目に見えないものを、写真に撮る。「志賀理江子 ブラインドデート」が香川県・丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で9月3日まで

目に見えないものを、写真に撮る。「志賀理江子 ブラインドデート」が香川県・丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で9月3日まで

 

志賀理江子の写真は、一度見ると忘れられない。特別なものを写しているわけではないのに、写真には、どぎつい現実や、一方、魔法のようなシーンが表れている。一見この世のものとは思えないような衝撃的なイメージに、とにかく驚いてしまう。ものすごく生々しいイメージと、幻想的なイメージの両方が強烈に迫ってきて、「生と死」という大きなテーマが、自然と心に浮かんでくる。

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そんな彼女の5年ぶりの大規模な個展が丸亀の猪熊源一郎現代美術館で開催中だ。2009年に撮影されたバンコクの恋人たちを写した「ブラインドデート」からスタートする。バイクの後ろに乗り、物憂げな表情で彼の背中に体を預ける女の子たち。彼女の視線は、カメラに向けられている。志賀が彼らを撮るきっかけは、バンコクで滞在制作をしていた際に、信号待ちで別のバイクに乗る人と目が合ったことだという。一瞬の視線の交差、恋人同士で乗っていても視線が交わされないバイクの二人乗り。そんな刹那な瞬間がひりひりと伝わる。

edit_2 そこから、テーマは「弔い」「人間の始まり」「大きな資本」「死」へと続き、それらをめぐる考察と物語が綴られていく。写真プリントだけでなく、約20台のスライドプロジェクターによってインスタレーションも。点滅するプロジェクターは、生、暗闇と光、この世界に相反しながら同時に存在するものごとの隠喩でもある。そこには、肉眼で見えないものの領域をこそ写し出す写真を追求する、作家の一貫した写真への姿勢を見ることができる。

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志賀は2008年に、宮城県名取市の北釜に移住。以来、地域カメラマンとして活動しながら作品制作を続けている。移住してから起きた東日本大震災で、彼女が拠点とする北釜も大きな被害を受けた(彼女のそれまでの作品も多く流されてしまった)。北釜との関った4年間の取り組みをまとめた展覧会「螺旋海岸」(2012年)は、彼女の力強さを感じる素晴らしいものだった。

写真の可能性を信じ、真摯に取り組む志賀。彼女の現在にこそ、写真のこれからが映し出されているかもしれない。

 

志賀理江子(しが・りえこ)

1980 愛知県生まれ。ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインを卒業、文化庁新進芸術家海外研修(ロンドン)を経て、現在、宮城県在住。

 

「志賀理江子 ブラインドデート」

会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
〒763-0022 香川県丸亀市浜町80-1

会期:2017年6月10日(土)-9月3日(日) *会期中無休

開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)

観覧料:一般950円(760円) 大学生650円(520円) 高校生以下または18歳未満・丸亀市内に在住の65歳以上・各種障害者手帳をお持ちの方は無料

*同時開催の常設展観覧料含む

*( )内は前売及び20名以上の団体料金

*8月19日(土)、20日(日)は1階ゲートプラザにて「まるがめ婆娑羅まつり」開催のため観覧無料(当日は展示室内に音が響く場合があります)

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柴原聡子

建築設計事務所や美術館勤務を経て、フリーランスの編集・企画・執筆・広報として活動。建築やアートにかかわる記事の執筆、印刷物やウェブサイトを制作するほか、展覧会やイベントの企画・広報も行う。企画した展覧会に「ファンタスマ――ケイト・ロードの標本室」、「スタジオ・ムンバイ 夏の家」など

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