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韓国カルチャーを牽引するクリエイターたち vol.5|クラフトアーティスト・Heami Lee

韓国カルチャーを牽引するクリエイターたち vol.5|クラフトアーティスト・Heami Lee

伝統の基盤の上で、成熟したデジタル環境と“hurry-hurry”文化のもと日々刻々と変化する韓国社会。熱狂のど真ん中にいるアーティストの視点を探る。


時が生み出すシルバーのオブジェと器たち
Heami Lee
クラフトアーティスト

白磁や青磁など伝統陶芸が有名だが、最近人気の高まりを見せているのが現代工芸シーン。イ・ヘミさんは手仕上げの表情あるセラミックをはじめ、銀彩を施した器やオブジェの制作で注目を集める若手作家だ。その現代的でミニマルな作風にはしかし、完成までに費やされる長い時間と、歴史や伝統からの影響が大きいと話す。

—陶芸を志したきっかけは?

「小さな頃から絵が好きで、いつでもどこでもずっと1人で描いてるような子どもでした。自然とアートへの道を夢見ましたが、一般の大学に進学。未来について悩み、結局アート系列の大学に進むことに決めました。その時期がとても大切なことを教えてくれたと思っています。当時、知り合いの陶芸家に私はデザインより土を扱う方がもっとぴったりだよとすすめられて。陶芸科に入ってからは、遊ぶこともなくひたすら勉強。今ではその選択を後悔したことはないです」

—卒業後すぐにアーティスト活動を始めたのですか?

「当時から親しくさせてもらっていたイ・ホンジョン先生が〈BADA design/atelier〉というブランドを立ち上げて、その時に〈made by イ・ヘミ〉という私のラインも作ってくれたんです。そこで働いた後、作家として制作を続けていたんですが、良いチャンスがあって大手ブランドの〈韓国陶磁器〉でもデザイナーとして仕事をすることができました。作家活動と並行しながらそうやって多くのモノ作りに携わって学んだことが今につながっています」

—ヘミさんが作品作りで大切にしていることは何ですか?

「制作するときはいつも〝時の経過〟を考えています。私は轆轤を使わず、手押しでキャストするようにして作り上げます。それはなんというか、時間を積み重ねるような作業。手でひねる方向がそこにそのまま形として残っていくんです。表現する上でその一刻一刻を逃してしまわないように気をつけています。手の刺激から美しさを感じ取る、そこが作り手としての醍醐味。決して短くはない工程から生まれる、時の蓄積です」

—シルバーの作品も時間をかけた手仕上げから生まれるのでしょうか。

「陶磁器の上に銀を少しずつ重ね、窯焼成した後に研磨作業を何度も繰り返します。シルバーにはもうひとつ興味深い要素があって、時間が経過すると硫化してイエロートーンに変わります。その次に赤っぽい色になり、もっと時間が経つとブラックシルバーになる。それは私が作ろうと思っても出せる色ではなくて、時や空気、湿度など自然が生み出す変化。その過程を見ているのも面白いんです」

—なぜ銀を取り入れてみようと思ったんですか?

「昔から興味があったんですが、銀の器は扱いが難しいので躊躇してました。韓国の人は器を買う際にケアの仕方を気にされる方が多いんです。でも、大阪で茶道をされている先生に、使い込んで真っ黒になった銀の茶器でお茶を点ててもらったことがあって。その時に管理が難しくないかと尋ねたら『それ自体がとても美しいと思いませんか?』と。その言葉は今でも忘れられないほどの衝撃でした。ケアの心配をするより自分が考える美をただ追求すればいいんだと気づき、帰国後すぐにとりかかりました。悩んでいた時期から本格的に始動するまでに結果5、6年を費やしたんですが、その間に韓国でも工芸への理解が深まって、器に機能を求めるだけでなくひとつの作品として認めてもらえる環境ができあがっていました」

—韓国には青磁や白磁など伝統ある陶芸が多くありますがその影響は?

「朝鮮時代の伝統的なシェイプは言葉にならないほど美しく、先人たちの美意識をとても尊敬しています。温故知新って言いますよね。昔から使われている器には続いてきた理由が存在するし、私の作品に大きく作用していると思います。個人的にも古美術品をコレクションしてるんです。服にお金をかけるより古美術品を買いたいなと思うので、少しずつ気に入ったものを集めています。あと博物館にもよく行きますね。韓国国立中央博物館は本当に素敵ですよ。遺物や陶磁器の展示が素晴らしくて、その時代に生きていた人たちが作り上げた作品が見られます。それもまた、時の経過が生む美なので、インスパイアされます」

—白く偏光する作品も印象的です。あれはどのように?

「真珠の光を出す顔料を使用しています。陶芸の手法で言うと上絵にあたりますね。いつも旅に出るとその土地の博物館やヴィンテージ市場を訪れるんですが、昔、フランスのマーケットで小さなカップを見つけたことがあるんです。それが真珠を使ったすごく古いもので、ヒビが入り、手垢がついたような色合いに変化していました。シルバーと違って真珠の色の変わり方は年月を重ねてもあまり目立たないんです。昔から使われてきた材料でもあるし、その繊細な時との関係性に惹かれて作ってみるようになりました。シルバーと同じで、ずっと手がけてみたかった表現のひとつだったんです。今はいつかチャレンジできたらと願っているリストから、ひとつずつトライしてみている感じですね」

—ヘミさんにとってソウルはどんな場所ですか?

「好奇心にあふれる都市だと思います。この街に集まってくる多くの人たちが、それぞれさまざまな分野に興味を抱いていて、また多くが時代の変化に強い関心を持っています。新しいことも余裕を持って受け入れられるし、バランスよく生きてる気がします」

—これからの夢を教えてください。

「ソバン(小さいテーブル)やセンターピースなど、体力的になかなかできなかった少し規模のある、サイズ感のあるものを作ってみたいです。オブジェラインも充実させたい。コロナ禍で延期になったままの日本での展示会も来年にはできればと願ってますし、知り合いの大阪のクリエイターたちと何か一緒に作業ができないかとも話しているんです。早く実現させたいですね」

exciting K-CULTURE Heami Lee

 


はみだし一問一答

Q 最近よくチェックするのは?

A どうしよう、私リアルに歌手のソン・シギョンさんが好きなんです(笑)。バラードの皇帝って呼ばれる神秘的なアーティストだったんですがちょっと前にSNSを開始。それで、自分のインスタでファンを告白したらすごい反響で。普段コメント出すタイプではないから驚かれました。声がいいんです、セクシー。

Q 好きな韓国料理は?

A 平壌冷麺とトッポッキ。“トッポッキ遠征隊”を作ってます。


Heami Lee’s WORK

Heami Lee イ・ヘミ

1984年生まれ。2012年弘益大学美術大陶芸ガラス科修士卒業後、デザイナーとして経験を積みながら陶芸家としてのキャリアをスタート。Instagram→ @heami_

Photo: Youngwoong Yim Text: Aiko Ishii Coordination&Translation: Shinhae Song, Rumiko Ose (TANO International) Cooperation: Erina Tanaka, Eri Masuda

GINZA2021年9月号掲載

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