映画『勝手にふるえてろ』で、主人公のOLヨシカに思いを寄せる 同期の「ニ」役を演じた黒猫チェルシーの渡辺大知さんの素顔とは?
映画『勝手にふるえてろ』主人公のヨシカに思いを寄せる、「ニ」役を演じた黒猫チェルシーの渡辺大知さんの素顔とは?
―渡辺さん、ふるえてた過去はあります?
今もずっとふるえてます。自信と不安がどっちもあって、サーファー並みに波に乗ってます。自分は天才だと思ったり、死んだほうがいいと思ったり。あんまり安心したくないんでしょうね。死ぬまでドキドキしてたいし、些細なことでもすげーって感動したいし、落ち込むときはがっつり落ち込んでたい。慣れたくない。
―むしろニよりヨシカに感情移入してみた?
完全にヨシカだなと(笑)。女に生まれていたら、あんな感じだったと思いますね。
―ヨシカみたいに、自分だけの世界から現実に引っ張り出された出来事もあったんですか?
私事なんですけど、すごく好きだった人にフラれたときですね。こうやって人前で喋れるようになったのも、そこからだったと思います。
―否定されたことがきっかけだったと。
それこそヨシカじゃないけど、その人と一生いるんだと勝手に妄想してて、向こうもそう思ってると信じていたらそうじゃなかった。そこで初めて自分って何なんやろうなと考えるようになって。周りにいる憧れの人たちみたいにどうなれるかじゃなく、今の自分と素直に向き合うことを考えられるようになりました。
―渡辺さんは音楽も演技も監督もされますが、それぞれ脳みそを切り替えている感覚ですか?
音楽と映像ではまったく違う部分を使っている感じがあって、それが心地いい。でも、遠くから見れば同じようなことだとも思います。全部の活動を通してバランスをとっているんやろうなと。僕の創作って、自分が何をやって何をやらないのかっていう最初の選択から始まっている。それはつまり、やりたくないことをやっている姿を見せるわけにはいかないってことなんですけど。だから、好きでやりたいことをどう仕事に結びつけていくかという順番です。
―じゃあ、型には余りこだわっていない?
そうですね。人間の心臓の匂いみたいな、人間って感じさせる匂いや空気を出したくて、それをどうやって出すかはよく考えてますけど。
―本作では、黒猫チェルシーとして主題歌も書きおろしていらっしゃいますね。
自分の活動がまた一歩つながった感覚があって、うれしかったですね。それにしても、松岡茉優ってすごい人だなぁと。現場でも、彼女の一生懸命なヨシカを愛おしく思えたので、ニとして自然と一直線に向かえたんですけど、大九明子監督からは、「主題歌はニが歌っているようにしたい」と言われていて。でも、最終的には、映画を観た僕が、渡辺大知としてヨシカに惚れた思いをラブレターにしたためるような気持ちで曲を書きました。
『勝手にふるえてろ』
芥川賞作家・綿矢りさによる同名小説が原作。恋に臆病なOLヨシカは同期「ニ」から人生で初告白されテンションがあがるが、中学時代の同級生「イチ」への初恋も引きずっている。脳内片思いとリアルで微妙な恋に戸惑うが……。12月23日より全国公開。
©2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
Photo: Patrick Tsai Hair&Make-up: Takeharu Kobayashi Text: Tomoko Ogawa Edit: Shun Sato, Akira Takamiya