休刊後も熱く語られる機会の多い『オリーブ』。何に惹きつけられたのでしょう?みんなが好きだった『オリーブ』って?時代とともに変化した雑誌のスピリットを懐かしいページとともに振り返ってみましょう。
🎨CULTURE
歌人/穂村 弘が考える『オリーブ』精神 「勇敢な少女が見え隠れする、見出しに惹かれて。」
勇敢な少女が見え隠れする、
見出しに惹かれて。
穂村 弘
歌人
『オリーブ』というと、日本とは思えぬような森の中を、少女が通学しているようなヴィジュアルの印象が強いですね。そこに異次元感があった。見出しの文章も印象的で、「迷彩セーターでだましてしまう」「かいじゅうとだって仲良し」とか、シリアスな意味のある迷彩を平和な80年代の恋愛にもってきたり、男女の役割意識はあっても、迷彩もかいじゅうも男性のものだけにはさせておかないみたいな意外性があったりもした。主体性のきらめきに惹かれました。基本的に、10代の女の子がノックすれば素晴らしい世界の扉が開かれる、という感覚に満ちていた。自分はとてもそうは思えなかったし、同じことを『ポパイ』に言われると逆に怖じ気づいてしまうくせに、少女には勇気を求める。それが今にいたる性癖というか(笑)。通勤電車で読む『オリーブ』は、天国を買うつもりで手にしているところがありました。
83年12月3日号。「音読したくなる、秀逸な見出しがあふれていました」
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穂村 弘
1962年北海道生まれ。短歌のみならず、評論、エッセイ、絵本など幅広い分野で活躍。近著に酒井駒子との絵本『まばたき』(岩崎書店)がある。
Photo: Jun Kato Text&Edit: Tomoko Ogawa