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タートルネックは、なぜ頭がよく見えるのか?――齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第十四章

タートルネックは、なぜ頭がよく見えるのか?――齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第十四章

戻ってきたタートルネックは普通に着てはいけない。
ちょっと気取って危なく着るべき!

昔からタートルネックを着ている男に心惹かれる。黒いタートルネックを着て、一人で本など開いていれば完璧だ。

イメージとしては、村上春樹の『ノルウェイの森』に出てくる「永沢」………言わずと知れた、“びっくりするほどの高貴な精神を持つ反面、どうしようもない俗物”。東大生で、実家は病院なのに、外務省試験に合格していて、恋人がいるのに、他の女性とも普通に関係している男………。

男のタートルネックには、なんだかそういう、危ないけれど高級な、ある種の二面性を見てしまうのだ。だから心惹かれるというより、近づいたら危険、そんな魅力を感じるのである。

少なくとも、タートルネックを着ると何だかそれだけで頭がよく見える。しかも、勉強漬けではなく、ちゃんと文化度も高い頭の良さ。それが、洗練された知性の香りを作るわけだ。

でもそれ、一体なぜなのか?とタートルネックの起源を調べてみると、もともとは中世の戦士が鉄製の鎧を身に付ける時に、首元を保護するためのものだったとか。でもそれが16世紀以降は、ファッションとしての“洗える付け襟”となっていく。

エリザベス一世が、大量のフリルを寄せた白い付け襟をつけている肖像画は、見たことがあるはずだ。あれはデンプンで今の糊のようにハリを与えていたと言うから、全く以て上流階級の特権だったことがうかがえる。高級感はどうもそこから来ているようだ。

やがてそれが、シャツとネクタイを一体化させた男の“よそいき”となり、いわゆるプレッピースタイルを構成する1アイテムとなっていく。プレッピーはアメリカの名門スクールをベースにしているが、リセ風ファッションにも多用されていたはずだ。例えば黒のタートルに千鳥格子のスカート、黒のロングブーツ………みたいに。

そして大人の女性が着るタートルネックの最初のお手本となったのが、やはりオードリー・ヘプバーンだったのだろう。黒のタートルに、黒のサブリナパンツは、「麗しのサブリナ」はもちろん、「パリの恋人」にも登場する。タートルネックには、やっぱり育ちの良い男子学生のイメージが生き続けているから、そうした中性的で小粋なファッションがよく映えるのだ。

今、タートルネックのセーターが改めて1つのトレンドとなっている。もちろん、あったかファッションブームに乗っての、防寒の意味もあるのだろう。

でも防寒に重宝なアイテムほど、野暮ったくなりがちだから要注意。いや普通に着てしまうだけで、平凡すぎるファッションになりがちだからこそ、タートルネックはプレッピーやリセエンヌ、あるいはまたオードリー・ヘプバーンをどこかで意識してコーディネートしてほしい。

そうちょうど、ノルウェーの森の「永沢」のように、どこか危険なオーラを放つ、特別な存在感までを、わざわざ意識しながら着て欲しいのだ。とことんカジュアルなのに、ちょっと危ういほどの高貴さをも併せ持つアイテムであること、頭の片隅に入れながら、丁寧に思い入れたっぷりに、着て欲しいのである。

文/齋藤薫 さいとう・かおる

美容ジャー ナリスト/エッセイスト。女性誌編集者を経て、多数の連載エッセイを持つほか、 美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中 。近著の『 “ 一生美人 ” 力 』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「 個人 」でコラム執筆中 。

イラスト/千海博美 ちかい・ひろみ

イラストレーター。版木に着彩後、彫りを入れる技法で作品を制作
広告、書籍装画、テキスタイルなどのイラストレーションを手がける。
HP: www.chikaihiromi.com
Instagram: @romiticca
twitter: @romiticca

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