーバーサイズの白いパーカ
②オーバーサイズのパンツ
③白いスニーカー
「今までいろいろなお題に応えてきましたが、“顔を隠したい”というオファーは初めてでした。特殊造形作家、快歩が造ったマスクに加え、スウェットパーカをかぶせて怪しげなムードにしたのが、yamaとの一発目の仕事。謎の多いキャラクターにもマッチし、以来フードをかぶせてスタイルを確立させました。脱力感のあるオーバーサイズでポケット付き。コードをキュッと結べば、誰でもyamaになれる。意図的に真似しやすくしています」(服部さん)
「スタイリストという枠を越えて、もはや被写体のプロデューサー。そんな常識にとらわれない姿勢は、MVの仕上がりをよくするために必要だと感じているからこそ。クリエイターとして見習うことが多い」(監督 Classic 6さん)
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yama
2018年活動開始。YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』の再生数は2000万回を超える話題のシンガー。ロックバンド、BINのメンバーとしても活動。素顔もプライベートも、多くがベールに包まれている。
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服部昌孝
2016年yahyelのMV「Alone」をきっかけに音楽シーンでもスタイリングを担当。制作会社「服部プロ」では作品の製作総指揮をとる。