齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第二章

齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第二章

服のセンスがいい人は、人柄も素晴らしい

日本の「ベストドレッサー賞」は、今やどこか話題賞みたいな意味合いの方が強くなっているけれど、ハリウッドにおけるアカデミー賞のベストドレッサー選出は、 相当にシビアである。レッドカーペットが終わると、辛口どころか、セレブの悪口を言わせたら天下一品の、名だたるファッション総論家たちが、寄って集って女優たちのドレスの悪口を言う。ベストドレッサーを決めるはずが、常にワーストドレッサーの話で盛り上がる。もう抱腹絶倒の面白さで、ドレスアップって怖い、ファッションって、そもそも怖いと、お腹を抱えながら思うのである。

ちなみに今年は、セクハラ問題への抗議で、ゴールデングローブ賞ではみんなが黒を着た影響もあって、ベストもワーストもいまひとつ盛り上がりに欠けたが、たとえばベスト・ドレッサーの常連ニコール・キッドマンや、昨年度の覇者エマ・トンプソンが珍しくワーストで名前が上がったのも、「タイムズ・アップ」を意識して、無理に露出を抑えたり、女を武器にしていない感じを出そうとしたが故だろう。
いずれにせよ、オスカーでのドレス選びには、なんだか人間が出る。自分は主役でもないのに、誰より派手なドレスでジャジャーンと登場したり、逆に自分が主役という自負をドレスに込めすぎて、女王様みたいにやり過ぎてしまったり、世界中が注目する場面だけに、気合が入りすぎての失敗はよくあること。ただそういう失敗は、ファッションセンスだけでなく、大なり小なり人間的なバランスの悪さを物語ってしまう。ワーストを取る人は、やっぱりなんだか危うい印象を放っているものなのだ。ああいう場面ではドレス一着にすべて凝縮されるから。どんな女優も、有名デザイナーのドレスを着ていることに変わりは無いのに、不思議だ。

逆に、ベストドレッサーとなる人の多くは、何やら人間的なセンスが感じられ、その表情からも精神的な安定感が感じられる。オスカー候補になっている人のベストドレッサー受賞率が極めて高いのは、やはりドレス選びのセンスも、実力のうちと言うことなのだろうか。人間を巧みに演じられるのは、人間がよく見えていると言うこと、人の心が読めると言うことに他ならず、それは”性格”以前に、人としての五感が鋭く、良識も分別も知性もあると言うことではないだろうか。だから結果として、服のセンスがいい人は、こころのバランスもいい……そういう気がしてならないのだ。

今ここで、ちょっとあなたの周囲を見回してみて欲しい。友人知人の中で、一番おしゃれでセンスの良い人は、どんな人だろうか。おそらくは知的で、常識的。気持ちの安定した人なのではないだろうか。人間的にもセンスのいい人なのではないだろうか。
もちろん天才的にセンスの良い人は、ある意味で芸術家的に際限なく個性的で、勢い傲慢だったりするのかもしれないけれど、一般的にセンスのいい人は、人柄もまとまっているはず。トレンドもはずさずに、人をハッとさせる服のセンスは、時代のニーズを読み、世間の求めるものが読める才能でもあるわけで、だから必ず人にも好かれているはずなのだ。服のセンスのいい人は、十中八九、人柄も素晴らしいのである。

ファッションセンスとは、言うなら人に好感を与えるセンス。センスのいい装いが、人を不快にするはずがない。だから、オシャレな人は愛される……意外に知られていない法則である。

文/齋藤薫 さいとう・かおる

美容ジャー ナリスト/エッセイスト。女性誌編集者を経て、多数の連載エッセイを持つほか、 美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中 。近著の『 “ 一生美人 ” 力 』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「 個人 」でコラム執筆中 。

 

イラスト/千海博美 ちかい・ひろみ

イラストレーター。版木に着彩後、彫りを入れる技法で作品を制作
広告、書籍装画、テキスタイルなどのイラストレーションを手がける。
Instagram: @romiticca
twitter: @romiticca

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