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ジャン=ミシェル・オトニエルが夢見た、日本の秋の菊花 「夢路」DREAM ROAD

ジャン=ミシェル・オトニエルが夢見た、日本の秋の菊花  「夢路」DREAM ROAD

TOP:Jean-Michel OTHONIEL Kiku – Hiwamoegiiro (Siskin sprout yellow), 2020 Mirrored glass, stainless steel 39 x 47 x 49 cm, Unique © Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Photo: Claire Dorn / Courtesy of the artist and Perrotin


ジャン=ミシェル・オトニエルによる新作の個展がペロタン東京で開催中だ。オトニエルは、ガラスを使った立体作品が絶大な人気を誇る、フランスを代表するアーティストのひとりで、2012年に原美術館にて開催された回顧展や、2013年に森美術館で行われたLOVE展でのハートを象った作品を覚えている人も多いはず。本展では、初公開となる新シリーズであるガラスの立体作品や、金箔を用いた絵画作品が展示される。

 ジャン=ミシェル・オトニエル|作品

Jean-Michel OTHONIEL Kiku – Ōtaniro (Earthen yellow-red-brown), 2020, Mirrored glass, stainless steel, 49 x 49 x 47 cm, Unique
© Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Photo: Claire Dorn / Courtesy of the artist and Perrotin

ガラスの質感や、カラフルな色使いはとてもロマンチック。オトニエルの真骨頂と言えるだろう。近年、彼は静観的なアプローチで続けてきた自然の探究を、抽象的で五感に訴えかける作品へと昇華しており、今回は自身が「夢路」と名付けた菊の花が咲く閉ざされた禁断の園として表している。立体作品は神聖な護符として、カリグラフィーの絵画が聖像として。

タイトルの「夢路」は、彼特有のロマンチックな世界観だけでなく、花のような素朴なものが、感情を引き起こす鍵になること、その鍵が空想と想像への「夢の路」であることを示している。また、『古今和歌集』や『後撰和歌集』に登場する「夢路」という言葉は、「夢をみる」と「愛する人と夢で逢う」という二重の意味があることも、タイトルに込めたそう。

 ジャン=ミシェル・オトニエル|作品
Jean-Michel OTHONIEL Kiku – Kakitsubatairo (Rabbit-ear iris color), 2020, Monotype on Japanese paper, 36 x 24 cm, 1/1 edition + 2 AP
© Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Photo: Claire Dorn / Courtesy of the artist and Perrotin

本展のメインモチーフとなっている菊の花。オトニエルはこう語っている。「菊の花は日本で最も重要で象徴的な花のひとつだといわれています。忍び寄る冬もよそに、秋に咲く花として知られ、長寿と若返りの象徴となりました。周囲がすでに眠りにつき始めているにも関わらず、驚異的に闘い、あらゆる困難を物ともせず咲く花という考え方をとても気に入っています。一年の間で最も遅く咲く花のひとつです。」

更に、同じく《Kiku》と名づけられた大型のキャンバスを用いた絵画作品には、巨大で幻覚のような花の影が描かれている。眩しく光り輝くメインスペースに相反して、これらの暗く抽象的なカリグラフィーは、観る者を純粋な抽象と熟考の世界へと誘う。

ジャン=ミシェル・オトニエル|作品
Jean-Michel OTHONIEL Kiku – Kokushokuiro (black), black ink on white gold leaf, 164 x 124 x 5 cm
© Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Photo: Claire Dorn / Courtesy of the artist and Perrotin

かつて、菊が9月の開花期を迎えると、人々は夕方菊花を布で覆い露を集め、翌朝その芳しい濡れ布で身体を拭くことで精神を浄化させ、長寿を祈ったという。この慣習に基づき、菊と露の組み合わせは和歌をはじめとする古典文学に繰り返し登場するモチーフとなった。こうした文学に表れる菊花の「永遠の命」は、脆く儚い人生への対比表現として、愁いとともに美化されてきた。菊花が持つエタニティを自らの身体にうつそうとする所作の繊細さは、不安な世の中にある私たちにも切実に響く。儚くも美しい夢の路で、古から続く人々の願いを、今の自分に重ねてみてはいかがだろう?

ジャン=ミシェル・オトニエル|作品
Jean-Michel OTHONIEL Kiku – Ōtaniro (Earthen yellow-red-brown), 2020, Mirrored glass, stainless steel, 49 x 49 x 47 cm, Unique
© Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Photo: Claire Dorn / Courtesy of the artist and Perrotin

ジャン=ミシェル・オトニエル «夢路» DREAM ROAD

会場: ペロタン東京
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階 ペロタン東京
会期: 
2020年9月16日~10月24日
時間:  火曜〜土曜  正午〜18時 予約制

予約はこちらから

柴原聡子

建築設計事務所や美術館勤務を経て、フリーランスの編集・企画・執筆・広報として活動。建築やアートにかかわる記事の執筆、印刷物やウェブサイトを制作するほか、展覧会やイベントの企画・広報も行う。企画した展覧会に「ファンタスマ――ケイト・ロードの標本室」、「スタジオ・ムンバイ 夏の家」など

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