14 Nov 2018
田村かのこさん(Art Translators Collective主宰)のお気に入りは「西野達のドローイング etc.」 レディの私物アートVol.4

美術館やギャラリーで名画を眺めるのもいいけれど、 新しいコートやニットをワードローブに加えるように、 アートを所有してみるというのも、なかなか素敵なこと。 7人の女性に聞いた、大切な作品のストーリー。
西野達のドローイングと小西紀行のペインティング
写真・左 西野達[東京タワー焼き鳥プロジェクト]2010 ©Tatzu Nishi / Courtesy of URANO, Tokyo 写真・右 小西紀行[無題]2011 ©Toshiyuki Konishi / Courtesy of URANO, Tokyo
写真・左 突飛なアイデアで既存のモニュメントの在り方を激変させる西野達。「大好きな東京タワーが使われているのがうれしくて、自分の誕生日に買いました」(田村さん) 写真・右 美大生の頃に買った作品。田村さんは作家と交流することも多いそう。「人となりや姿勢を知ると、より作品に愛着がわきますね」(田村さん)
ライアン・ガンダーのドローイング
Picasso and I, or an Attempt to at a Facsimile od Pablo Picasso Picasso’s le Déjeuner sur L’Herbe, d’ après Manet (1962), 2017, ©Ryan Gander Courtesy of TARO NASU
翻訳を担当することもある、TARO NASUのギャラリー展で購入。膨大な量のドローイングから、これという1枚をギャラリーの人と一緒に選んだそう。家の壁面が足りなくて、飾る場所を思案中。
日常をズラしてくれる、コンセプチュアルアートの効き目。
学生時代に、スイスで行われているアートフェア「アート・バーゼル」に行ったんです。そこで、ピカソとかマティスとか美術館レベルのアーティストの作品がバンバン売り買いされていることに驚いて。「あ、この人たち現役なんだ」って思ったところから、興味がわきました。小西紀行さんの絵が、初めて買った作品。今でも大切に飾っています。その隣に置いた西野達さんのドローイングは、既存建物をどう転用するかのアイデアということで、東京タワーを串に見立てて焼き鳥にしちゃっている。最近購入したライアン・ガンダーの作品は、彼がピカソになりきって描いたもの。しかも、モチーフとなっているピカソの作品自体が、ピカソがマネの[草上の昼食]を描いたものという、コンセプトを重ねまくったややこしい作品です(笑)。
コンセプトとかストーリーがある作品は、背景や込められた考え方がわかると、イメージがどんどん広がっていく。そこに、モノとしての美しさ以上の魅力を感じます。私は翻訳という仕事柄、自宅で仕事をする時間が長くて。だから、忙しいとどうしても日常のルーティンに入り込んでしまいがち。そんなとき作品を見ると、いつもの視点がふっと外れる。アーティストの自由な発想が、凝り固まった日常を解してくれるんだと思います。
Art Translators Collective 主宰
田村かのこ たむら・かのこ
アートに特化した通訳・翻訳者の団体を主宰。自身も翻訳と通訳を行う。
Photo: Keisuke Fukamizu Text: Satoko Shibahara
GINZA2018年11月号掲載