15 Jan 2019
インスタ映えか?アートか?現地アーティストが注目する韓国ソウルのアートスポット6選

ソウルの街の動きは面白い。日本人でも聞き馴染みのある弘大のような繁華街に人が集まると地価が上がって、最近は周辺の延禧洞・延南洞、望遠エリアに若者がカフェやショップをオープンして、ホットなスポットとなっている。他にも工場地帯をリノベーションして新しい街に生まれ変わりつつある文来洞や聖水洞のようなエリアなど、都市の再開発にしたがって街がめまぐるしく変化し、それと共に地域ごとに文化が生まれています。アートにおいてもそういった街の変化が影響しているらしく、元々アートの街と呼ばれていた弘大から若いアーティストが新しい街を求めて動きつつあるといいます。
インスタグラムの影響で美術館がヒップな場所になり、多くの若者がアートスポットに足を運んでいる一方で、韓国の若手アーティストの発表の場はどこにあるのだろうか?前回に引き続き、Tiger Officeでアトリエをシェアしているピクセルアーティストのジョ・ジェボムさんとドローイングアーティストのソル・ドンジュさんに現地ソウルのリアルな話を聞いてみました。前回の記事はこちら。
アーティスト達は何処へ?
ドンジュ:仁寺洞の方にギャラリーはいくつかあるけど、イラストではなく現代美術ですね。個人展の場合は最近は負担なく開催できるカフェでの開催が多いかな。もしくは展示やセミナーなど色々な事を開催できる文化空間のようなスペース。若手アーティストはギャラリーみたいな場所ではやらないし、できないんじゃないかな。
ジェボム:「ああ、こういう場所はエージェンシーがないとダメなんだな」っていう感じ。お、この空間で展示やってみたい。という軽い気持ちではできないと思います。すごく高いだろうしね。
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COSO SEOUL
135-5 Samcheong-ro, Samcheong-dong, Jongno-gu, Seoul
02-732-7779
日ー木 12:00-22:00 / 金土 12:00-23:00
月曜日定休
ギャラリーが多く点在する三清洞のギャラリーカフェ。カフェコンクリートとスチールが調和した4階建ての単独建物全体がギャラリーカフェとなっており、4階からは三清洞の風景が一望できる。
−−では、韓国で展示というとどんな場所が一般的なのでしょうか。
ドンジュ:一般的には梨泰院あたりにある小さいカフェでもよく展示をやってます。あとは古い建物をリノベーションして展示空間として再利用するスペースも増えてきました。そういう場所はキュレーターがどんな作家が空間に合うか考えてセッティングする場合が多い。最近はキュレーターもギャラリーやエージェンシーに所属せず個人的にイベントを計画する人も増えてきました。なので、これからはもう少し展示という表現形式が増えるんじゃないかな。
ドンジュ:カフェといっても、最初から展示を目的にしたカフェもたくさん増えましたね。俳優のユ・アインが主催しているSTUDIO CONCRETEというギャラリーカフェでは、Jean JullienやJoan Cornellàのような有名なアーティストの展示をしてます。すごく有名な方でもっと大規模な展示もできるはずなのに、こういったギャラリーカフェのような場所でも展示をするんだと新鮮な感じでした。
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STUDIO CONCRETE
162 Hannam-daero, Hannam-dong, Yongsan-gu, Seoul
02-794-4095
火ー日 11:00-20:00
月曜日定休
「STUDIO CONCRETE」は、様々な芸術的背景を持つ80年代〜90年代生まれのメンバーが主軸となり2014年に発足したArtist Groupある。ギャラリー、ショップ、カフェが複合されたオープン型総合創作スタジオを運営している。
ジェボム:あとはEVERYDAY MONDAYやFIFTYFIFTYのようにイラストをやっている人たちが気軽にチャレンジできるギャラリーもだんだん増えてきました。海外からもアーティストを呼んで展示もしています。
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Everyday Mooonday Gallery
9-17 Songpa-dong, Songpa-gu, Seoul
010-4393-0622
火ー日 12:00-20:00
月曜日定休
トレンディな感性と路地店が点在し、ニュー・ホットプレイスと呼ばれるソンリダンギルに5年前にオープンしたギャラリーと複合文化空間。ギャラリースペースの他、アーティストのオブジェを飾ったカフェやギャラリーショップも。
−−では、ギャラリーでの展示が少ない現状で、韓国で若手のアーティストはどのように作品を発表してるのでしょうか?
ジェボム:活動と言っても色々と方法があると思いますが、私の場合は、海外から反応がもらえるのでBehanceのようなWebポートフォリオに絵を載せたりしてます。誘われればグループ展にも参加しますが、参加するとやっぱりインターネットを通じて情報をよく見られるから、SNSやサイトも作り始めました。
個人展は、規模が小さかろうがやる意味がなくちゃいけないだろうし、負担感が大きくてやったことがないんですよ。他の人もSNSや、グループ展やイラストフェアのようなイベントで発表する事が多いんじゃないかな。
インスタ映えか?アートか?
−−韓国では若い人が大林美術館やD MUSEUMのような現代アートを多く展示している美術館によく行きますよね。
ドンジュ:5年程前から大林美術館があるのですが、ここ数年の間にインスタグラムを通じて一気にヒップな場所になったんです。それからは、お客さん達は展示を見に行くというよりは、そこで綺麗な写真を撮る事に面白味を感じに行く感じです。
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D MUSEUM
5-6 Dokseodang-ro 29-gil, Hannam-dong, Yongsan-gu, Seoul
070-5097-0020
火ー日10:00~18:00 / 金土 10:00~20:00
月曜日定休
2016年にオープンした大林系列のミュージアム。感覚的な展示の他、教育、文化プログラムなどを通じて、多くの観覧客とのコミュニケーションを続けている。
ジェボム:大林倉庫という有名なギャラリーカフェもあるんですが、そういう場所も人々が「この空間に行った」ということ自体がイシューになっている感じ。実際それによって事業も上手くいってるので、今の状態が続いていますが、きっと長くは続かないよね。
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大林倉庫
78 Seongsui-ro, Seongsu 2-ga 1-dong, Seongdong-gu, Seoul
02-498-7474
11:00~23:00
祝日旧正月のみ定休
工業地帯で知られる聖水に位置する、大林倉庫はその名の通り古い倉庫をリノベーションした文化複合空間。高い天井に自然が調和した空間ではアーティストのアート作品を眺めながらコーヒーや食事を楽しむことができる。
ドンジュ:最近は若い子をターゲットにしたキュレーティングの展示が沢山開催されています。個人的にはそういう展示をしている美術館より安国にある現代美術館の方が展示の量やクオリティが良いと思うのですが、そっちにはあまり行く人がいなくて。展示周りの文化について考えた時これが本当に正しいのかなと思ったりもします。展示の文化自体を消費しているようで。
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大林美術館
21 Jahamun-ro 4-gil, Sajik-dong, Jongno-gu, Seoul
02-720-0667
木土11:00-20:00 / 火水金日 11:00-18:00
月曜日定休
由緒ある景福宮と隣接する通義洞に位置している大林美術館は、韓国初の写真専門美術館。現在は、写真だけでなくデザインを含め様々な分野の展示を紹介している。
ジェボム:そういう部分は運営する人達にとっても悩むポイントになっていると思います。運営や収益という部分を考えると仕方ない部分もあるし。
ドンジュ:一般的な人々が美術館に行くきっかけになるのは良い点でもあるしね。どんな展示がやっているのか探すようになったり、同じように展示する場がどんどんできてきたり、結果として文化が連動して広がっていくのであれば良いと思います。
ジェボム:消費行動においても、以前は「なんでこんなものを買うんだ?」と言っていた人達に影響が出てきたように思います。
二人が話すようにソウルの若手アーティスト達の表現の場は徐々に変化が生まれてきている。今回紹介したスポットはまさに勢いづくソウルのアートを体感できる場所。是非一度足を伸ばしてみては?
Interview&Text: Mannalo Magazine(erinam)
Erinam
韓国在住。雑誌社でグラフィックデザイナーとして働く傍、韓国カルチャー関連のライティング・コーディネートなど。
ソウルの今気になる人に会いにいくMannalo Magazineの製作を始めました。
instagram @i.mannalo.you @mannalo_magazine