こうも「女のタイプ」が決まってしまうコート選びの重要性――齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第七章

こうも「女のタイプ」が決まってしまうコート選びの重要性――齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第七章

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コートは着ぐるみ?
その一着が、”自分はどんな女か”を決めてしまう。

コートは、着ぐるみ……妙な言い方だけれど、いつもそう思う。ぐるりと体を被ってしまうことが、その人自身をコートのイメージで染めてしまうからである。まさに着ぐるみ的な濃度で。それが私たち女にとってのコートであると思うのだ。

そう、例えば、毛皮のコートを着た途端に、女は誰がなんと言おうと金持ちで、ちょっと派手好きで、うっかりすると鼻持ちならない女に見えるかもしれない。もちろんそれすらも煌めくような存在感に変えるのが、ファーコートのおしゃれの醍醐味なのだけれども。

逆に、ダッフルコートを着た途端に、自然体で気取らない、ちょっと”いい人”な女に見えるのかもしれない。一方で、チェスターフィールド系のウールのコートを選んだなら、きちんとしていて約束事を守る礼儀正しい女に見えるのだろう。
さらに言えば、トレンチコートを着ている女は、やはりクールで媚びない、仕事のできそうな女ということになるのだろうし、黒いロングコートを着ていれば、それだけで強烈な個性の持ち主に見えたりする。とっつきにくいけれど、奥の深そうな。

かくして、コートほど”自分は誰かと言うことを一着によってそっくり表現できるアイテムはないわけで、テレビ系のスタイリストがいみじくもこう言っていたのを思い出す。ドラマの中でのスタイリングに困った時は、ともかくコートを着せてしまうのだと。コート一枚で、誰が見てもブレのない性格設定までができるからと。

そういえば1960年代の名作、「シェルブールの雨傘」でカトリーヌ・ドヌーヴ演じたヒロインは、雨や雪のシーンが多いだけに、複数のコートを着るのだが、恋をしている時はとてもカラフルでフェミニンなレインコートを着ているのに、恋人が戦地へ行くことが決まって別れを惜しむ日は、ベージュのトレンチコート着ていた。たったそれだけのことなのに、恋人を失うかもしれないという不安と、捕まる腕がない孤独に耐え抜かなければいけないという覚悟が、そっけないトレンチのデザインに見事に現れていた。

ラストのシーンで、金持ちの男と結婚してパリに住んでいるヒロインは、ミンクなのだろうか? とても高価そうな黒のファーコートを着ている。昔の恋人たちは、もうすでに住む世界が違うのだと言うことを、雪の中、黙って痛感するのである。
あなたは今年、どんなコートを買うのだろう? おそらくは、今自分がどんな立場の、どんな意識の、どんな役割の女を生きているのか、逆に選んだコートが教えてくれるのかもしれない。そのくらい、コートは明快な女のタイプを宿している。それを纏うと、あなたもコートの通りの女になる。逆に今年、自分は一体どんな女なのか? コートに占ってもらってもいい。こうありたいと言う、”潜在意識の中の自分”が、そのコート1着にそっくり現れるはずだから。

文/齋藤薫 さいとう・かおる

美容ジャー ナリスト/エッセイスト。女性誌編集者を経て、多数の連載エッセイを持つほか、 美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中 。近著の『 “ 一生美人 ” 力 』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「 個人 」でコラム執筆中 。

 

イラスト/千海博美 ちかい・ひろみ

イラストレーター。版木に着彩後、彫りを入れる技法で作品を制作
広告、書籍装画、テキスタイルなどのイラストレーションを手がける。
HP: www.chikaihiromi.com
Instagram: @romiticca
twitter: @romiticca

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