女性たちがマンションの窓から恋人への不満を一斉に爆発させ「エゴイスト!」と叫ぶ、シャネルの男性用香水〈エゴイスト〉のCM。ジャン=ポール・グードといえば、一度観たら忘れられないこの映像が一番に思い浮かぶ。米『エスクァイア』誌の伝説のアートディレクターであり、女優グレイス・ジョーンズのポップカルチャーアイコンとしてのイメージを作り上げたり、歴代シャネルのフレグランスの広告を手がけたり。グードは、いわゆるスタンダードの枠を越えた圧倒的な美を作り出し、77歳の今でもビジュアル表現の既成概念をアップデートし続けるアーティストだ。
そんなイメージメーカー、グードの展覧会『In Goude we trust!』が開催される。シャネルとのコラボレーションCM映像やキャンペーンビジュアルを中心に、インスタレーション作品や、作家自ら選別した写真とドローイングプリントなどを展示。シャネルのファインジュエリーコレクション〈The Five Elements〉のために制作された[ファイヤー インスタレーション]では、ダンサーがパフォーマンスも披露してくれるそう。 グードがこれまでミューズと崇めた女性たちは、ジャマイカ系アメリカ人のグレイス・ジョーンズ、アルジェリアがルーツのアラブ系ファリーダ・ケルファ、そして現在の妻、韓国系アメリカ人のカレン・パーク・グードがいる。まさに美の多様性に恋をする男グード。彼の多種多様で自由な発想は、目に映る世界さえも鮮やかに変えていく。
会場内で放送されるドキュメンタリー映像[So Far So Goude]も、ユニークでクレイジー、「今のところ(グッドならぬ)グード」な世界の楽しみ方入門としておすすめだ。
Slave to the rhythm, cut-up transparency, Paris, 1986 ©JEAN-PAUL GOUDE