女を元気に連れ出すバッグの神秘なる力――齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第九章

女を元気に連れ出すバッグの神秘なる力――齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第九章

玄関から出て行く自分の手を
引っ張ってくれるバッグたち

女にとって、バッグは全くもって特別なアイテム。もしバッグがなかったら、私たち女はどうなるのだろう。手ぶらで歩くことを考えると、恐怖ですらある。いろんなものを携帯できないこと以上に、バッグなしに出かけていくこと自体が、大人の女性にとってはもはや物理的に難しい気がするほど。

不思議なもので、手ぶらで歩けるのはジョギングとウォーキング、そして近所のコンビニへの買い物まで。それ以上となると、 何かしらのバッグを持っていないと女は上手に歩けない。想像してみて欲しい。バッグ持たずに手ぶらで銀座を歩けるだろうか? 歩けはするけど、何かふらふらとおぼつかない。ある意味、女でなくなってしまったような後ろめたさや、それこそ上手に美しく歩けないような不安に襲われるのだろう。

だから思うのだ。女は、バッグを持って歩くのではなく、むしろバッグにエスコートされているのではないかと。バッグは女にとって、物入れや携帯品である前に、自分をエスコートしてくれるパートナーのような存在なのだと。そうでなければ、こんなにバッグにこだわるはずがない。女の子はなぜこんなにバッグが好きなの?と、男たちは首をかしげるけれど、それは、その腕につかまって歩く恋人のような存在だからなのかもしれないと、改めて思ったりするほど。そう、女の方がバッグにつかまって歩いているのだ。

そう考えれば、ブランドものにこだわる理由も、街で人が振り返るような新作をいち早く持ちたい理由も説明がついてしまう。そういうバッグに連れて歩かれたいのである。

今でこそ、何が何でも似合わないブランド物と歩こうとする女性は減ってきたけれど、日々一食抜いてでもブランド物に執着する意味も、それならばわからないでもない。

だって、好きなバッグを持って歩く日は、外出が憂鬱じゃない。 欲しいバッグを買ったばかりなら、外出したくて仕方がない。それは服も同じなのかもしれないけれど、バッグはあくまで自らが力を放って、私たち女性を玄関から引っ張っていってくれる感覚なのだ。

つまり、女のバッグには特別な役割がある。女を元気に外出させるという……。そういう意味で、ブランド物のバッグはやっぱりとりわけパワフル。まだ誰も持っていない新作は、なおさら偉大だ。もはやトレンドが過ぎてしまったバッグを持っている時の後ろめたさや気落ちと言うものは、経験しないとわからない。明らかなパワーダウンにつながるのは否めない事実なのだ。

玄関から自分を勢い良く引っ張り出して、1日中生き生きと活動させる。それがバッグの役割ならば、やっぱりバッグは特別な思い入れで選ぶべきなのだろう。言い換えれば、大袈裟ではなく、バッグが生きる力を与えてくれるといってもいい。1日の始まり、力強く家を出て行くこと自体が、よりよく生きると言うことなのだから。

もっと言うなら、自分の中で生きる気力が減退していると感じたら、ともかくバッグを買いに行こう。どうしても欲しかったバッグを。逆に言えば欲しいバッグが見当たらなくなったら、女はちょっと危険。欲しいバッグを見つけること自体が与えてくれるパワーを、侮ってはいけないのだ。

生きるのが少し辛くなったら、新しいバッグを買う。欲しかったバッグを思い切って買う。ちょっとやってみて欲しい。

文/齋藤薫 さいとう・かおる

美容ジャー ナリスト/エッセイスト。女性誌編集者を経て、多数の連載エッセイを持つほか、 美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中 。近著の『 “ 一生美人 ” 力 』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「 個人 」でコラム執筆中 。

 

イラスト/千海博美 ちかい・ひろみ

イラストレーター。版木に着彩後、彫りを入れる技法で作品を制作
広告、書籍装画、テキスタイルなどのイラストレーションを手がける。
HP: www.chikaihiromi.com
Instagram: @romiticca
twitter: @romiticca

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