破天荒な刑事・志村(高橋一生)と犯罪コーディネーター・インビジブル(柴咲コウ)の絆が深まってきたかに見えたところで3年前の事件が引き裂くのか? と思いきや、5話ではここまでの物語をひっくり返す存在が……!『インビジブル』(TBS)5話を、ドラマを愛するライター釣木文恵と漫画家オカヤイヅミが振り返ります。4話はこちら(レビューはネタバレを含みます)
考察『インビジブル』5話。キレッキレな高橋一生が、やや強引な展開をねじ伏せる
「わかるんですよ」と言われれば納得せざるを得ない
「潔白に見える人間が悪事を働いていることもあるわけで」
「それを見極めるのが俺らの仕事だ」
志村(高橋一生)と後輩・安野(平埜生成)がかつて交わした言葉が印象に残る5話。安野殺しの発端になったのはOL殺人事件。志村と安野が駆けつけた公園で殺されたOLには、かつて痴漢冤罪で自殺に追いやった男がいて、その男の妻が復讐を依頼したというものだった。『インビジブル』には犯罪のプロが次々登場するが、彼らが手にかけるのは決して特殊な人物ではない。事件は特殊な人や場所だけで起きているのではない。いつもはじまりは一般の人間どうしのいざこざなのだ。OL殺しの経緯は判明したが、安野殺しの実行犯は結局わからない。
4話ラストで、3年前の安野殺しを自白した殺人犯・武入(鈴之助)の「インビジブルから依頼された」という言葉に驚きを隠せず、インビジブルことキリコ(柴咲コウ)を問い詰める志村。本当に武入が安野殺しの犯人なのか。志村はそれを確かめるため、直接武入に会い、「違う、お前じゃないな」と確信を得る。なぜ確信に至ったかはわからない。志村という刑事が相当察しがよく、キリコいわく「キレッキレ」であることはこれまでも描かれてきたが、顔を見て真実がわかる能力まであったのか。ただ、高橋一生という役者のストイックさを思うと、なんとなく「わかるんですよ」と言われれば納得せざるを得ない感じも、しないでもない。
安野の妹・東子(大野いと)が「武入って人、お兄ちゃんの事件となにか関係があるんじゃ」と言い出したりしているのもカンがよすぎるのではないかとも思う。まあこれに関しては事件の共通点から導き出したのかもしれない。
周りの人々の協力がつなぐキリコへの道
志村の主張は受け入れられず武入は検察に護送されるが、その途中で姿を消す。同時にキリコも行方不明に。課長の犬飼(原田泰造)、同じ班の塚地(酒向芳)や芝本(田中真琴)らの協力もあり、志村は独自に動いてキリコと武入を追う。その中で志村に協力する鑑識の近松(谷恭輔)とハッカーのラビアンローズ(DAIGO)が意気投合する展開もありながら、志村はキリコにたどり着く。
武入の足取りを追う中、ローズから「逃がし屋」の存在を聞いた次のシーンで、彼らに接触すべくサクッと宝石店で強盗を働く志村(もちろん警察の根回しがあるのだが)。裏の世界の人間と組むことも、真実を掴むためにグレーどころかかなり逸脱した行為を行うのも、何もかもアリになっている。このあたりは説明を省いたテンポが気持ちよく、これまでの4回で「志村ならそうするだろうな」とわかるのもあって、なんだか受け入れてしまう。
志村の周りの人々が連携して志村を支えることも、裏の世界の人間と警察という本来は相反するポジションの二人が自分たちの専門を通じて意気投合するのも、本来であればかなりわくわくする展開だ。それが大きなひとつの渦のように盛り上がって来ないのは私自身の見方が下手なのか、解決がスムーズすぎるからなのか、考えてみたが答えは出なかった。さらに回を重ねていけば、志村を中心に周りの人々の活躍もより魅力的に映ってくるだろうか。
真のインビジブル登場!
キリコは実はインビジブルではなかった。桐島という存在をおびき出すため一度は武入を強奪したものの、結局は武入も、凶悪犯・クリミナルズのリストも桐島に奪われてしまった。その桐島がラストで姿を表す。桐島は本物のインビジブル・キリヒト(永山絢斗)で、しかもキリコの弟だった。
インビジブルの謎はかなり明らかになってきた。真のインビジブルを新たな敵として、志村とキリコ、二人の絆は深まるのか。弟というのが本当ならば、単純に敵と扱うこともできそうにないが、そのあたりも6話では明かされるのかもしれない。
脚本: いずみ吉紘
演出: 竹村謙太郎、棚澤孝義、泉正英
出演: 高橋一生、柴咲コウ、有岡大貴、堀田茜、原田泰造、桐谷健太 他
主題歌: Dragon Ash『Tiny World』
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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