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編集者・渡部かおりの「かわいい」ゼミナール Vol.1 ドリス ヴァン ノッテンの花柄

編集者・渡部かおりの「かわいい」ゼミナール Vol.1 ドリス ヴァン ノッテンの花柄

「かわいい」。その言葉に理屈はない。直感で、右脳で。人は日々の生活の中で「かわいい」ヒトやモノ、コトを見つけて、思い、言葉にし、愛でる。それはきっと、好きのはじまり。だから「かわいい」は正義であり、哲学である。この連載ではファッションを通じて、女性の暮らしや生き方を通じて「かわいい」を追求し、その言葉の背景をとことん掘り起こして研究します。そこには、GINZA ガールズの背中をおす大切ななにかがあると信じて。さあ、「かわいい」ゼミナール、開講のお時間です!


ドリスヴァンノッテンのノースリーブ

ノースリーブトップ ¥145,000(ドリス ヴァン ノッテン|ドリス ヴァン ノッテン)

—勇気をくれる、「かわいい」について—

親愛なるGINZA読者 a.k.a. 日本が誇るインディペンデントガールズの皆さん、こんにちは。さっそくですが、第一回「かわいいゼミナール」を始めます。今回のお題は花柄。花には、言わずと知れた多種多様な美しさがあるが、当然、花柄もしかり。可憐な小花柄のワンピース、大輪のバラを刺繍ニット、Tシャツに描かれた、手描き風の花柄……、2019-20年秋冬シーズンも、店頭にはたくさんの花柄のアイテムが溢れている。

そんな中で今日、紹介するのはドリス ヴァン ノッテンの花柄。最初に目にしたのは、パリコレクションのショー会場だ。黒やグレーのダークな地色にプリントされた鮮やかな花柄から、ドリスが得意とする柄×柄の着こなしへと移りゆき、「ドリスらしい、落ち着いた知的な花柄」という印象を持った。もちろん、この時もしっかりと「かわいい」と感じた。でもそれは、今となっては見た目の、スタイリングの、洋服としての表面的なかわいさに過ぎなかったと思う。

後日、展示会にて、心からドリスのクリエーションを愛するPR担当の関根千園さんから、この花柄にまつわるエピソードを教えてもらった。ドリスが今季の花柄に込めた「かわいい」の意味合いに私は心底、感動し、興奮した。

「この花柄はアントワープ郊外のドリスの家の庭に咲く花をプリントしたものです。メインのモチーフは薔薇で、薔薇の最盛期は6月。剪定して手入れをすると花は、10月下旬にもう一度、花を咲かせるんですって。冬を目前に開花した花は生命力が少ないから、葉っぱが欠けていたり、色がまだらだったり、不完全なものばかり。だけれど、2回目の開花の方が、驚くほど美しい色をつけたりするそうです。ドリスはその美しさに心を打たれたんです。(関根さん)」

花の持つ、強さと儚さ。光と影。なるほど、ドリスはロマンチックでハッピーな花のストーリーではなく、ダークな強さを描いたのだ。命を余して枯れることをしない、花の強さに「かわいい」を見つけたのだと思う。不完全な美を讃えるため、修正はせず、枯れる一歩手前の花の自然な姿をそのまま生地にのせた。光を受けて映し出される影も、そのままに。

話をするPR関根さんも、聞き入る私も、そのとき、心は遠く、アントワープ郊外の庭にいた。「かわいい」は、若さとともになくなっていくものではない。むしろ、2度目に咲く花にこそ宿る、かわいさがある。だから、これから先の人生もずっと、かわいい女性でありたいと思った。ドリスのクリエーションから、勇気をくれる「かわいい」を発見したのだ。そして、それは、年を重ねてもなお、想いを寄せる人から「かわいい」と言ってもらえる純粋な嬉しさを思い出させてくれるものでもあった。そんな気づきが自尊心を刺激して、文字通り、心に花が咲き、バラの花がプリントされたノースリーブドレスを買った。恥ずかしがらず、自虐に逃げず、ずっとかわいさを追求する、意思表明として。

ここでみなさんに宿題です。ドリス・ヴァン・ノッテンの花柄がいかに生まれたかについては、公式ホームページに「Behind the scene in Dries Garden」というムービーで紹介されている。ぜひ、見てください。そして、ドリスの制作に迫るドキュメンタリー映画『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』もおすすめします。ドリスの、国籍や性別を超え、地球上にあるすべての文化をリスペクトする姿から、ファッションを通じて真の多様性に向き合う姿から、まだ知らない「かわいい」を見つけてほしい。今日の「かわいい」ゼミナールは、ここまで。

ドリス・ヴァン・ノッテン 映画

ドリス・ヴァン・ノッテン 映画

DVD『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』(ニューセレクト/¥3,800)

渡部かおり わたなべ・かおり

編集者・ライター。編集プロダクションFW(フォワード)主宰(info@forward-fashion.co.jp)。GINZAをはじめ、様々な女性ファッション誌で編集と執筆の両方を担当するほか、広告のビジュアル制作、ブランドのリブランディングなど。近著は『英国ロイヤルスタイル』(クレイヴィス刊)「この連載のイラストは同姓同名の相棒、foxco、渡邉香織さんにお願いしました!」

photo:kaori ohuchi  Illustratin: foxco

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