NCTやSHINeeのMVを手がける映像作家 ETUI COLLECTIVE キム・ウジェ インタビュー

NCTやSHINeeのMVを手がける映像作家 ETUI COLLECTIVE キム・ウジェ インタビュー

K-POPは勿論、ヒップホップやバンド、ファッションまで多角的に文化が注目されるようになった現在の韓国。表舞台に立つ人達だけではなく、それらの文化を世界に発信してるクリエーターの存在が最近気になります。彼ら彼女らの職場に訪問し取材。第一回目はNCTやSHINeeなど人気K-POPアイドルのミュージックビデオの監督&ディレクター、キム・ウジェさんに登場いただきました。


 

こんにちは。まず、簡単に自己紹介をお願いします。

広告やミュージックビデオの監督とディレクションをしている「ETUI COLLECTIVE」(以下ETUI)のキム・ウジェです。ETUIとしては基本二人で活動していて、3Dなど他の部分を担当してくれる人達とプロジェクト毎に集まって作業しています。

ETUIとして開始した時期ときっかけは何ですか?

4年ほど経ったかな?元々8年程ニューヨークに住んでいて、2014年末に韓国に戻ってきたんですが、帰国しすぐにETUIと言う名義で活動をスタートしました。

 

MVをどのようなプロセスで作るのか教えてください。

まず、楽曲を聞きながら自然に思い浮かぶものを話し合いながら企画を考えます。その後大体2〜3週間かけて撮影場所を探したり、小物を調達したり。3D担当、PD、撮影チーム、照明チームなどいつも一緒に仕事をしている人達と集まって、シーン毎にどのようなものがあればいいかなど具体的な話を進めて、最終的にストーリーボードのようにして企画を完成させます。撮影後は2週間ほどで編集しますが、編集は私がほぼ一人で作業して、友達が手伝ってくれる感じです。このように企画を立ててからMVが完成するまで大体1ヶ月ほどですかね。

※1 PDとは、プロデューサーの意。日本のテレビ局やクリエイティブ業界では、プロデューサーと聞くと偉い人のイメージがあるが、韓国では制作進行を行う人達を指す。アシスタントも区分なくプロデューサーと呼ばれる。

ETUIの事務所にはMVで使用した小物がいっぱい。主にNCT127の「Regular」で使用したものだそう。事務所のあちこちに虎の置物が。

 

映像にコラージュのようにグラフィック要素が入っているのがウジェさんの作品の一つの特徴のように感じます。BoAの「CAMO」でも顔や体がプロジェクションマッピングで覆われているものが動く作品でした。どのシーンをキャプチャーしても一つの絵として成り立つ作品が多いですよね。

元々グラフィックや写真も好きですし、撮影監督としてアングルを探す時もパッと一瞬見ただけでも絵になるイメージを探しています。映像なので動きもあるのが当然ですが、スチール撮影(=静止画の撮影)のように、まずは一つ一つ綺麗な瞬間を探すところから始まりますね。

 

撮影をするときどんなことを最も大切にしていますか?

企画したものを現場で演出することです。いつも全て理想的に進めばいいなとは思っていますが、現場には人も多く、想像していた通りに全てを進行する事は簡単ではないですから。

事前に面白く考えていっても現場に行けば考えてた事と違う部分はとても多いですしね。現場は現実なので理想とは違います。(笑)でも、現場の状況を見ながら、理想的なイメージに近づける為に変更を加えたり、工夫してみたりと、臨機応変に作りあげていく過程が面白いんだと思います。

 

作業した映像の中で最も愛着がある作品は何ですか?

記憶に残る作品が多いのはNCTですかね。NCTだけでも何本も手がけていますが、どの作品にも愛着があります。「mentary」シリーズ、「Limitless」の日本版、「Regular」も気に入ってますね。特にNCT127のRegularは新しい挑戦をした作品でもありました。K-POPアイドルのMVといえば、通常セットを使用している事が多いじゃないですか。でも「Regular」の場合は、アイドルで、しかも10人という大人数のグループで、ほぼ全シーンを屋外ロケ、という状況で撮影したので、とても大変でした。1箇所移動するにも毎回何十人もの人が行ったり来たりしなくてはならないので。この撮影は自分にとって挑戦だったと言えますね。

あと、初期の作品で挙げるなら、SHINeeの「Tell Me What to do」が印象に残っています。

今でも記憶に残っているのが、スタッフ同士で何日も徹夜をして語り合った事。自分も他のスタッフも思いつくままやりたいことをずっと話していましたが、皆不思議と気分が良くて、誰一人として家に帰ろうとしなかったです。それと、テミンのシーン私達が全く予想していなかった雨でが突然降ってきて。撮影が完全にストップしました。でも、撮影スケジュールがタイトということもあり、一旦やってみよう!と言って撮ってみたら、歌ともよく合ったし、映像全体のムードもすごく良くて。終わってからは「天が助けてくれた」と話しました。(笑)

その後も、雨で歩けないほどになってしまった地面を、急遽フォークレーンを呼んで地面の上面を削って人が歩けるようにしたりと、その時は何かと大変でしたが、思い出深いです。(笑)

 

スタジオのアイドル犬”ウン”。保護犬だったウンをウジェさんが譲り受けたそう。

 

まさに先程話されていた現場で臨機応変に作り上げていく面白さですね。今挙がった作品はどれも屋外で撮影されていますよね。ロケーションはどのように探しているんですか?

実際見たことのある場所や、直感的にその時々思い浮かんだ場所を使う事が多いです。SHINee「Tell Me What To Do」のビルは、昔車で通り過ぎた場所が突然思い浮かんだんですよ。調べてみたら元々撮影場所として使われるようなビルではなく、不動産に失敗して使われてない廃墟のようなビルでした。そこで、PD(プロデューサー)が直接出向いて管理人に「ここで撮らせてくれ」と頼んで、何とかあそこでの撮影が成立したんですが、その後は色んな撮影があそこで行われてるみたいです。(笑)

 

そのビルの撮影スポットとしての契機になったんですね。

はい。でも最初に発見して撮ったということが重要なのです。(笑)

いつもそうやって直感的に場所を決めたりはしないんですけど、私がSHINeeが記憶に残っているのはそういった部分もあるかもしれないですね。あ、ここで撮らなきゃいけない気がする!というような直感が働いたので。

逆にNCTの撮影の時はずっとソウル中のあちこちを廻ったのが印象に残ってます。「Regular」は、(ETUIのスタジオのある)聖水洞でも撮りましたよ。最初に虎が出てくるシーンはこの近くです。

 

乙支路の電気街世運商店街や文来洞のシーンもありましたよね。実際行くと、あの辺は古い工業地帯な街なのですが、映像ではサイバーパンクのような世界観で映し出されていて驚きました。

そういった現実との差異は、やっぱりありますよね。実際に私も大体撮ってみて、撮影監督と相談しながら、新たなイメージを作り出すのが面白い部分ですね。NCTは何度も作業してきたせいか、毎回撮るたびイメージとよくマッチングする感じがしましたね。

 

このようなロケーション撮影をする場合は、何日ぐらい撮影しているのですか?

アイドルの場合は、基本的に2日ですね。撮影量が多かったり、ビッグプロジェクトとなれば3日。でも、NCT127の「Regular (English Ver.)」の場合は、ロケーションも多い上、別途CG用の撮影もしたので5日かかってます。先程おっしゃっていた通り、サイバーパンクな雰囲気を出すためにCGも結構入っているんですよ。最初のシーンでジョンウがビル群を背景に立っているシーンがありますよね。実は背景は全部CGです。

 

え!気づかなかったです。

実際は全部グリーン背景で撮りました。ウィンウィンが屋上から飛び降りるシーン(2:26あたり)の都市背景も本当は何もないグリーンスクリーンで撮ってます。

 

先程、記憶に残った作品としてお話に出たNCTの「mentary」シリーズは、MVでもなく、ティザー映像でもなく、グループのコンセプトを明確に打ち出す目的で作られた映像ですよね。このような映像を作る事自体も斬新なものですし、曲やダンスがあるMVと比べて映像のコンセプトを考えるのが難しいように思うのですが、どのように制作したのでしょうか?

NCTは元々「夢」というコンセプトを持ったグループだったので、そこから出発して、寝た時に夢を見る時と見ない時があったり、明晰夢だったり、そういった内容をビジュアル的に落とし込みました。最終的には「夢の中でメンバー達が出会った」 という内容なのですが、5編に分けて、このお話を一つづつ組み立てていきました。このように、この作品は全部で10枚ほどになる私がストーリーを書いたスクリプトをベースにしているんです。なので、他のMV作品とは、ストーリーがあるという部分が大きく違いますね。MVの場合は企画とビジュアル重視で作るなら、この作品の場合はまずストーリーを書いて、ストーリーにビジュアルを合わせていくイメージでした。

NCT 『mentary』

EP1 https://www.youtube.com/watch?v=TrTdkaklKqg

EP2 https://www.youtube.com/watch?v=iKFIMhjP0iw

EP3 https://www.youtube.com/watch?v=7mOjD2I_qMw

EP4 https://www.youtube.com/watch?v=lYUQlWdVfTk

EP5 https://www.youtube.com/watch?v=Bb-5Q70oDA4

 

なるほど。それで、あのような壮大な作品が生まれたのですね。

MVの場合は、歌を見せるという役割が大きい。でも、mentaryはメッセージを伝えることができる機会だったんです。

 

作品内にはまるで映画のようなCGやアニメーションのシーンも登場しますが、そのような制作スタッフはどのように決めているのですか?

CGなどはいつも一緒に作業するコアメンバーが決まっていて、大体同じ人達にお願いしています。でも、このアニメーション作家さんは、個人的にインスタで探して発見したJaehoon Choiさんという方。作品がとても良かったので一緒にやりませんか?と声をかけました。

 

Red Velvet 「SAPPY」やNCT127の「Limitless」など日本版のMVも手がけていますが、作品を作る上で韓国版と日本版で何か違いはありますか?

音楽を聞いて、思い浮んだイメージで作る事が1番なので特に意識した部分は特にないですね。日本版も同様に韓国のスタッフと制作しましたし。

 

 

特に好きな音楽やアーティストはいますか?そういった海外アーティストと一緒に作業する可能性は?

好きなのはFrank Oceanですね。バイブスがすごく良いんです。海外アーティストは勿論、そういったグローバル映像はもっと撮ってみたいです。MVや広告の仕事をしながらも映画も撮ってみたいし、やってみたいことはまだまだ多いですね。まだ映画のように長く撮ることを学んでいる最中ですが、そういった意味でもNCTの「mentary」が私にとって良い経験となりました。映画と同様にストーリーからビジュアルを構成していく作業がすごく面白かったので。

 

K-POPが世界的に人気を集めている中で、映像やCDジャケット、衣装といったクリエイティブの部分も大きな役割を担っていると思うのですが、韓国の今のクリエイティブシーンをどのようにご覧になっていますか?

どの分野においてもクオリティが高かったり、情熱的だったり、そういった人達がすごく多いので、影響を受けたり、自分も面白い事をしなくちゃという考えが浮かびますね。自分がしていることを中心に考える方なので、客観的に今のシーンをどう見ているか、というような感覚はないです。ただ今のシーンの一人として今回こうしてインタビューを受けているのは良いことだなと思います。

 

最後に今後の目標などがあれば教えてください。

私は長期的な目標を掲げるタイプではないです。何かをしようとするにも先1〜2年だけを考えますね。韓国に来て4年経ったのですが、韓国に来た時も明確な目的を持っていた訳ではなく、飛行機の中で、ぼんやり考えながら「5年くらいかかるかな?」と思っていたことが、今思えば結構達成されたのではないかと思います。

今、海外で何かやってみたい、映画もやってみたいと考えるなら、「何年かやってみるか。」という感じで、とりあえず1〜2年試して、その期間が過ぎたら、また考えて。それが私なりの計画や目標の持ち方ですね。大きい目標一つだけをずっと見て走るタイプでも正確に決めておくタイプなくて。

重要なのは、自分のバランス。突然ガムシャラにやって成功したところで、人にはペースというものがあるはずですから。自分を高めつつもバランスを維持していきたいですね。

今回お邪魔した事務所はまだ引っ越してきたばかりだとか。2月に初めての日本旅行で銀座に遊びに行ったから、今回GINZAのWEBのインタビューの話が来てビックリしたとの事。私が働いている韓国の雑誌も先月号も読みましたよ!とお話して下さり、嬉しい〜。「ETUI COLLECTIVE」キムさんとスタッフのヘン・ハジさんのお二人、貴重なお話ありがとうございました!

 

「ETUI COLLECTIVE」
etuicollective.com
instagram @etuicollective

 

Interview&Text: Mannalo Magazine(erinam)

Erinam

韓国在住。雑誌社でグラフィックデザイナーとして働く傍、韓国カルチャー関連のライティング・コーディネートなど。
ソウルの今気になる人に会いにいくMannalo Magazineの製作を始めました。
instagram @i.mannalo.you @mannalo_magazine

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