ジム・ジャームッシュといえばという何も起こらない系の映画『パターソン』と、逆に何かと事件を起こすイギー・ポップ&ストゥージズを追ったドキュメンタリー 『ギミー・デンジャー』の2作が立て続けに公開となる。ジャームッシュが好んで読んでいたウィリアム・カーロス・ウィリアムズの長編詩“パターソン”をきっかけに生まれた映画『パターソン』は、バスの運転手であり詩人でもあるパターソンと妻のローラの7日間を描く。繰り返しに見える毎日のなかで、乗客の会話に耳を澄ませて心に浮かぶ詩を秘密のノートに書き留めるパターソンは満たされている。それぞれに自身の生活を彩る夫婦が、すべてわかり合えなくても共に生きる、という幸せのあり方を見せてくれる。友情出演する永瀬正敏とパターソンが言葉を交わす終盤のシーンもとてもいい。
一方で、8年の歳月をかけて完成した『ギミー・デンジャー』は、下品で退廃的と正当な評価をされず、わずか3枚のアルバムを残して解散することとなったザ・ストゥージズの再結成後までを追う。「ロック史上最高のバンドへのラブレターだ」と監督自身が言うほどベタな愛が詰まっているが、確かにイギーはそれだけクレイジーでかっこいい。
『パターソン』(16)
ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソン(アダム・ドライバー)と妻・ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)は一見代わり映えのしない日々を過ごしている。その中で起きるユニークで小さな出来事を描く。8/26より全国順次公開。
映画『パターソン』公式サイト
Photo by MARY CYBULSKI ©2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.
『ギミー・デンジャー』(16)
ジャームッシュの長年の親友でもあるイギー・ポップが自らオファーし、制作された、ザ・ストゥージズのドキュメンタリー。『イヤー・オブ・ザ・ホース』(97)以来約20年ぶりの音楽ドキュメンタリーとなる。9/2より新宿シネマカリテほか順次公開。
映画『ギミー・デンジャー』公式サイト
©2016 Low Mind Films Inc