齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第五章

齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第五章

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1番早く、ブーツを履く女は、是か否か?

あなたは街で、今日の自分とよく似たファッションの女性を見つけたとき、何を思うのだろう。とっさに隠れてしまいたいと思うのか?それともちょっと安心し、少しだけ嬉しい気持ちになるのか?一体どちらだろう。

ある人は言った。同じようなファッションの人と出喰わすのも、1日に1人ならばいい。 でも1日に2人見かけると、ちょっとだけ不安になり、これが3人になると、もうそろそろやめるべきかもと思い、そして1日に4人見かけると、このファッションはもうないな、とその服を捨てたくなると。

ちなみに、それはあくまでそのシーズンのトレンド服の場合。例えばだけれど、今年は春先から、総レースのタイトスカートを街でとてもよく見かけたけれども、これは紛れもなく今年のトレンドアイテム。だから今年、総レースのタイトを買った人は、どこかでそういう体験をしたかもしれない。よく似たスカートを履く人に出くわす確率が、次第に高くなっていくという体験を。

もちろん、そうしたトレンドの真っ只中にいたほうが、気持ちがいいと思える人もいるのだろう。でも逆に、時のトレンド服を身に付けながらも、みんなと一緒の服を着ているのは何とも居心地が悪いと思う人もいる。トレンドの捉え方は人それぞれ違うもの。とは言え確かにトレンドは、良くも悪くもナマもので、新鮮なうちでないと、洗練されて見えないのは事実なのだ。だからこそ、よく似た服に1日に4回出会ってしまったら、もう賞味期限を過ぎているという判断になっても、おかしくないのである。

ところが不思議なことに、定番のオーソドックスな服は、仮に1日何回同じ服に出会っても、 洗練度を減らさない。と言うより、たとえ同じ服にあってもそれに気づかない。気づかない位に、人々に当たり前に愛され、選ばれてている、それが、永遠に定番となったオーソドックスな服の素晴らしさなのだと思う。

ただ、ここに季節という名の”旬”が関わってくると、また少し意味が変わってくる。季節の始まりでは、いかなる定番服も、早いもの勝ち。みんなが着始めたら、それこそ埋もれてしまう。まだ街で同じ服には出くわさないうちに、最初の1人になることが、オーソドックスな服でも注目を浴びる鍵となるのだ。

例えば、秋冬のシーズンが始まる頃、びっくりするほど早い段階で、いきなりブーツを履く。極端な話ノースリーブのワンピースにロングブーツを履いてしまう、みたいに……。それこそがトレンドにも勝る定番のオシャレだと思うのだ。同様に、半袖のTシャツに、ファーのベストを着てしまう。まだ、 コートを着る季節でもないのに、七分袖のジャケットから、長い革手袋をのぞかせる……。

せっかくだから、この街で1番早くロングブーツを履く女になってしまおう。それがやっぱり街で1番オシャレに見えるコツ、単純にそういうこと。もちろん1番になるのは嫌だという人、1番になる勇気はない人もいるのだろう。2番目か3番目位がちょうどいいいと。でも勇気を出して、1番早い女になると、オシャレにおいて、着る勇気がどれほど重要なのかということがわかってくる。1番にトレンド服を着ることも含め、オシャレにおいては勇気こそが栄養。そして着てしまう実行力がオーラとなって、人目を引きつけるのだから。

ともかくやってみてしまって欲しい。ちょうど今が、チャンスである。街で1番、早くブーツを履く女になる……。

文/齋藤薫 さいとう・かおる

美容ジャー ナリスト/エッセイスト。女性誌編集者を経て、多数の連載エッセイを持つほか、 美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中 。近著の『 “ 一生美人 ” 力 』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「 個人 」でコラム執筆中 。

 

イラスト/千海博美 ちかい・ひろみ

イラストレーター。版木に着彩後、彫りを入れる技法で作品を制作
広告、書籍装画、テキスタイルなどのイラストレーションを手がける。
Instagram: @romiticca
twitter: @romiticca

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