韓国のフェミニスト事情 シンガーソングライターYOZOHが語る 後編

韓国のフェミニスト事情 シンガーソングライターYOZOHが語る 後編

韓国のシンガーソングライターでありながら、本屋無事という書店を通してフェミニストとして発信もしているYOZOHに韓国在住のerinamがインタビュー。日本ではあまりまだ知られてない韓国のフェミニズムの実情に迫る後編。前編はこちら。

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YOZOHの静かで温かいフェミニストの在り方

Erinam: 日本では例えば、「女子力」という単語があります。女性向けの雑誌でも記事としてよくとりあげられて、女性のあり方における一種のプロパガンダのようになっています。

YOZOH: 私も読んだことがあります!女性がお酒をついだり、料理をよそったり、それが当然のように、今まで生きてきたけど、それが当然ではないし、女性だけの仕事じゃなくて男性も同じようにできるのに、それを知らずに成長してきたんだと思います。それを知らずに生きてきた人たちだから、それを私達が繰り返し話すことによって変えていかなければいけないでしょう。

YOZOHマネージャー: うちの会社には、キッチンもあって、みんなでごはんを作って食べる習慣があるけど、女性たちをキッチンへ出入り禁止にしましたよ。「何で女性たちにご飯を作らせるの?」コーヒーをいれる時も、「何で女性にいれさせるの?」という風にしてくれくれるんです。

Erinam: それは素晴らしいですね。

YOZOH: 私達の会社は、そういう固定観念みたいなものがない方ですね。女性も男性もジェンダーの区別をつけず、同じ人間として働くという雰囲気がある場所です。そういう考えを持っている会社は稀で、韓国の大部分の会社はまだまだ区別をつけています。

すごく些細な事から、女性がどういう風に対象として扱われてるのか、それを見抜ける目を持つことが重要だと思います。昨年人気だった映画「君の名は。」も、フェミニストの間でも話題でした。

Erinam: 「君の名は。」のどのような部分がでしょうか?

YOZOH:  例えば、男性と女性が入れ替わった時の胸を触ったり、スカートの中を確認したり、その時の反応だったり、アニメの中で女性を表現する方法が、自転車に乗っている時のスカートから見えるパンツだったり。女性とはこういうものだという肖像的な表現の仕方が、あまりにも普遍的な表現だったから。女性でも問題意識を感じられないほどの部分ではあるけど、見抜ける目を持つことによって、女性差別を見つけられるようになります。そういう問題を指摘し始め、韓国の全ての文化コンテンツ、歌、歌詞、映画、作品を全てフェミニズムの視線で見つめ、話をし、共有します。そうすることで、文化コンテンツというものは、見る人が意識せずとも考えを植え付けるという怖い一面を持っていることを認識するべき。歌を聴きながら、「そこのセクシーな女、今夜は…。」という歌詞があれば、意識せずとも「夜に女を連れてこういう風に遊ぶものだ」という意識が植え付けられる。そういう問題を一つ一つ指摘して変えていかなければいけないんです。人の認識をかえなければいけないので、やはり声を出すことが大事です。今はSNSが発達しているので、昔はアメリカでフェミニズムに関係する事が起こると、時間が経ってから、アジアに伝わってきて…というタームが長かったけど、今はリアルタイムで全世界の女性の声を直接聞いて、学んで感じられる時代ですよね。それが良い点だと思うから、日本も短い間に女性の声が、たくさん聞こえてきてくるのではないかと思います。

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Erinam:  文化コンテンツといえば、韓国の若い女性アイドルが「私は男なしでもよく生きていけるわ。」(missA – I don’t need a man)という歌を歌っていて驚いた覚えがあります。しかも、それがとても人気で。つい若い女性アイドルの歌って恋のドキドキとか、かっこいいあの人みたいなイメージが未だにあったので…。韓国は若い女性アイドルが女性の独立性などを歌っていたりしますよね。歌などから与えられる影響も大きいように思います。

YOZOH: フェミニズムだけでなく、韓国の政権がパク・クネから変わった一番大きいきっかけが、梨花女子大の件(チェ・スンシルの娘の裏口入学)だと思います。あの時、梨花女子大の学生たちが、声をあげて、運動歌のようにずっと歌っていたのが、少女時代の「また出会う世界(다시 만난 세계)」でした。その事件は、政権交代だけでなく、女性の生き方という部分でも決定的な影響を与える事件だったし、少女時代の曲の影響も大きかったと思います。少女時代もこういった勇気のある運動に自分たちの曲が使われるということに誇らしく思っていると聞きました。

Erinam:  フェミニストという言葉が、日本ではネガティブなイメージが強く持たれているので、正直社会に疑問を持っていても「私はフェミニストだ!」と言いにくい雰囲気があります。韓国ではどうですか?

YOZOH: 韓国も同じです。アメリカでも同じだと思う。フェミニズムに関連した本を読んだけど、アメリカでも「フェミニストだ」と明かすと、周りの人たちから「レズなのか」「男性嫌悪者なのか」、除毛もせず、下着もつけないような怖い人たちという固定観念からくる偏見や変な誤解をうけます。韓国でも、「フェミニストだ」と明かせば、「メガル女なの?」と言われます。(メガル女:名称。フェミニストを卑下して指す言葉、ネット用語)

Erinam:   メガル女って?

YOZOH: 韓国では、女性を卑下したり、差別する男性たちに立ち向かおうとする女性たちが集まる「メガリア」というコミュニティサイトがあるんです。そのコミュニティでは、ミラーリングという方法を使用して、男性が女性に対してする行動を逆の立場で同じように行動します。例えば、女性が椅子に座るときに「女性なのに、股を開いて座るなんて」と指摘を受けたなら、男性が椅子に座った時、同じように「男性なのに、股を開いて座るなんて」と指摘します。韓国の女性を卑下する「キムチ女」(経済的な負担を全て男性に依存する女性を見下して使う言葉)、「味噌女」(金銭的に誰かに依存しながらも贅沢で派手な生活をする女性という意味)だったり、「マムチュン」(mom虫:母親を卑下する言葉。子供が悪い事をしても叱らない母親を皮肉って表現した言葉)という言葉をミラーリングして、韓国の男性を「ハンナム(韓国男性の略)」という風に言葉を作って、サイトを通して同じように卑下するような活動をしていたのですが、急にそのコミュニティーが閉鎖されました。

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他の「イルべ」(※日刊ベストストア:日本でいう2ちゃんねるのような掲示板サイト)などのネットユーザーが社会的問題などに関して言及するコミュニティーは閉鎖されたりしないのに、メガリアは閉鎖されてしまうんです。閉鎖させた人も、結局は男性中心の考えを持っている機関。申告が入ったから、閉鎖しなければいけないという風に、閉鎖させました。メガリアに加入していた女性たちも、男性をつぶそうとする、男性嫌悪の考えの持ち主だとみなされ、そういう女性たちをまとめて「メガル女」と卑下した呼ばれ方をされるんです。だから、「フェミニストだ」というと、「お前メガル女なの?」と言われる。私の場合は、(会社員ではないから)少し自由だと思うけど。ある小学校の先生をしている女性が、授業でフェミニズムに関して話したことによって生徒の両親や、男性たちから批難を受けています。メガル女の考えを教えているという誤解から。その先生をクビにしろというデモまでも起こりました。フェミニスト達は、その先生を応援しながら、戦っています。「フェミニストだ」と明かすこと=戦う準備ができているということになるからこそ、重い告白になるのではないでしょうか。

 

Erinam:  ヨジョさんも有名人でありながら、周りの人に告白する事に抵抗はなかったですか?

YOZOH: なかったわけではないけど、事実だし、フェミニストだとしても積極的に行動する人もいれば、フェミニストだという事実を明かせないけれど、どこかに寄付したりだとか、静かに行動してる人もいます。私も攻撃的な人ではないし、気が小さいので、自分の本屋でフェミニズムに関連する本を販売し、興味がある人と一緒に話したり、「静かなフェミニスト」と言えると思います。

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※YOZOHさんの著書「눈이 아닌 것으로도 읽은 기분」「요조, 기타 등등」

Erinam:  実際にフェミニズムに関連する本を買った人たちの反応はどうでしたか?

YOZOH: 以前、男子学生が私の本屋を訪れ、フェミニズムについて知りたいからお勧めの本を教えてほしいと言ってくれました。その男子学生に「フェミニズムに興味を持ったきっかけ」について質問したんです。その当時、ある俳優がSNSへ「女優という言葉も女性差別が表れた単語だ」という言葉をあげたところ、それに対してたくさんの男性から批難を浴びる出来事がありました。「女優がなぜ女性差別なのか」など、様々な批判があったんですが、それを見た男子学生も同じ疑問を抱いて、その件に関して不思議で、勉強したいと思ったみたいです。ただ批判して、切言するのが一般的な反応だとしたら、男子学生のように何でだろうと疑問を持ってくれた事が、私にとってはありがたく感じました。まず、男性が受けるニュアンスと私達が話す差別というニュアンスから認識の差がありました。女性差別に関して私達が話すと、「女性が好きなのに、なぜ女性差別者と言われるのか」と質問します。その学生も「女優」や「女子学生」という言葉が女性差別だというと、理解ができていないようでした。なので、「差別」という単語の定義から一緒に話をしました。女性を対象化して、人間として見るのではなく、一つの対象として見る全ての事柄が全て「差別」と言えます。そうやって考えると「女優」という単語も同じ俳優ではなく、俳優は男性をさしていて、女性は別物として認識させています。その認識も広く見ると女性差別に該当する。そういう部分を説明することから始まって、本もおすすめして…。そういう体験もありました。私が静かなフェミニストとしてできることは、こういう事なんだと感じたんです。

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Erinam:  フェミニズムという言葉に対する負担感やフェミニズムの活動は強くなければできない、といった印象がありましたが、今回韓国でヨジョさんのように発信している方もいるということを知ることで、相手に考えを伝えたり、表現したりするヒントや、勇気を与えられたように思います。一般人でも誰でも十分に発信していけることだし、活動できると思えました。

YOZOH: それが、すごく重要。言葉を発しなければ絶対伝わらないし、変わらない。静かなフェミニストでもいいし、どんな方法でもいいから、声をあげること、それが重要です。

YOZOH(요조) _ Let it shine(반짝이게 해)

 


YOZOH(요조)

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シンガーソングライター。本屋無事(책방무사)オーナー。ドラマ、ゲーム、映画、広告などの参加とOST作曲はもちろん、ラジオDJ、本屋の運営など全方位的な活動をしながらメジャーとアンダーグラウンドの境界を行き来する新しい文化の領域を確立している。
instagram: @official_yozoh

erinam えりなむ

グラフィックデザイナー / ライター / コーディネーター
最近-15度の韓国でトイレの水が凍っているという体験をしました。春を待ちながら生活してます。
instagram :@i.mannalo.you

interview: Erinam、Photo: Lee jeongmin、interpreter: Ikemoto Miyuki

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